penetrateとは「貫く」「突き刺さる」という意味を持つ言葉であり、バスケではオフェンス選手が相手のディフェンスを突破するアクションのことを指します。
攻撃のアクションにはペネトレイトのほかに、ドライブやカットインがありますが、本記事では、これらの類似用語と比較しながら、ペネトレイトの方法とペネトレイトを身につけるコツを解説します。
3つの攻撃手法の比較
ペネトレイト、ドライブ、カットインは3つとも攻撃手法のこと。
それぞれの手法を簡単に説明すると
- ペネトレイト:オフェンス選手がドリブルしながら相手ディフェンスに向かっていき、それを突破してシュートを打つ。またはパスをする。
- ドライブ:ドリブルで相手ディフェンスを突破してゴールに向かう。
- カットイン:ドリブルを使わずにディフェンスに切り込み、シュートを打つ。
という動作を表します。
これらの違いとして、ペネトレイトは「攻撃の展開方法」の名称、ドライブとカットインは「攻撃方法」の名称であり、「ペネトレイトとドライブ」はドリブルを伴うものであるのに対し、「カットイン」はドリブルを伴わない動作であるということが挙げられます。
また、ペネトレイトとドライブは、ボールを持っているところからアクションが始まるのに対し、カットインはアクションのスタート時点でボールを保持しない動作です。
ペネトレイトとは
ペネトレイトを「ドライブやカットインをすること」と理解している人も少なくありませんが、それでは半分しか正解していません。
ペネトレイトとは、ドライブやカットインだけでなく、ドリブルやパスやシュートやフェイントなどを駆使して、オフェンス選手が連係して攻撃を展開することであり、ドライブやカットインは、ペネトレイトの手法の1つにすぎません。
ペネトレイトの目的は「攻撃の展開」
ペネトレイトの目的は、攻撃を展開すること。
バスケの攻撃では、展開が必要な攻撃と、展開が必要でない攻撃があります。
例えば、自陣が攻撃されているときに、相手のパスミスからボールを奪い取ることができたら、相手陣地がガラ空きになっているので1人でそのままゴールまで突き進むことができます。このとき、攻撃を展開する必要はありません。
一方で、相手が強固なディフェンス陣形を築いているときは、ペネトレイトによって攻撃を展開していかないとゴールを奪うことができません。
攻撃を展開する、とは
バスケの攻撃は、相手の行動によって自分たちの攻撃陣形が簡単に崩されてしまうことがあります。したがって、攻撃の展開方法は、自分たちの都合だけで決めることはできません。
つまり、攻撃の展開、ペネトレイトとは、オフェンス陣の力を結集して攻撃陣形を整え、戦略的にゴールを獲りに行くこと、といえます。
ペネトレイトを構成する4つの要素
ペネトレイトは次の4つの要素で構成されます。
- 味方と相手の状況を把握する
- 味方と相手の行動を予測する
- すべての瞬間ですべきことを決断する
- 攻撃のテクニックを駆使する
この4つを覚えておけば、ペネトレイトに必要なテクニックが理解できます。
ペネトレイトに必要なテクニック
ペネトレイトに必要なテクニックは、前述したペネトレイトの構成要素と同じ
- 味方と相手の状況を把握する
- 味方と相手の行動を予測する
- すべての瞬間ですべきことを決断する
- 攻撃のテクニックを駆使する
の4つ。
どれも重要なので1つずつ確認していきます。
味方と相手の状況を把握するテクニックとは
状況把握は、味方に対するものと相手に対するものをわけて考えます。
味方の位置は瞬間ごとに変わるもの。したがって、ペネトレイトを仕掛けているときは、味方がどこにいるか常に把握しておかなければなりません。
また、ペネトレイトを仕掛けているとき、相手の選手たちは守りに入っているので、動きの幅は大きくありません。しかし、突然大きく動くこともあります。
味方の動き方と相手の動き方に違いがあるので、別にわけて把握することが大切です。
味方と相手の行動を予測するテクニックとは
例えば、「パスを受けやすい場所に移動しながら、実際にパスを受け、ドリブルをしてパスをする」という役割が回ってきたとき、そのアクションに集中しなければならないので、全員の状況を把握できなくなります。
しかし、観察できない時間が生まれると、ペネトレイトの攻撃力が低下します。
この「観察の空白の時間」を埋めるために有効なのが、「予測」です。
例えば、2秒前に3メートル後方にいた相手選手が、2秒後にどこにいるのかを予測できれば、その2秒間は観察を休んで自分のプレーに専念できます。
また、味方選手の行動を予測できれば、その選手が1秒後にいるであろう場所にボールを投げることができます。こうすることで、1秒分だけ味方選手を前進させることができます。
