Google初の五輪スポンサー契約は東京2020。専門家が見る「ジャパン・ブランド」

グーグル合同会社が東京2020組織委員会と「東京2020オフィシャルサポーター」カテゴリでのスポンサー契約を締結した。

Google初のオリンピックスポンサーは東京2020

Googleは6月27日、同社で初めてとなるオリンピック・パラリンピックへのスポンサー契約を、公益財団法人東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会(東京2020組織委員会)と締結したことを発表した。

契約主体はGoogleの日本法人であるグーグル合同会社で、カテゴリは「東京2020オフィシャルサポーター(インターネットにおける情報及びナビゲーションサービス)」。全世界での権利を持つワールドワイドオリンピックパートナー(TOPパートナー)、国内での権利を持つゴールドパートナーとオフィシャルパートナーに次ぐ、東京2020スポンサーのTier 3のカテゴリとなる。

オフィシャルサポーターの権利には、呼称・マーク類・関連素材の使用権、関連事業への協賛権、商品・サービスの供給機会、マーケティングサポートなどが含まれる。

Googleは、検索、地図、翻訳などを通じて、日本国内の事業者だけでなく、海外からの訪日客へのサービス提供を睨む。大会期間中だけでなく前後にも、観光客だけでなく出張客の増加も予想され、グローバルサービスが利用可能なことは顧客体験にメリットがある。Googleは、「2020 オリンピック・パラリンピック競技大会を満喫するための新機能等については、今後、随時ご案内します」との声明を発表しており、実際のサービス提供はこれからだ。

グーグル合同会社日本法人代表のピーター・フィッツジェラルド氏は、「Googleは東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会にオフィシャルサポーターとして初めてスポンサーシッププログラムに参画します。その記念すべき場所が、2001年にGoogleが海外に初めてオフィスを開設した「東京」であることに特別の感慨を覚えています」と語り、東京五輪が同社の中でもマイルストーンとなることを強調している。

東京オリンピック・パラリンピックは約1年後に開催を迎えるが、組織委員会はこの4月にもVisaと、5月にはヤフーとのスポンサー契約を発表しており、スポンサー企業は現在も増加の一途を辿る。今回のグーグルとの契約によって、TOPパートナーを除く東京2020のスポンサー企業は64社となり、五輪における過去最多となるスポンサー企業数の記録を更新し続けている。

一大会に64のスポンサー 専門家が見る「ジャパン・ブランド」の価値

Simon Chadwick
サイモン・チャドウィック氏(サルフォード大学教授/ノッティンガム大学アジアポリシー・インスティテュート シニアフェロー)

スポンサーの増加は、大会運営にとっては好都合な面がある。スポンサーシップが「商業的な支援を集め、収益を生み出し、顧客体験を向上させるのに良い方法」であると説明するのは、グローバル・スポーツビジネスの専門家であるサイモン・チャドウィック氏(英サルフォード大学教授/英ノッティンガム大学アジアポリシー・インスティテュート シニアフェロー)だ。

チャドウィック氏は、今回のような直前の契約はオリンピックにとって一般的なものの、巨大ブランドにとっては珍しい事態である点を指摘する。

「オリンピック大会の(スポンサーシップなどの)ビジネスは、通常、直前までオープンです。従って、今回のGoogleとの契約に驚きはありません。しかしGoogleにとっては、この段階で東京2020と契約するのは非常に珍しいように見受けられます。この種の契約は通常数年前に行われ、メガイベントでアクティベーション・プログラムを行うのに3〜4年を費やすことは珍しくありません」

この背景には、好調なスポンサーセールスがもたらす副次効果と、大局的には日本経済の確かな市場性があるというのが同氏の見方だ。

「今回のグーグルの動きを説明するものの一つは、東京2020のクラスタリング効果でしょう。これは(スポンサーシップ)セールスが他ブランドを追従させ、好循環が生まれるという権利販売の性質です。日本という国が、近年の経済的苦境にも関わらず、依然として世界第3位の経済大国であることも忘れてはなりません。従って多くのスポンサーは、「ジャパン・ブランド」への信頼の証として、また、日本が重要なビジネス市場であることを示すためにも、役割を果たすべきです」

オリンピックスポンサーの「最適解」は エクスペリエンスとROIに課題視

一方で、スポンサーが集中することによるデメリットも考えられる。原則オリンピックスポンサーは1業種1社とされるが、例えばヤフーとGoogleは、同じ「東京2020オフィシャルパートナー(インターネットにおける情報及びナビゲーションサービス)」のカテゴリでスポンサー契約を結んでいる。

契約カテゴリーの詳細では、ヤフーは「気象および災害警報情報の提供サービス」、Googleは「バーチャルまたはインテリジェントパーソナルアシスタントシステムおよびサービス、インターネットベースの翻訳システムおよびサービス」が含まれており、両社のサービス提供範囲が多少異なることも示唆されているが、多くの部分で競合するのは明らかだ。

チャドウィック氏は、この負の側面について次のように話す。

「スポンサーが多数にのぼるのは懸念でもあります。以前、IOCがあまりにも多くのスポンサーシップを販売し、スポンサーシップのモデルとブランドの改革に取り組まなければならなかった過去を思い出します。現在多くの(スポンサー)数があり、東京2020が公式パートナーの最適な数を超えたのではと疑問に思う方もいるかもしれません」

「これは、契約をしたブランドにとって好ましくありません。既に多くのブランドが、投資から満足のいくリターンを得られるか疑問視しているかもしれません。また、消費者にとっても、商業的な露出が多すぎることで、オリンピックのエクスペリエンスを損なう可能性があります」

「(東京2020)組織委員会にとっては、多数のパートナーがカニバリゼーション(共食い)を起こすリスクがあります。(消費者の)注目を集める競争が激しくなっても、最終的には誰も勝つことができません」

◇参照

・Tokyo 2020

Google

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