レアル・マドリード、レイカーズなど世界的スポーツチームのドクターが連帯する「Sports Doctors Network」が、6月24日にアジア初カンファレンスを日本で開催

世界的なスポーツチームで医療を担当するヘッドドクターらが参画する「Sports Doctors Network(SDN)」。一流スポーツの現場で実践されている医療技術を、国や地域を超えて連携することを目指して組織された団体だ。

そのSDNが、6月24日(火)にアジアで初となるカンファレンス「Sports Doctors Network Conference 2025 in TOKYO ―最先端スポーツ医療を、すべての人へ―」を日本で開催する。日本スポーツ界のレジェンドも集い、最先端のスポーツ医学の知見を、一般社会や日常生活で役立てる取り組みについて議論する。スペイン・マドリードに本部を置くSDNにおいてCOO及びアジア代表を務め、今回のカンファレンスを手がける山田早輝子氏に話を聞いた。(取材・文=小林謙一)

山田 早輝子氏
Sports Doctors Network COO兼アジア代表

国際ガストロノミー学会日本代表。株式会社フードロスバンク代表取締役社⻑。慈善活動とサステナビリティに長く取り組み、複数の非営利団体や企業にボードメンバーやアドバイザーとして関わる。スペイン王国国王フェリペ6世からイサベル・ラ・カトリカ勲章コマンダー章を叙勲。 Sports Doctors NetworkではCOO及びアジア代表を務め、西洋医学と東洋医学の融合、エリートスポーツ医学の知見の社会全体への還元、一般の健康増進・福祉への寄与を目指している。

エリートスポーツ医学の知見を広く共有する

――「Sports Doctors Network」はどのような経緯で発足して、何を目指しているのでしょうか。

「SDNは2024年にスペインで、レアル・マドリードのメディカルアドバイザーであるニコ・ミヒッチ氏を中心に発足しました。もともと、コロナ禍においてスポーツチームのドクターたちが各分野の専門医と広く連携し、新たな価値を見出し、組織化したことに端を発しています。

例えばサッカーチームのドクターはひざや足首など下半身のケガに詳しい一方、野球チームのドクターはひじや肩など上半身の構造に詳しい。それぞれの競技で他の部位にも故障は発生するわけで、お互いの専門技術や知見を共有できれば、最善の治療を施すことができるということです。

――これまでの活動について教えてください。

これまでは、医学・医療に関する専門的なカンファレンスを行ってきました。昨年6月に米ハーバードメディカルスクールで開催された際は、ひじの手術事例やひざの手術技術など非常にアカデミックな内容でした。参加者も、大学医学部の教授や大病院の専門医といった方々が中心でした。

しかし、トップスポーツ選手というのは、ある意味人間の身体を最大限に使える存在であるわけです。その医療の中で得られた医学的な知見は、多くの一般の人々の、実生活に活かせるのではないかというのが今回の日本でのカンファレンスにつながっています。

たとえば、ケガを治すだけではなく予防するにはどうすればいいか?何を食べるとコンディションを整えられるか?どのように睡眠をとればパフォーマンスを最大化できるか?ということも、アスリートの事例から学ぶことができるわけです。今回のカンファレンスは、こうした考え方をさらに進めるための重要な機会になると思います。

――トップアスリートのナレッジを、一般にも応用していこうというわけですね。

その通りです。例えば今回のカンファレンスの登壇者に、稲田弘さんという92歳で現役のトライアスロン選手がいらっしゃいます。彼は世界最高齢のアイアンマン世界選手権完走者としてギネス世界記録にも認定されている“鉄人”です。

お話しいただくテーマは、『105年活きるには』ですが。実は稲田さんがトライアスロンを始めたのは70歳になってから。それまではとりたててスポーツマンではなかったそうです。「スポーツ選手は超人的な人たちだから、一般的な人とは関係ない」ということではないんです。

彼らが実践していることは、私たちが生活に取り入れることができるもの。そして生活の質を改善してくれるものだということを理解するきっかけになることを願っています。

Sports Doctors Network COO兼アジア代表 山田 早輝子氏

レジェンドアスリートと一流ドクターがスポーツ医学の可能性を議論

――6月のカンファレンスについて詳しく教えてください。東京大学の安田講堂を舞台に、錚々たる登壇者が予定されていると聞きます。

まずオリンピック金メダリストとして室伏広治さんが、トップバッターとしてお話しくださいます。宇宙飛行士の山崎直子さんには、無重力である宇宙空間の滞在から重力のある地球に帰還したときのリハビリ経験についてお話しいただきます。

