パナソニックの行うスポーツビジネス。骨格となるデジタル機器分野では、スポーツシーンに技術を提供しています。それにより、自社の能力のアピールと、宣伝効果があります。また、スポーツをより発展させることで、日本のスポーツビジネスの基礎を底上げし、ビジネスとして今よりもっと発展させることができると考えているのです。さらに、スポーツシーンで活用された確かな技術で、人々の生活の向上にもつなげようという動きも出ています。この記事では、パナソニックとスポーツビジネスの関わりについて詳しく解説していきますので、パナソニック×スポーツビジネスに興味のある方はもちろん、スポーツビジネス業界に興味のある方もぜひ、読んでみてくださいね。
パナソニックがスポーツビジネスを始めたわけとは?
パナソニックがスポーツビジネスを始めたきっかけとしては、技術の証明とスポーツビジネス業界の市場拡大が予想されることが挙げられます。
確かな技術を保持していることを証明し、これから規模の拡大が予測されるスポーツビジネス業界に乗り出すことを目的としています。
技術の証明
パナソニックは既存事業の音響や映像機器にプラスし、家電や、電動自転車を選手村に提供しています。技術力を見せる絶好の機会として捉えているのです。
日本では、スポーツを体育や運動、教育として考えることが多いですが、海外の場合はビジネスとして捉えています。
あくまで自社の商品技術のアピールの場として、オリンピックを利用しているといえるでしょう。
市場規模の拡大が予想される日本のスポーツビジネス
日本国内では、2019年からラグビーワールドカップ(W杯)、東京五輪・パラリンピック、関西ワールドマスターズゲームズ(WMG)と巨大なスポーツイベントが立て続けに開催されます。
そこで日本政府は、スポーツの市場規模を2012年の5兆5000億円から25年には15兆円に拡大させる戦略を発表しました。
この流れに対応するため、パナソニックでは、今までの経験値を活かそうとしています。
2020年と2025年の目標
スポーツ庁では、スポーツをビジネスとしてより活発化させることを目指しています。その数値目標として、2020年には10兆9000億、2025年には15兆2000億円にまで拡大しようとしています。
そうしてスポーツビジネスで得た資金を選手の育成や、施設の充実などに活用し、日本のスポーツを根本から強化しようとしているのです。スポーツが強化されることによって、スポーツビジネスをさらに活性化。このようなサイクルを作り出すことを目標としているわけです。
4つの市場でビジネスを展開
パナソニックは、4つの柱によって、ビジネスを展開しています。
具体的には、物販型ビジネス、コンテンツ型事業、サービス型事業、運営型事業です。
ここからはそれぞれの内容について紹介します。
物販型ビジネス
物販型ビジネスの商材としては、放送や中継機器、プロジェクターや電子看板、店舗向けレジシステム、LED照明、大規模空調機などを取り扱っています。
幅広い電子機器をオリンピックなどのスポーツイベントに採用されることで、自社のビジネス機会の拡大に生かしているのです。
コンテンツ型事業
コンテンツビジネスとしては、プロ野球の例が分かりやすいでしょう。
北海道日本ハムファイターズの本拠地、札幌ドームでは、風船カメラによって、上空からの撮影を行うほか、試合をみながら、選手の情報などを提供するための巨大ガラスにプロジェクターで情報を投影。高い臨場感を味わえるシステムを構築しました。
また、東北楽天ゴールデンイーグルスの本拠地、楽天koboスタジアム宮城では、縦10.24m、横25.088mの大型LEDビジョンによるスコアボードを導入しました。
そして、座席から食べ物などを注文、イニングの間にこれを受け取れるようにするモバイルオーダーシステムを採用しました。さらには、リモートコントロールカメラを駆使し、チームの強化につながるようなシステムを構築しています。
サービス型事業
サービス型事業では、スタジアムの演出などが含まれます。リオオリンピックでは、高品質音響システムを41会場に導入したほか、大型LED装置を72面使用されました。放映機器としても、放送用スイッチャー70台、システムカメラ40台を納入しています。
開会式ではプロジェクターを約110台納入するなど開閉会式にも大きく役立ちました。
さらに、開閉会式では、映像演出の元請けをつとめました。この役割はパナソニックにとっては初めての試みでしたが、無事成功したことでサービス型事業の発展に結びついています。
運営型事業
パナソニックは、オリンピック・パラリンピックのトップスポンサーになっています。このスポンサー実績は、他の競技団体のスポンサーをつとめる上で役立てられています。
社会人野球チーム、Jリーグのガンバ大阪、バレーボールのパンサーズ、ラグビーのワイルドナイツ、アメフトのインパルス、といったスポーツ資産を保有しています。スタジアムや各団体と連動し、ビジネスとして発達させようという狙いがあるのです。
物販型ビジネスの実際の導入例
物販型ビジネスの例として、分かりやすいのは先述のプロ野球でしょう。また、こうしたビジネスの目標として、顧客との接触機会の増加が挙げられます。
楽天koboスタジアム宮城
楽天は、本拠地の動員効果で17年シーズン1試合当たりの観客数が10%増となり、その伸び率は12球団でトップクラスでした。こうした結果を出せたのは、楽天koboスタジアム宮城ならではの取り組みのためです。