味方と相手の行動を予測するテクニックは高度なものですが、それだけにこのスキルを身につけるとペネトレイトの攻撃力は格段に増加します。
すべての瞬間ですべきことを決断するテクニックとは
バスケは、野球やサッカーと比べて試合展開が速いのが特徴です。
つまり、一瞬の躊躇が命取りになることは、バスケも野球もサッカーも同じですが、一瞬の判断が求められる回数は、圧倒的にバスケのほうが多いもの。
パスを受ける位置を1メートルずらしただけで攻撃ラインがつながることがあるなど、ボールを持っていても持っていなくても、すべての瞬間で判断が求められます。
攻撃のテクニックとは
バスケはテクニカルなスポーツです。したがって、ドリブルとパスとシュートが得意な選手は、ドリブルとパスが得意な選手より有利となるなど、テクニックを多く持っている選手のほうが有利になります。
ペネトレイト中は、自分が持っているあらゆるテクニックを使って相手をほんろうしたり、味方にパスをとおしたり、ゴールを奪ったりしなければなりません。
ペネトレイトの練習法
ペネトレイトを強化するためには、把握、予測、決断、テクニックの4要素を磨く必要があります。
どのような練習をすれば、これらのスキルが身につくのでしょうか。
チラリと見ただけで誰かわかるようにする
味方選手と相手選手を把握するには、よく見る必要があります。「後頭部にも目がついているのか」と言われる選手がいますが、なぜ、死角になるはずの後方の様子まで観察できるのかというと、瞬時にチラリと見ただけで、それが誰でどのような選手なのかを把握できるからです。
背番号、シューズの色、髪型、リストバンドのデザインを覚えて、チラリと一瞬見ただけで誰かがわかるようにしておくことが大切です。
癖を読み、パターンをつかむ
味方選手と相手選手の動きを予測するには、練習のときから「この人はこういう動きをする」「こういう攻撃を仕掛けると相手はこう動くことが多い」といったことを観察しなければなりません。
癖を読み、パターンをつかむようにしてください。
瞬時に選択肢を思い浮かべ瞬時に判断する
決断とは、複数の選択肢のなかから最良のものを選び、実行することです。
そして、決断は、正しくなければ意味がありません。
例えば、攻撃中に「このままドリブルで突破するか」「パスをするか」という選択肢を思い浮かべたものの、「その場でシュートを打つ」という選択肢が必要だった場合、正解することができません。したがって、まずは、正しい選択肢を選考できるようにしましょう。
ただし、選択肢の数を多くすると、選ぶのに時間がかかってしまいます。
「AかBか、よしAだ」とすぐに行動できるよう、選択肢を2つに絞れるようにしてください。
決断のスキルを磨くには、素早く選択肢を思い浮かべ、素早くすべてを吟味して、素早く正解を選ぶ訓練を積むといいでしょう。
反復練習、実戦投入、1on1、フェイント、シュート、強いドリブル、適格なパス
テクニックを磨くには、反復練習をしたり、試合で使う機会を増やしたりする必要があります。
そのためには、1on1を繰り返したり、フェイントを使えるようになるといいでしょう。
相手チームに「あの選手はどこからでもシュートを狙ってくる」と思わせることができると、その選手への警戒が強まり、他の味方の選手へのガードが薄くなるため、どこからでもシュートが打てることは、ペネトレイトにおいて大きな強みになります。
また、自分の力でボールを運ぶドリブルのスキルや味方が取りやすいパスなど、さまざまなバリエーションのドリブルやパスの技術を習得することも重要です。瞬時に相手を抜き、ディフェンス側が奪いにくいドリブルやパスの技術を身に付ければ、ペネトレイトを使った攻撃の成功率はさらに上がるでしょう。
この他、当たり負けない強い体を作ることも大切です。身体をどう鍛えるとより効果があるのか、意識してトレーニングを行うとよいでしょう。
まとめ ~チームで考え、個で考える
ペネトレイトはチームワークがベースになりますが、ペネトレイトを発展させるのは個の力です。
ワンパターンなペネトレイトはすぐに相手に読まれてしまい、陣形を崩されてしまうため、個の力を限界まで高めてチームメイトとペネトレイトの練習をするときにそのすべてを吐き出し、新たな攻撃陣形を組みあげましょう。
チームも個人も、常に新しいことにチャンレジすることで、強固なペネトレイトを展開できるようになります。
(TOP写真提供 = Markus Spiske / Unsplash.com)
《参考記事一覧》
バスケの用語がわからない!ペネトレイトってなに?(調整さんwith)