テニスの伊達公子さんは第一線でながく活躍し、豊富なプロキャリアをお持ちです。女子テニスをはじめとしたスポーツの低年齢化、キャリアの長期化の中、ケガやリハビリとどう付き合えばいいのか、ロサンゼルス・レイカーズ(NBA)のチームドクターを交えて語っていただきます。

元Jリーガーの鈴木啓太さんは、現役を退かれてからは腸内環境を整える事業を手がけるAuB株式会社を興し、アスリートや一般の方のコンディショニングに貢献されています。こうしたトップアスリートたちの知見と、ドクターの専門知識を交えたカンファレンスになります。

――カンファレンスには、どのような方に来ていただきたいと考えていますか?

スポーツの現場から、より広く一般の方の生活や健康に貢献したいと考えている方々にもいらしていただけると嬉しいです。スポーツチームに携るコーチやスタッフ、栄養士の方、また企業でスポーツや健康に関わる方々など…

プロスポーツに関わる方だけでなく、アマチュアや学生スポーツであってもかまいません。あるいは、アスリートご自身も大歓迎です。登壇者と参加者、そして参加者の方々同士が交流する機会も設ける予定です。申込による招待制にはなりますが、ぜひご登録の上ご来場ください!

プログラム

9:00-9:10 開会の辞
藤井 輝夫氏(東京大学総長)

9:20-9:50 国民のライフパフォーマンス向上に向けた取組
室伏 広治氏(東京科学大学特命教授/オリンピック金メダリスト)

9:50-10:30 Sports Doctors Networkとは/ノーベル賞とは/癌と食
カール・ヘンリック・ヘルディン氏(ノーベル財団理事長/前ノーベル賞会長/スウェーデン・ウプサラ大学分子細胞生物学教授)
成田 悠輔氏(経済学者)
【モデレーター】山田 早輝子氏(Sports Doctors Network COO兼アジア代表)

10:30-11:10 エリートメディシンの一般活用と宇宙医療の未来
ニコ・ミヒッチ氏(レアル・マドリード メディカルアドバイザー)
山崎 直子氏(宇宙飛行士/株式会社スペースデータ アドバイザー)
【モデレーター】梅澤 高明氏(CIC Japan会長/A.T. カーニー日本法人会長)

11:25-12:05 キャリアを長く保つために、選手とチームドクターが果たすべき役割とは
クリストファー・ジョーンズ氏(ロサンゼルス・レイカーズ チームドクター)
伊達 公子氏(テニスプレイヤー)
【モデレーター】村上 由美子氏(MPower Partners Fund L.P. ゼネラルパートナー)

12:05-12:35 睡眠とパフォーマンス
アレン・ユギノビッチ氏(ハーバードメディカルスクール 神経生物学・睡眠研究者)
【モデレーター】滝川クリステル氏

12:35-13:05 歯学とパフォーマンス/105年活きるには
玉井 雄介氏(株式会社SCOグループ代表取締役)
稲田 弘氏(アイアンマン世界チャンピオン/アイアンマン世界選手権最高齢完走 ギネス記録保持者)
【モデレーター】森村 國仁氏(元電通スポーツアジア社長CEO/筑波大学非常勤講師)

13:05-13:45 食とパフォーマンス/「未病」の医科学から見た健康と食/腸内環境と健康寿命
合原 一幸氏(東京大学特別教授/東京大学名誉教授)
鈴木 啓太氏(元サッカー日本代表/AuB株式会社代表取締役社長)
高島 宏平氏(オイシックス・ラ・大地株式会社代表取締役)

イベント概要

名称:Sports Doctors Network Conference 2025 in TOKYO ―最先端スポーツ医療を、すべての人へ―

日時:2025年6月24日(火) 9:00-13:45

場所:東京大学安田講堂

参加方法:事前申込による招待制

主催:Sports Doctors Network

問い合わせ先:カンファレンス事務局 http://www.genisdn.com/


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※申込多数の場合参加いただけない場合がございます。予めご了承ください。
※申込後のご連絡はカンファレンス事務局より差し上げます。

※開催曜日を訂正いたしました(正しくは火曜日)[2025/6/7]