スポーツが「いよいよ帰ってくる」 ドコモが目指す、「新しい観戦体験」とは?

世界全体でスポーツが長らくストップしていたが、少しずつ再開が本格化してきた。欧州サッカーはシーズンが再開し、日本でもプロ野球が遂に開幕、明治安田生命Jリーグも再開を迎える。この「スポーツの復活」を企業はどのように捉え、どのようにスポーツファンの心を再び掴もうとしているのか?Jリーグを放送するDAZNとの独占で「DAZN for docomo」を提供するNTTドコモの柏崎健太氏に、これからの展開を伺った。

スポーツが「いよいよ帰ってくる」

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スペインのラ・リーガは6月12日にシーズンを再開した。©LaLiga

新型コロナウイルス感染拡大の影響で、この春、スポーツが日常から消えた。国内外でスポーツリーグや大会が中止・延期となり、東京五輪の1年延期や、夏の甲子園大会の史上初となる中止などは記憶にも新しい。世界は予期せぬ事態に見舞われたが、その後、新型コロナウイルスに対処しながら日々の生活を取り戻す「withコロナ」時代を迎え、スポーツは少しずつ前進している。

欧州では、主要サッカーリーグのドイツ・ブンデスリーガが5月16日に再開したのに続き、スペインのラ・リーガが6月12日に再開。日本国内でもプロ野球が6月19日に遂に開幕を迎え、Jリーグも6月末にJ2再開・J3開幕となった。さらにJ1リーグも今週末の7月4日からいよいよリスタート。2大スポーツの足並みが揃い、これから様々な競技が動き出すだろう。

「いよいよ帰ってくる」――。

NTTドコモのコンテンツビジネス部に所属し、2017年からDAZN for docomoを担当する柏崎健太氏は、実感を込めて言う。

「(DAZN for docomoの)商品の特性上、スポーツをライブ中継するというのは本筋ではあるので。スポーツに携わっている人間として、いよいよシーズンが戻ってくるという感じですね」

スポーツがストップして約4ヶ月。先の見えない状況に、「見えない敵との戦いなので、どうなってしまうんだろう」と不安もあったと話すが、様々な企業で約15年にわたりスポーツの仕事に携わってきた柏崎氏は、その経験から得た一つの教訓があるという。

「スポーツは、予期せぬことが起こるんです」

勝ち負けの周りに、“筋書きのないドラマ”が生まれるのがスポーツの最大の見どころだ。世界中で多くのファンを惹きつける所以でもあるが、それは何もピッチ上やコート内だけではない。

「いいこともあれば、悪いこともあるんですよね。選手が怪我をしたりとか大会がなくなったり。そうしたハプニングに対して、色々なシミュレーションをしながら臨機応変に対応し、結果に繋げなければなりません」

国内外スポーツの再開スケジュールや再開方法によってライブ中継やオンラインサービスとしての対応も変わるため、様々なパターンを想定してきたという。“スポーツのある毎日。”の復活を常に見据えてきた柏崎氏は、力強く言い切る。

「その意味では、今回、見せ場が来たなと思っていました」

新しい文化を作ってきた、ドコモとDAZN

NTTドコモ コンテンツビジネス部 スポーツビジネス担当主査 Sports Marketing Professional 柏崎 健太氏 ©Callais, Inc.

今年は元々、スポーツが止まることは想定の範囲内だったという。なぜなら東京五輪が開催される予定だったからだ。予定通り今年開催されていれば、各国のリーグ戦などは中断、もしくはシーズンオフに入っていた。

DAZN for docomoでも普段のスポーツのライブ中継がない期間、どのようなコンテンツが配信できるか綿密なシミュレーションが行われてきたという。

「キャプテン翼やタッチ(などのアニメコンテンツ)とか、ジャイアンツの特集などスポーツの裏舞台を描いたドキュメント番組を入れながら、スポーツの“シズル感”を出すように、ライブがなくても楽しいという訴求をしてきました」

これまで3年間にわたりDAZNと共にサービスを展開してきた柏崎氏は、ドコモとDAZNは「一心同体」とまで言い、日本でのサービス開始から今日までをこう振り返る。

「スポーツをどこでも観られるという文化を作ったんじゃないですかね。元々ケーブルテレビなどはありましたけど、スポーツに特化して、しかもアプリで観られるのは画期的でした」

同氏はさらにこうも語る。

「同時に試聴ができるのも(DAZNの)特長です。例えばJリーグは多くの試合を同じ時間にやることがありますけど、J1からJ3まで全部ライブで観られます。スポーツが好きな人は、昔はスタジアムに行ってラジオやスポーツ新聞を握り締めながら、他の試合がどうなっているか気にしたり、別の試合に行っている人と電話で聞き合ったりしてきたんです。でも今はDAZNさえあれば全試合の状況が把握できる。これは新しい視聴体験なんじゃないかと思います」

DAZNという新しいサービスの登場で、スポーツファンの視聴の仕方は大きく様変わりした。当初こそサブスクリプションによるライブストリーミングは目新しかったが、今では生活の一部に根付いたとも言える。もっとも、月額でかかる金額はユーザーにとって重要なポイントになるだろうが、DAZN for docomoには大きな利点があると柏崎氏は明かす。

