2008年に北京オリンピックで日本女子ソフトボールチームが優勝し、2011年にソフトボール界からプロ野球選手が誕生するなど、ソフトボールで印象的な出来事は多々ありますが、公益財団法人日本ソフトボール協会の「令和元年度チーム登録表」によると、日本国内のソフトボール競技人口は、全47都道府県で172,256名。2010年時点の138,615名と比較しても、人気が高まっていることが分かります。
また、東京オリンピックではソフトボールが限定復活し、注目が集まっています。
本記事では、ソフトボールの成り立ちや歴史について解説します。
ぜひ、最後までご覧ください。
ソフトボールの歴史・成り立ち
いまや、多くの人に慣れ親しまれているソフトボールですが、その歴史をたどると、ソフトボールはクリケットが発展したスポーツだと考えられています。
クリケットとは、平らな板に杖のハンドルを取り付けたようなクリケットバットと野球のボールよりも硬くて重いクリケットボールを用いた球技のこと。1チーム11名の2チームで対戦する球技で、世界でも競技人口が3億人を超えるといわれています。
その起源は13世紀に羊飼いが空き時間に棒状のスティックと石を使って楽しんだことだとされています。
その後、18~19世紀にアメリカに移民したイギリス人が、クリケットを簡易化したスポーツである「ラウンダーズ」をアメリカに持ち込み、そこから「ベースボール」やソフトボールの原型である「プレーグラウンドボール」が誕生したといわれています。
ちなみに、ラウンダーズとは、小さく硬い革で覆われたボールと木製・プラスチック製・金属製のバットを用いて2チーム間で行うイギリスの児童に人気がある球技のこと。フィールドでは同時に最大9人の選手がプレーします。ルールなどはソフトボールと似ていますが、守備の際にグローブの使用は認められていない点が異なります。
一方、プレーグラウンドボールは、冬の運動や冬季のベースボールの練習用に考案されたといわれている競技のこと。その起源は、下記の3つの説があります。
- 1887年にシカゴのハンコックという人物が発案した
- 20世紀初めにミネアポリスのロバーという人物が考案した
- 1900年頃にベースボールの選手が考案した
当初は室内向けの球技であったことからインドアベースボールと呼ばれていたそうですが、屋外でもプレーされるようになったことで、プレーグラウンドボールと呼ばれるようになったようです。
ちなみに、ラウンダーズや原型のクリケットがそのままアメリカに受け入れられなかった理由には、下記の2つが挙げられます。
- 当時のアメリカへの移住者たちに対して欧州諸国の強い対抗心があった
- ルールが分かりにくい
ルール改定などを行い、名称を変更することで受け入れられるようになりました。以降のソフトボールに関する歴史を時系列にまとめたのが下の表です。
年代 | 概要 |
1923年 | ジョセフ・リー氏が独自のルールで実施していた球技を統一し改定 |
1926年 | コロラド州アマチュア・ソフトボール協会が設立しソフトボールが誕生 |
1930年 | シカゴで歴史上初のプレーグラウンドボール大会を開催 |
1932年 | センチュリィー・オブ・プログレス新聞社の後援で歴史上初のソフトボール大会を開催 |
1934年 | ソフトボールの統一ルールの制定 |
1951年 | 国際ソフトボール連盟(ISF)の設立 |
日本ソフトボールの歴史
ここまで、ソフトボールの起源からその歴史について紹介してきましたが、ここからは、日本におけるソフトボールの歴史について紹介します。
日本にソフトボールが伝わった時期は?
日本にソフトボールが伝わった時期は、1921年といわれています。アメリカに留学していた東京高等師範学校教授たちが、帰国後に学校体操科の遊戯としてソフトボールを採用。
安全性が高く年齢や性別に関わらずプレーしやすいソフトボールは、学校のクラブ活動や地域のレクリエーションなどで行われるようになり、普及します。
そして、1927年、学校体育に採用されたことで、日本人にとって身近なスポーツとなりました。
1949年には、日本ソフトボール協会が設立。同年に、下記の2つの大会が開催されました。
- 第1回全日本高校女子ソフトボール選手権大会
- 第1回全日本一般女子ソフトボール選手権大会
そして、その翌年には、ソフトボールが国体の女子正式種目に採用されています。
日本では女子スポーツのイメージが強い
ソフトボールは世界的にみると、男女どちらもプレーして楽しめるスポーツですが、日本ではソフトボールは女子のスポーツというイメージが強くあります。
日本でソフトボールが女子のスポーツとして扱われた理由は、主に下記の2つが挙げられます。
- 高校野球の公式戦に女子部員の出場が認められていない
- 能力的に飛距離や投球スピードに対応できる
中学校までは野球ができても、高校では公式戦に女子部員が出場することは認められておらず、中学までは野球部に属し、高校からは女子ソフトボール部に所属するという流れが多いようです。
オリンピック競技としての歴史
ソフトボールがオリンピック競技に採用された大会は
- 1996年:アトランタ大会
- 2000年:シドニー大会
- 2004年:アテネ大会
- 2008年:北京大会
の4回。
そして、その4大会ではいずれも女子のみの種目として行われており、ソフトボールが男子種目としてオリンピックで行われたことは歴史上ありません。
ちなみに、これまでのオリンピックにおけるソフトボールの出場枠は8カ国。まず、全チーム総当りのリーグ戦を行い、その後、トーナメント戦で順位を競うというものでした。
過去4大会での結果は下記のとおりです。
オリンピックの名称(開催年) | 順位 |
アトランタ大会(1996年) | 金:アメリカ 銀:中国 銅:オーストラリア |
シドニー大会(2000年) | 金:アメリカ 銀:日本 銅:オーストラリア |
アテネ大会(2004年) | 金:アメリカ 銀:オーストラリア 銅:日本 |
北京大会(2008年) | 金:日本 銀:アメリカ 銅:オーストラリア |
2021年の東京大会でソフトボールが採用されていますが、今大会において、ソフトボールは開催都市提案の追加種目として実施されるものであり、正式種目として採用されたということではありません。
したがって、2024年のパリ大会では残念ながらソフトボールは実施されないでしょう。
ちなみに、2021年の東京大会ではソフトボールの出場枠は6カ国で、出場する国は下記のとおりです。
- 日本
- オーストラリア
- カナダ
- イタリア
- メキシコ
- アメリカ
今回も、過去のオリンピック同様に全チーム総当りで対戦し、上位2チームが金メダル、3位と4位のチームが銅メダル獲得に向けて競い合います。
まとめ
先日、東京オリンピック委員会は、公式的に2021年に延期された東京2020オリンピックのソフトボール大会の新たな日程を発表しました。その発表によると、2021年7月21日(水)に「福島あづま球場」で開幕し、7月27日に「横浜スタジアム」で金メダル決定戦が行われます。
ソフトボールの成り立ちや歴史を知って大会を観戦すれば、これまで以上に試合を楽しめることでしょう。
(TOP写真提供 = Jon Osumi / Shutterstock.com)
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