プレミアリーグやラ・リーガでも 欧州サッカー界が進める「アウェーチケット」の価格改革とは?

8月のシーズン開幕を迎えた欧州サッカー。近年チケット価格が高騰する中、アウェーサポーターへの配慮や一層の取り込みに向けて、アウェーチケットの価格設定について改革が進められている。

アウェーチケットの上限制 スペインはバスク地方で開始

サッカー・スペイン1部リーグに所属し、北部のバスク地方に本拠地を置くアスレティック・ビルバオ、レアル・ソシエダード、SDエイバル、デポルティーボ・アラべス、CAオサスナは、7月17日、5チームの間でアウェーチームの観戦チケットを25ユーロ(約3,000円)で販売する協定を結んだことを共同で発表した。

この協定は5チームのいずれか同士が戦う試合に適用され、アウェー向けの座席数は各スタジアムのキャパシティに準ずる。5チームのスタジアムはそれぞれ車で2時間程度の距離に位置していることから、アウェーチームのファンやサポーターの来場者数の増加を狙う。

「バスクダービー」と呼ばれるアスレティック・ビルバオ対レアル・ソシエダードの一戦も対象となっており、一層注目度が上がるだろう。また、SDエイバルには乾貴士が1年振りに復帰しており、日本のファンにとってはアウェーでエイバルを観戦するという選択肢も増える。

フランスやヨーロッパ全体でも議論進む

フランスでもこの2019/20シーズンから、フランス・プロサッカーリーグ連盟(Ligue de Football Professionnel:LFP)が、フランス1部及び2部リーグのアウェーチケットに料金の上限を定める方針であることを、英『Sports Pro』が報じている。1部リーグで10ユーロ(約1,200円)、2部リーグが5ユーロ(約600円)の価格が提案されており、非常に安価な価格設定と言える。

フランスリーグは2019/20シーズンからUber Eatsをパートナーに迎える大型契約が始まることはHALF TIMEでも報じた通りだが、新しい改革がさらにリーグで始まりそうだ。

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また英紙『The Telegraph』によれば、欧州サッカー連盟(UEFA)も、チャンピオンズリーグ(CL)とヨーロッパリーグの各大会で、アウェーチケット料金の上限制について議論を進めている。これは、2017年11月のCLグループリーグで、バイエルン・ミュンヘンのサポーターがアウェーのアンデルレヒト戦でのチケット価格高騰に反発し、観戦を一部ボイコットしたことが契機になっている。

イングランド・プレミアリーグの成功例

アウェーチケットについて早くから対策を講じてきたのがイングランド・プレミアリーグだ。プレミアリーグでは、2016/17シーズンから2018/19シーズンの3年間で、アウェーチケットの販売価格の上限を30ポンド(約4,000円)とする取り組みを行ってきた。英『BBC』は、「過去4シーズン、プレミアリーグは96%という記録的なチケット販売を記録した」とのリーグのステートメントを紹介し、この制度を2020/21シーズンまでの3年間延長するリーグと各クラブの決定を報じている。

イングランド・プレミアリーグで2008年から2019年まで11年間プレーしたヴァンサン・コンパニ(元マンチェスター・シティFC/現RSCアンデルレヒト選手兼任監督)は、2018年に英紙『Financial Times』で、自身のMBAの研究を基にして、観客とプレーの関係性について次のように触れたことがある。

25人の現役又は引退選手からの意見として、満員のスタジアムでのプレーはホームチームのパフォーマンス向上につながり、アウェーチームの抑制にもつながる

アウェーチケットの価格を高騰させ、かえってアウェーチームのファンやサポーターの足をスタジアムから遠ざけるよりも、スタジアムを満員にするということが、ホームチームのパーフォーマンスにも影響することが示唆されている。

サッカーは今や世界中でエンターテイメント・コンテンツになっているが、欧州の各サッカーリーグのように、チケット価格の高騰がスタジアム観戦への障壁になる可能性も孕んでいる。現在の欧州サッカー界の取り組みは、世界各国へ普及していくかもしれない。

◇参照

・Athletic Club

・BBC

・Sports Pro Media

・The Telegraph

・Financial Times

(画像=Silvi Photo / Shutterstock.com)