「ドコモのキャリアの方であれば980円(税抜)で観られます。これで130種目以上(のスポーツ)をライブで年間1万試合観られるのは破格だと思いますし、ドコモのお客様にとって最大の利点ですね。スポーツが好きな人からすれば、(DAZN標準の月額)1,750円でも安いと思うんですよ(笑)。ただ、それがさらにドコモのユーザーだと980円(税抜)になる」

「新たな観戦スタイル」を提案していく

これに加えてドコモでは、スポーツが再開し始めたこのタイミングに合わせて、新たな取り組みを始めたという。“#SPORTSisBACK おうちで観戦キャンペーン”と題し、Jリーグのプレミアムグッズのプレゼントや、ドコモが運営する飲食デリバリーサービスの「dデリバリー」のポイント還元を実施するものだ。「キャンペーン期間中に(dデリバリーで飲食を)ご購入いただいた方の半額分をポイント還元する“お得”な特典です」(柏崎氏)

Jリーグの再開に際して、自宅でDAZNで試合を観戦しながら、さらに楽しむことのできるサービスと言える。同氏によると、J1リーグ各クラブのサイン入りユニフォームのプレゼントが、Jリーグプレミアムグッズの内容となるという。

今回の企画は、「スタジアムでできて、家でできないことって何だろう」という発想が出発点にあるという。無観客試合でスポーツが再開するとなれば、スタジアムにいるからこその臨場感や高揚感は得るのが難しい。DAZNさえあれば場所を選ばず視聴が可能だが、人々はソーシャルディスタンスやStay Homeが新たな日常になりつつある。そうした点を踏まえて、スポーツファンに現在足りていない、“体験”とは何かを柏崎氏は考えたという。

「今まで(のスポーツ観戦)と同じか、それ以上の体験をオンラインでできるには、どうすればいいのかを考えました。そうすると、スポーツを観るということ以外に、例えば、熱狂を共有する、何かを食べながら楽しむといった、家でただ観戦するだけでは足りていないことがたくさんあったんです」

こうして社内外のサービスを検討した結果、ドコモが運営する飲食デリバリー『dデリバリー』に白羽の矢が立った。これによりスポーツファンは家族や仲間と、美味しい食事を楽しみながら、スポーツ観戦が可能になる。

また、自宅で観戦する際に、副音声的に解説を楽しむことのできるオンライン企画も提供する。「おうちで応援 オンラインスタジアム」と題された企画は、無観客試合で開幕・再開し始めたスポーツに特に有用だろう。

柏崎氏は、「人と一緒にコミュニティを作ってコメントしたり、盛り上がったりすることが可能です。共有・共感を広げながら楽しむことができます」と念押しする。

さらに同氏は、今後見据えるこれからのスポーツ観戦のあり方にも言及した。

「一体感や共感、熱狂というものをオンラインで生み出せるというのは、アフターコロナにおける新しいスポーツの観戦スタイルになると思います」

「いつも通りの、人間らしい日常が戻ってくる」

©Callais, Inc.

今回の“#SPORTSisBACK”キャンペーンは、新型コロナの影響が深刻になっていた4月には、その先を見据えて動き出していたという。この3ヶ月間、関係各所との調整を重ねて準備してきた柏崎氏は、スポーツが消えた日々をこう振り返った。

「純粋にスポーツがないのは寂しいですよね。スポーツには“シーズン”という言葉がありますけど、スポーツがあるから四季を感じるというか、1年間を感じられる。日常生活に必須なものなんだと、改めて感じましたね」

そして最後に、これからスポーツに期待すること、そしてスポーツが人々に何を与えてくれるのかという問いには、こう答えてくれた。

「スポーツって、エモーショナルなエンターテインメントじゃないですか。人がスポーツに魅力を感じるのって、爽快感とか、勇気や強さを与えたりだとか、ストレートに何かに打ち込んで頑張って勝ったり負けたりすることによって、喜びや感動がある。そういうシンプルさが魅力であって、それを皆さんにたくさん見ていただくことで、気が晴れるというか、いつも通りの、人間らしい日常が戻ってくるんじゃないですかね」

まだまだコロナ以前と全く同じような形でスポーツの試合が開催されることは難しい。それでも、この状況でもスポーツを最大限楽しめる工夫や仕掛けを用意してきた。

「スポーツっていいな、スポーツが帰ってきたなと感じてもらいたいですし、僕らもそれを届けたい。アフターコロナやニューノーマルという言葉がありますけど、新しいスポーツ観戦のスタイルの誕生が、こういう状況になって少し早まったと思うんですよ。是非、楽しんで欲しいなと思います」

“#SPORTSisBACK”のキャンペーンの一環として、ドコモでは『WORLD SPORTS COUNTDOWN』と題して、世界各国のスポーツリーグや大会について、再開までのカウントダウンも行っているJ1リーグは残り3日、F1オーストリアGPは残り4日――。お気に入りのスポーツが帰ってくるまで、待ち遠しくて仕方なくなるはずだ。

“#SPORTSisBACK おうちで観戦キャンペーン” 特設サイトはこちら>>

※オンライン企画に関して追記を行いました[2020/7/4]