海外展示会出展に関する注意点と成功事例(スポーツシンクタンク戸井田朋之)

今回のコラムでは、展示会運営に係る準備資料や展示会前後の留意事項などを具体的にご説明します。

①展示会出展前の事前営業と展示会期間中の目標設定

展示会では来場される小売店・百貨店バイヤーなどいわゆる「流れ客」を、その場だけで当てにしてはいけません。国内展示会でもそうであるように、事前に来訪スケジュールを各営業マンにコンタクトさせ、来訪アポ時間を決めておくことが大切です。初出展の場合でも世界中の有名小売店・百貨店には招待状やメールでのご招待を送るなど、積極的にアプローチしておくべきです。

なにしろ2,000社を超える規模の大きな展示会では、来られるバイヤーも分刻みのスケジュールを組んでいます。主要顧客の商談が終わり、自分たちで設定しているフリータイムにいかに目に留まるか、一度見ておこうかと思わせるための「事前アプローチ」が重要です。

また、展示会運営にありがちなのが「目標設定の欠如」と「守備範囲の不徹底」です。スタッフ一人ひとりの目標設定と役割分担を決めておき、各国から来られる不特定多数のバイヤーに対して、来訪と同時に間髪を入れずに対応することが重要です。事前登録制にしているブースもありますが、その際にも決して上から目線で断るのではなく、懇切丁寧に対応することが大切です。

②ニュースリリースの準備とプレスセンターの積極活用

メディアや報道の力を借りることも大切です。海外展示会ではその日のトピックスが翌朝の速報マガジンで紹介され、日本でいう「号外」が毎日入口で配布されます。TVニュースでも報道されます。したがって初日のメディア取材が最も影響力があり、2日目以降の来客数に大きな違いが生じてきます。バイヤーたちやメディア陣も横の連携がかなり密で、何処のブースのどのブランドの何が評判か?どこを取材しておくべきか?など情報共有が図られています。

その報道陣やジャーナリストが集まる場所が「プレスセンター」です。普通、入口付近の2階に展示会運営側が用意しており、ランチやフルーツ、コーヒーをはじめとする各種ドリンクが無料でサービスされています。そのプレスセンターに「出展社のニュースリリース」を置くスペースがあり、各メディアはそのリリースを読んでから取材に向かいます。

依然として紙や写真でリリースを準備している企業もあれば、展示会後の記事や写真掲載を目論みUSBやDVDで用意している企業もあります。英語版はもちろんですが、仏独語版のニュースリリースを用意している企業もあります。

ブースに取材に来られるメディアを受ける対応だけではなく、積極的にこのプレスセンターを活用すべきなのです。 日本以上に「広報」の力が発揮されるのが海外で、ファッション誌やスポーツ誌への掲載は企業広告以上にパワフルな影響力を持っています。従って、企業の広報部員がなすべきことは、ジャーナリストの目線になって特集記事を取材する気持ちで、記事になりやすいように自社のリリースをまとめることです。

企業紹介のみならず特筆すべき新しい企画、新しい製品など「Something New」が必ず必要です。雑誌や新聞でもアイキャッチとなる「テーマ」に、読者の興味を惹く表現がされているように、ジャーナリストが振り向いてくれそうなメッセージが必要です。例えば「世界初」や「日本で大人気」、「ヨーロッパ初上陸」などです。

ドイツ・ミュンヘンのISPO。筆者撮影

プレスセンターに併設された特設会場では、フィットネスフォーラムやリハビリテーションフォーラムと題して各出展社が自社製品をアピールする取り組みもなされています。

③企業ロゴやブランド入りトートバッグやエコバッグが活躍

モーターショーやアニメの展示会に足を運ばれたことのある方も多いと思いますが、各企業からのお土産グッズもだんだんと少なくなってきました。コスト削減が大きな理由ですが、やはり持ち帰って楽しい思い出になったり、デスク周りに置いておくと癒し効果につながるノベルティーは嬉しいものです。

また、企業ロゴ入りのスポーツタオルやハンカチ、メガホンといった応援グッズも以前ほど見かけなくなりました。そこで、いま注目なアイテムがトートバッグやエコバッグです。