たとえば、場内アナウンスとともに11枚の大型ビジョンで様々な角度の映像を放映し観客の興奮を誘います。他にも、SNSなどで観客が撮影した映像をビジョンに流したり、過去の名場面を配信しています。さらに、スマホアプリで客席から食べ物や飲み物を注文。売店では商品を受け取るシステムも導入しています。
こうしたシステムにパナソニックが大きく関係しているのです。
札幌ドーム
札幌ドームでは、2016年に特殊なVIP席を試験的に設けました。その席では、ガラスに選手の動画が映ったり、打球音が響いたりとリアルに野球を感じられます。
また、場内で流す映像広告のクラウドサービスも開発しました。通常のスタジアムでは場内で担当者がシステムを操作して広告を流します。しかし、クラウド管理を導入することにより、広告の空き状況などを把握しやすくなり、効率よく営業ができます。
こうした取り組みによって、スポンサー収入が伸び悩むチームに対し、テクノロジーを役立てていくことを目指しています。
パナソニックが目指すところは、各種スポーツの会場に流す広告を一括で制御するシステムの開発なのです。
スタジアムビジネスの導入はファンとの関係構築のため
スタジアム向けのビジネスの目標は、ファンとの継続的な関係づくりが中心です。これは、五輪などの巨大イベントに比べると地道な取り組みになるでしょう。
機器を売るというイメージが深く根付くパナソニック。そういったイメージから、手厚いサービスで顧客との接点を増やすモデルへの転換を掲げています。そういった戦略を実践するためにスタジアムビジネスを導入しているのです。
コンテンツ型事業の導入例
ここからは、実際にコンテンツが導入された事例を紹介します。デジタルコンテンツを利用することで、効果的にスポーツシーンを充実させられるのです。
2Dトラッキングシステム@競泳
競泳には、2Dの分析システムを納入しています。このシステムは、画像解析によって、泳ぐスピードをリアルタイムで計測して表示させるものです。
これによって、観戦の質があがり、よりエキサイティングな観戦が可能になっています。
3Dトラッキングシステム@バレーボール
バレーボールには、3D分析システムを導入しています。
実際には、スパイクされたボールの落下地点や速度、アングルなどを、高レベルの情報として自動記録。映像と連動させることでリアルタイムに表示できるので、分かりやすい観戦ができます。
非接触バイタルセンシング@ゴルフ
ゴルフには、非接触バイタルセンシングを納入しています。
この技術は、カメラで撮影した顔の映像から、選手の体に触れずに心拍数を計測できます。パットのシーンなどで、選手の心拍数の移り変わりが把握できる機能です。それを映像に表示する事で、緊張感を表現ことが可能になります。
ゴルフだけでなく、マラソンなどの選手の心拍数の移り変わりなどにも応用可能と考えられています。
さらに、集められた映像データは、選手のトレーニングや試合中の指示などにも応用できます。選手の強化にもつながることでしょう。
サービス型事業の導入例
ここからはサービス型事業の導入例を紹介します。リオオリンピックでの映像演出や、VOGO Sportの提供です。
リオオリンピックでの映像演出
リオオリンピック・パラリンピックでは、最新のデジタル技術で開閉会式を演出しました。そしてRio2016とのパートナー契約を勝ち取ったのです。
実際にリオオリンピック開会式では、高画質化でコンパクトボディのプロジェクターを約110台、などパナソニックの誇る映像音響機器を会場に多数設置しました。開会式の華やかな演出に大きく貢献したのです。
VOGO Sport
2017年にVOGOによる競技場内モバイル向け動画配信を開始しました。導入先は、ラグビートップリーグやアイスホッケーの試合会場です。
360度ビデオカメラを活用した撮影、さらには今話題のVRに対応したコンテンツを配信しています。
安全で快適な暮らしを実現するための取り組みを進める
パナソニックでは、スポーツビジネスだけでなく、その技術を応用した生活の安全性を高める取り組みも行っています。
無電柱化の推進
国内では2016年12月に、無電柱化推進法が成立しました。電柱やネットワーク機器を地中に埋めて無電柱化が推進されます。
そうした中、パナソニックと東京電力は、無電柱化によって設置される地上機器に、ディスプレイを埋め込むことで、情報を提供の場にするとともに、Wi-Fiスポットとしての活用、カメラを利用したサービスの提供やセキュリティ強化を実現しようとしています。将来的には、EVの充電スポットとしての活用も視野に入れているのです。
顔認証ゲート
パナソニックので顔認証ゲートは、顔認証技術の活用によって日本人の出帰国手続の効率化の実現を目指しています。
海外渡航が初めての人や高齢者でも、抵抗感なく間違わない・迷わないをコンセプトに新開発を行っています。
オリンピックが行われる2020年とそれ以降に観光立国実現に向けて技術の向上に励んでいるのです。
まとめ
いかがでしたでしょうか。パナソニックは、日本のスポーツビジネスを得意のITテクノロジーによって発展させようとしています。
また、そういった取り組みはスポーツだけでなく市民生活の利便性とに安全性につながっていくのです。
参考記事一覧
【パナ100年・「みせる」スポーツ(上)】五輪「技術見せる絶好機」(産経新聞)
パナソニックがスポーツビジネスに本格進出する理由(DIAMOND ITビジネス)