スポーツアナリストの価値を再定義し、その職域を拡大するためにスタートしたカンファレンス『スポーツアナリティクスジャパン』が今年も開催。2020年2月1日(土)に東京ガーデンテラス紀尾井カンファレンスにて行われる。
日本スポーツ界 2020年以降の未来は
今回で6年目を迎えるスポーツアナリティクスジャパンは、今年は「HACK THE DECADE(この10年間をHACKしよう)」をテーマに、東京ガーデンテラス紀尾井カンファレンスを会場として、メイン会場となる「Innovation Hall」の他、スポーツアナリティクスを深掘りする「Analytics Hall」、そしてミートアップスペースとなる「HiVE」の3会場で、全17セッションが行われる。
登壇者には、「今治から世界」をテーマに新たなクラブ作りに取り組むFC今治オーナーの岡田武史氏、Jリーグ理事として社会連携・組織開発を行う米田惠美氏などスポーツ団体のキーパーソンや、オリンピック2大会連続金メダリストの水泳・北島康介氏や、3大会連続メダリストの競泳・松田丈志氏らアスリート、そしてIT各社などから、パフォーマンスやコンディショニング、そして観戦者体験の向上など、スポーツアナリティクスを活用したスポーツビジネスについて議論が行われる。
中でも、特にタイムリーで注目度の高いセッションは「スポーツ観戦のCX(顧客体験)向上 〜グローバル調査から見えた日本の課題とFC今治の挑戦〜」と、「ラグビーW杯で増えた“にわかファン”はどうすれば定着するのか」だ。地域創生の新たなモデルとして注目されるFC今治は、2月から開幕する2020シーズンからJ3リーグ参入が決まり、ラグビーW杯後の日本ラグビー界の動きは、新プロリーグ構想も相まって関心が寄せられる。
スポーツ界でますます重要視されるCX(顧客体験)
近年の欧米スポーツ界では、スタジアムでの心に残る経験・体験は勿論のこと、アクセスや誘導など試合観戦前後のコミュニケーション、グッズやキャンペーン、イベントなど試合以外の接点創出に一団と注力がされてきた。これはファン・エクスペリエンス(≒顧客体験)の提供により、ファン・エンゲージメントを向上させる取り組みで、以前HALF TIMEでは、英コンサルティング会社The Fan Experience Company創業者のマーク・ブラッドリー氏のコラムを紹介した通りだ。
氏によれば、イングランドフットボールリーグ(EFL:2部〜4部相当)は2018/19シーズンに、1951年以来となる最多の入場者収入を記録したが、これはファン・エンゲージメントを通じて、ファミリー層を取り込んだことに起因する部分が少なくないという。
しかし日本では、試合以外でのファンとのタッチポイントが、必ずしも活用されている訳ではないのが現状だ。その一例として、スポーツアナリティクスジャパン2020で紹介され、議論されるのが、FC今治とデロイトトーマツグループが共同で1年かけて行なってきた、観戦体験の調査分析となる。
「スポーツ観戦のCX(顧客体験)向上 〜グローバル調査から見えた日本の課題とFC今治の挑戦〜」のセッションでは、写真家・ノンフィクションライターでFC今治の取材も行う宇都宮徹壱氏をモデレーターに、株式会社今治.夢スポーツ代表取締役会長の岡田武史氏、デロイトトーマツコンサルティング合同会社 M&CEユニット シニアマネジャーの森松誠二氏が登壇し、試合以外の時間の活用、試合以外でのファンとの接点創出などについて、クラブとコンサルタントの両者の視点から解説を行う。
にわかファンは、どうすれば定着するか?
昨年の日本スポーツ界で一番の話題になったと言っても過言ではない、ラグビーW杯2019日本大会。日本代表が史上初のベスト8進出を成し遂げた一方、熱狂的な各国のラグビーファンや、キャンプ地などでの地域交流などピッチ外の話題も多く、同年の流行語に「にわかファン」が選ばれたことは、ラグビーW杯がスポーツの枠を超えた証左とも言える。
一方でその「にわかファン」が、ラグビーW杯という国際大会後もラグビーという競技自体や、日本の国内リーグ、そして選手たちに関心を持ち続け、ラグビーファンやサポーターとすることができるかどうかが、日本ラグビー界にとっての喫緊の課題となっている。
以前、長年にわたりラグビー観戦者調査を行う早稲田大学スポーツ科学学術院の松岡宏高教授は、HALF TIMEの取材の中で、日本代表が熱戦を繰り広げたラグビーW杯2014年大会以降のファン層は維持されており、2019年大会以降は、如何にスタジアムにもう一度足を運ばせるかが重要と指摘していた。
このにわかファンをラグビーに引き寄せ続ける方法について、スポーツ総合サイト「スポーツナビ」のデータを基に、元ラグビーW杯組織委員会、東京オリンピックのラグビーのスポーツマネージャー、そしてスポーツナビのそれぞれの見地から議論を行うのが、「ラグビーW杯で増えた“にわかファン”はどうすれば定着するのか」のセッションだ。
同セッションでは、スポーツナビ株式会社 プロダクト企画部部長の大迫拓郎氏をモデレーターに、元ラグビーワールドカップ2019組織委員会チケッティング・マーケティング局長の宮田庄悟氏、東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会 スポーツマネージャーの松尾エイミ氏、スポーツナビ株式会社アナリストの柳下真慧氏をゲストに迎え、「にわかファン」の心を掴み続ける方策を探る。
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これ以外にも、ミレニアル世代、デジタル、ソーシャルイノベーション、パフォーマンス&コンディショニング、リアルタイム分析など、様々なキーワードでセッションが繰り広げられる。さらに「HiVE」会場では、イノベーション・エコシステムの構築を行うVenture Cafe Tokyoとのコラボレーションにより、スポーツの枠を超えた異業種の人材が交流するミートアップの機会も提供する。宇宙、SDGs、ファッション、音楽など、幅広いトピックを扱うトークセッションは、もう一つの見所だ。
カンファレンスのチケットは、一般 13,500円、学生 6,750円。交流会は一般・学生問わず2,500円(全て税込)となっており、公式WEBサイトから購入できる。