展示会では各ブースの資料やパンフレット、カタログでいつしか持ち物が増えてきます。そんなときに素敵で可愛いトートバッグがあれば、それを肩に下げて会場内をまわってくれます。つまり、バイヤーが「歩く広告塔」になってくれるのです。

お気に入りの大袋や変わったデザインのものがあれば、他の袋も一緒に中に入れてしまいますので、近年は競争率がかなり高くなってきました。コストの関係から、不織布で造られたバッグが大半ですが、なかには布製やビニール製もあって、ショッピングにも使えそうな素敵なノベルティーバッグもあるほどです。

コストを掛けずに企業広告も行う、また持ち帰ってからもスポーツシーンやショッピングにも利用できる「一石二鳥」のノベルティーです。

使い勝手のいいバッグは人気のノベルティ。筆者撮影

④白衣を着こなすことによって研究員や学者に見える

展示会ブースの雰囲気づくりとして、また自社製品に箔がつく効果づくりとしてのご提案です。視覚的効果を狙った秘策のひとつとして、展示会にいるスタッフに白衣を着せるだけで専門性と研究熱心な企業風土が醸し出されます。

全員が着用する必要はなく、その企業で研究開発に携わっている社員がいればその方に。仮にいらっしゃらなくとも製品のうんちくを語れる社員がいればその方に着用いただくだけで、企業そのものに箔がつきます。

展示会のみならず一般の店舗にもいえることで、ドラッグストアや薬局に入ると白衣が見えてなにか安心感が生まれることと同じです。お医者様や専門的な研究員が白衣を着ているという意識効果を活用したイメージ訴求です。

ブースのユニフォームも重要な役割を果たす。筆者撮影

⑤クラフトマンシップを打ち出すために工場から機械を持ち込む

メーカーの社員や生産チームのスタッフにとってはいつも見慣れた普通の光景でも、バイヤーやジャーナリストにとっては興味津々なこともあります。見慣れない機械であったり、技術を目の当たりにすると感動ものです。

アウトドアブーツの自動製造マシーンを見たり、料理場のようなまな板の上でレザー皮を巧みになめしたり磨く様相は、まさしく職人技を見ている感覚になります。海外の展示会で今注目を浴びているのが、こういった「製造現場の見える化」です。

日本企業でも海外地元企業の協力を得てマシーンを調達し、日本から出張した「匠」の技術士が腕を振るって製造され、来場者から喝采を浴びていました。デジタル化が進む中でのアナログ技法がかえって注目を浴びています。

専門的な機械や職人の技はバイヤー、ジャーナリストの関心の的。筆者撮影

⑥展示会出展社のメリットを事前に把握しておく

海外展示会では出展社にさまざまな特典が与えられています。それを事前に知っておくか知らないでいるかで大きく違ってきます。国によって多少の違いはありますが、展示会場までの公共交通機関が無料になるなどです。出張スタッフが多ければ多いほど、経費削減につながります。

海外展示会は、市内複数個所からの無料シャトルバスの運行や国際空港からも無料シャトルバスが直行で動いているほどです。さらに航空機会社にもよりますが、海外の展示会場には航空機のチェックインカウンターも備えられており、わざわざ重たいスーツケースを空港まで持っていかなくても、展示会場で荷物チェックインや国際配送までできるよう完備されています。

定期的な観光収入も見込める国際展示会開催ですので、それだけ国を挙げて、街を挙げての協力体制ができあがっています。

⑦展示会でのプライスリストについて

海外展示会ではたいていの場合、希望小売価格は表示されません。製造者は自分で直営店を持たない限り小売価格を決めることができないからです。小売価格設定は小売店の自由裁量です。

通常はメーカーからの出し値、つまり小売店の仕入れ値から2.2倍が標準小売価格です。 標準小売価格を仮に100とした場合、仕入れ値は45となります。 つまりバイヤーは常に展示会でのプライスリストに2.2倍から2.5倍の掛け算をして、ひとつの目安として店頭での上代価格を算定し、売れるか売れないかの判断をしています。

ただし、日本を含むアジア圏やその他諸外国からの輸入の場合は、運賃や保険などいわゆる輸入経費がかかります。 通常はFOB価格(※)に 1.6倍を掛けた数値が現地の仕入れ値に相当します。 従って最終小売価格を100とした場合、前述のように仕入れ値は45設定ですので、さらに1.6で割った数値28がFOB価格になります。言い換えれば、FOB価格を3.5倍した価格が小売店頭価格に相当すると想像してください。

