野球で投手が投げる球種は、大きく分けて直球・変化球の2種類ですが、変化球には数多くの種類が存在しています。
細かい変化の違いを加えたら、100種類以上もの球種があるといわれています。
なかには、以前は知名度が低くても、最近よく耳にするようになった球種も存在。そんな最近よく名称を聞くようになったモノに『カットボール』があります。
近年、カットボールを投げる方が増えているようなのでよく耳にすることも増えた球種ですが、名を聞いてどのような球種なのかわかる方は少ないのではないでしょうか?
本記事では、そのカットボールについてをまとめて大紹介しているので、ぜひご覧ください。
カットボールとは?
カットボールは数多くある変化球の1つ。変化球とは、直球は重力によって放物線状の軌道を描いて進んでいくのに対して、放物線で進む弾道・軌道が途中で変わる球種のことです。
曲球やくせ球、つり球とも呼ばれており、英語では「change ball」「breaking ball」と呼ばれています。
ちなみに、「breaking ball」は、今年メジャーリーグで大活躍した大谷翔平選手がよく投げる球のように、急に球筋が変わる球を呼ぶときに使われていたことから耳にしたことがある方もいることでしょう。
放物線で進む弾道・軌道が途中で変わる理由は、投手が投げる際に球に、下記の変化を加えているためです。
- 球速
- 回転
- 回転量
この加える変化によっていくつかの種類に分類されていますが、人によって4種類であったり6種類であったりします。
本記事では、もっとも大まかな分類である4種類での分類を中心に紹介します。
そして、4種類の球種はこちら。
- 横曲がり球系
- 落ち球系
- 直球系
- 特殊系
カットボールとは、直球とほぼ同じ球速で進み、打者の直前で利き腕(投手の)とは逆に球1つ分変化する球種のこと。少しスライドして沈むため、人によっては横曲がり球系に分類している方もいます。
そもそも横曲がり球系とは、スライダーやシュートのように横に変化したり、カーブやシンカードロップのように斜め横に変化したりする球種のこと。また、直球と同じ投げ方をするため、直球系に分類されていることもあります。
そして直球系とは、通常の直球(ストレート)と違って、同じ投げ方をしていて、直球に近い球速なのに軌道が途中で変化する球種のこと。日本にこの球種を浸透させた人物は、「日本ハムファイターズ」「福岡ダイエーホークス」「中日ドラゴンズ」「読売ジャイアンツ」の計4球団で活躍した武田一浩選手だと言われています。
彼は、日ハム時代のチームメイトであったマット・ウインタース選手に教わったとのこと。このマット・ウインタース選手は、ニューヨーク州バッファロー出身の選手で、投手ではなく外野手です。
- 千賀滉大選手(ソフトバンク)
- 森唯斗選手(ソフトバンク)
- 唐川侑己選手(ロッテ)
- 山本由伸選手(オリックス)
- 藤浪晋太郎選手(阪神タイガース)
その他、上記の選手がカットボールを得意としていると言われています。
カットボールの投げ方と握り方
カットボールのような変化球は、球をどう握るかも重要になってきます。
その理由は、野球の球には縫い目があるため。この縫い目は、シームとも呼ばれています。
どう変化するかは回転と回転量によって変わってきますが、変化球を投げる際に必要となる回転をつくるために投手はシームの指係りを利用します。また、シームがあることで空気抵抗が発生し、その空気抵抗によっても、変化がより大きくなります。
ここでは、カットボールを投げるために重要となる握り方と投げ方、そして投げる際の注意点を解説していきます。
基本の握り方は?
カットボールの握り方の前に、基本的な野球での握り方は理解しておかなければなりません。
野球では、下記の手順で球を握ることが基本です。
- 直球を投げると同じ球の向きにして中指と人差し指の腹を引っかけて握る
- そこから親指を立てようにして、中心から少し中指と人差し指をずらす
球がどう変化するかは、中心からどれだけシームにかけている2本の指をずらすかで変わってきます。ずらす幅が大きいほど変化は大きくなりますが、球の速さは落ちていきます。
そのため、大きく変化させたい場合は、指を大きくずらしましょう。
逆に小さな変化で凡打を打たせて打ち取りたい場合は、ほんの少しだけずらすことで、球速は直球とそれほど変わらず、打者の直前で微妙に変化します。
カットボールはどうやって投げる?
カットボールの投げ方は、直球と同じ投げ方をするのが基本。下記のことを意識しながら投げるのが、直球の基本的な投げ方です。
- 腕を強く振る
- 指先まで腕がしなるようなイメージで投げる
- 手首のスナップを使う
- グローブ側の肩が開かないようにする
また、打者の手前でしっかりと変化させたい場合は、シームにかけた2本の指で切るように投げるとよいです。
逆に球速を落とさず手前で少しだけ変化させたいのなら、中指で球を押すようにし、そこから切るように投げましょう。
投げる際の注意点
カットボールを投げる際は、下記のことに注意しましょう。
- 直球とフォームを変えない
- 球は浅めに握る
- 手首をひねらない
- 指はしっかりとシームにかける
カットボールは変化球の1つですが、変化で空振りを誘うのではなく、変化で惑わせ打ち取るのが目的。そのため、直球とフォームが違っていたら、直球ではないことがバレてしまいます。
カットボールのフォームは、直球と変えないということがポイント。また、手首は捻らないようにして、できるだけ固定して投げるのもコツです。
指をしっかりとシームにかけていれば、強い回転がかかるため投げ方は直球と同じであっても変化していきます。
つまり、シームへの指のかかりがあまいと変化しないので、投げる際は必ずシームにかける指がしっかりかかっているか確認するようにした方がよいでしょう。
ちなみに、深く握っていると回転がかかりにくいので、浅めに握るのもポイントです。
カットボールとスライダー違いとは?
カットボールは、球が打者の直前でスライドするため「高速スライダー」とも呼ばれています。
そのため、スライダーとの見分けが非常に難しいです。
2つの球種の違いは、球速や変化の大きさ(回転量)だと言われていますが、投げた球の速度や変化の程度は投手によって違っているため、解説者が語る球種と投手が投げた球種とが違っていることがよくあります。
例えば、上記で紹介した藤浪晋太郎選手が投げた球は、変化があまりにも大きかったため、両方の中間という意味を込めて「スラッター」と表現されていました。
そのため、どっちなのかは多くの球種を見てきた熟練者でも見分けが難しく、違いは投げた本人でないと分からないとも言われています。
ただ、1つだけ大きく違っている点がありますが、それは目的です。
スライダーは、変化で空振り・見逃しさせるのを目的とする球種。それに対しカットボールは、直球かと思わせて、打つ直前の変化で相手を惑わせながら打ち取ることを狙いとしています。
まとめ
今回は、カットボールの特徴に加えスライダーとの違いについて解説してきました。
カットボールは、熟練者でも間違えてしまうこともある変化球のため、素人では見分けは難しいかもしれません。
現在、カットボールは数多くのプロ野球投手が使っている変化球です。握り方を変えるだけで投げることができる変化球なので、投手として球種・投球術の幅も広がるところは大きなメリットです。
ファンにとっても、投手のさまざまな球種は魅力的で、楽しみながら観戦できるでしょう。
(TOP写真提供 = Ryan Hoffman / Unsplash.com)
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