(※FOB:Free on Boardの頭文字から取った用語で、日本語では「本船渡し条件」と呼ばれています)

欧米のバイヤーに対してFOB価格で営業交渉するのが当たり前だと考えていた国内産業は、考えを改めるタイミングに来ました。というのも、上記のような価格設定で商品上代の目安は今までの経験から難なく理解されますが、それよりも「欧米への輸入」の手続きにストレスを感じるのです。そのストレスを回避させることが受注量増大に寄与すると思うのです。

近年はそのような価格設定以上に、買い手側が輸送手配や保険など日本からの輸入手続きに煩雑さを感じるようになってきました。日本からの輸入に対して時間と労力が向かい風となり受注数量に影響していたといっても過言ではありません。

そこでご提案したいのがFOB価格設定からDDP(※)への移行です。そもそも現地法人もないのに、FOB以外は考えになかったという企業がほとんどだと思います。自分もこのような価格設定方式があるとは知りませんでした。

(※DDP:「仕向け地持ち込み渡し関税込み条件」とも言われ、指定先までの輸送費用とリスク、通関・関税・消費税を売り手側が負担し、買い手は積み下ろし作業だけを負担するものです)

以下の表の通り、各国別の上代販売価格の格差が是正されることや、買い手側に欧米の仕入れ先と同様に見てもらえるメリットが出てきます。海外輸出に秀でた経験と能力を持つ運送業界などの企業に相談され、お客様が満足できる輸出システムを構築しておく必要があります。

左図は従来からのFOB積み上げ算定方式のコストとマージン率です。右図はDDP逆算方式。全く中身の構造は同じです。 つまり、お客様にとっては為替予約や煩雑な輸入手続きが不要となり、遠隔地輸入の障壁が軽減されるのです。


toida

◇戸井田 朋之(といだ・ともゆき)

株式会社スポーツシンクタンク 代表取締役社長 CEO

1953年生まれ。元順天堂大学スポーツ健康科学部客員教授。文化服装学院・文化ファッション大学院大学客員講師。2024年パリオリンピック夏季大会国際アドバイザー。パリ在住。

慶應義塾大学卒業後、株式会社デサントに入社。入社3年目でフランスのパリに駐在し、ヨーロッパの主たるリゾートスキー場のスキースクールユニフォームの受注活動を行い、現在の欧州販売網の基礎を作った。1980年からIOC(国際オリンピック委員会)会長となった故サマランチ氏に息子のように可愛がられ、1984年サラエボ・オリンピック開会宣言の場でのデサントウェア着用シーンが世界中に報道され、一気に同社を国際ブランドとデビューさせた牽引者。

今まで計21回、オリンピックの現場で世界のトップアスリートやIOC(国際オリンピック委員会)を支え、並行して英仏語に留まらず多国語マスターの能力を活かしてデサントブランドの国際戦略を先陣。帰国後は、企画部長やSP販促部長を歴任し、取締役就任後は新たに地方自治体との官民コラボレーションにも成功。過疎地指定されている群馬県みなかみ町を復活させ経済産業省から表彰される。

また一方ではDA PUMP、モーニング娘。、加藤あい、優香など新人タレント発掘の傍ら、スポーツ業界のCMに初めて芸能人を起用するなど、業界きっての積極的な「仕掛け屋」。そして再度のヨーロッパへ赴任。パリ、ローザンヌ、ロンドンで駐在後、2017年7月起業独立し、現在は国内外の大学で教鞭をとる傍ら、海外企業・国内企業複数社とコンサルティング契約を結び活動中。JALの機内食「うどんde SKY」の名付け親。

スポーツ産業の国際戦略には、情報力・販売力・物流力・交渉力そして継続的マーケティング力が必要と説き、グローバルな視点に立つモノの見方は、シャープで素晴らしいと評価されている。



[問い合わせ先]

スポーツ庁「令和3年度スポーツ産業の国際展開促進事業」

JSPIN運営事務局 info-jspin-ext@nri.co.jp

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