空手は、今回の東京オリンピックで初めて採用され、実施される種目です。
元々は中国拳法を源流とし、かつては「唐手」と呼ばれ、琉球王朝時代の沖縄で独自に発展した武術です。オリンピック種目の「形」では採点方式の演武、「組手」では寸止めルールの対戦形式の試合が行なわれます。
本記事では、空手のユニフォームの一部の帯について、帯制度、帯の結び方、帯の洗い方などと合わせて解説します。
空手の帯制度とは
空手の帯制度には、柔道の帯制度が取り入れられています。どの流派でも、基本的に白帯から始まり黒帯に至るのですが、黒帯に至るまでの級位と帯の色は流派によって違います。黒帯は空手道の出発点と言われ、ようやく黒帯で空手道のスタート地点に着いたことになります。帯は、空手家と空手道をともに歩む重要なものです。
まずは、空手の帯制度から解説します。
日本空手機構の帯制度
流派や会派を問わず、全ての空手愛好家の助成団体である日本空手機構が定める空手の段位と級位によって、帯の色が変わります。
白帯は何物にも染まっていない状態を表し、心技体の習得の度合いに従って帯の色が変わります。級の間は12級から1級まで習得するに従って級数が減って、帯の色も黄、オレンジ、青、緑、紫、茶と変わっていきますが、茶帯の次の黒帯になる初段を取って、空手道のスタートに着いたことになり、そこから段位は10段まで上がっていきます。
<日本空手機構 段位・級位と帯の色表>
段位と級位 | 帯の色 |
無級 | 白 |
12級 | 白に黄色線 |
11級 | 黄色 |
10級 | 黄色に赤線 |
9級 | オレンジ |
8級 | 青 |
7級・6級 | 緑 |
5級・4級 | 紫 |
3級・2級・1級 | 茶 |
初段以上 | 黒 |
極真会館の帯制度
極真会館は、1964年に空手家である大山倍達氏によって設立されました。現在では世界124カ国1,200を超える公認道場で、非公認を含めると1,200万人を超える会員が稽古に励んでいるとされます。
極真会館では、白帯からスタートは同じですが、オレンジ、青、黄、緑、茶、黒帯の順に変わります。級位は10級から1級まで、2級ごとに帯の色と相関しています。その後は黒帯・初段から大山総裁の段位の10段まで上がっていきます。
<極真会館の段位・級位と帯の色表>
段位と級位 | 帯の色 |
入門 | 白 |
10級 | 橙(だいだい) |
9級 | 橙に銀一本 |
8級 | 青 |
7級 | 青に銀一本 |
6級 | 黄 |
5級 | 黄に銀一本 |
4級 | 緑 |
3級 | 緑に銀一本 |
2級 | 茶 |
1級 | 茶に銀一本 |
初段以上 | 黒 |
極真空手道連盟 極真館の帯制度
極真館は、2003年に極真会館から分裂してできた団体で、ちなみにロシアのプーチン大統領はこの団体の段位8段を取得しています。
極真館ではさらに細かく級位と帯の色が定められています。10級から始まり1級まで、白から9色+茶色に銀線の帯までが黒帯を得るまでに定められています。初段からは10段まで段位が上がっていきます。
<極真館 段位・級位と帯の色表>
段位と級位 | 帯の色 |
無級 | 白色 |
10級 | 橙色 |
9級 | あずき色 |
8級 | 水色 |
7級 | 青色 |
6級 | 黄色 |
5級 | 藤色 |
4級 | 黄緑色 |
3級 | 緑色 |
2級 | 茶色 |
1級 | 茶色銀線入り |
初段 | 黒色金線入り |
例として3つの流派の帯制度について解説しましたが、それぞれの流派によって帯の色と段位・級位が微妙に異なっています。
帯の結び方
空手家にとって、帯の結び方も大切です。練習中に帯がほどけてしまっては時間の無駄になりますし、試合においては減点になってしまいます。以下、2種類の結び方をご紹介します。
基本となる帯の結び方「本結び」
- 帯の長さの真ん中がおへその下に来るように当てます。
- 後ろで帯を交差させて、前に持ってきます。右が上、左が下がひとつ目のポイントです。
- 左は帯の中に入れ込むようにして前に持ってくることがふたつ目のポイントです。
- 上の方の帯をお腹と帯の間に通します。
- 1度力を入れて締めます。
- 右側の帯を下に、左側の帯を上にして輪を作ります。
- 上になっている左側の帯を、下から輪の中をくぐらせて締めます。
- 帯の両側を垂らして完成です。
⑥⑦では、「下の帯に対し、上の帯を左から巻いていく」という表現も使います。逆にすると、「たて結び」となり縁起のよい結び方にならないので、注意が必要です。
帯は背中で交差されますが、③のように、入れ込むように持ってくることで、帯が真っ直ぐ二重になり、きれいに見えます。
ほどけにくい結び方の「さし結び」
さし結びは、本結びの説明の③までは一緒です。
- 帯の長さの真ん中がおへその下に来るように当てます。
- 後ろで帯を交差させて、前に持ってきます。右が上、左が下がひとつ目のポイントです。
- 左は帯の中に入れ込むようにして前に持ってくることがふたつ目のポイントです。
- 右手の帯は左に渡しておきます。左手の帯を、帯の下をかいくぐらせて右上に出します。出した帯を先ほどの左手の帯の下に通します。その時、右手の帯の上に来るようにします。
- ここで右手の帯を、全ての帯を抱えるように右上に持ってきます。
- 右上から帯の間に通します。
- 帯の両端を左右に引き締めて完成です。
さし結びは柔道の試合においては反則となりますが、空手では反則ではありません。もしも本結びだとすぐにほどけてしまうようでしたら、さし結びも覚えておくと便利です。
帯の洗い方
空手の帯は、基本的に洗わないと言われています。その理由には、空手の帯には魂が込められている、洗うと魂が抜けてしまう、という精神的な理由や、何度も洗濯すると帯が柔らかくなりすぎたり、縮んでしまったりするという素材の理由もあります。また、特に黒帯などの色のついた帯は色褪せが早くなってしまったり、強くなった証を洗い流してしまう、と考えたりする方もいるそうです。
洗ってもよいと思われる状況のひとつには、新しい帯は硬く、まだ馴染んでいないため、一度水通しをして柔らかくすると、結びやすくなります。
また、たくさん稽古をすることで帯に汗が染み込み、においが気になったり、触った感触がぬるぬるしていたりするような時には洗うとよいでしょう。新型コロナ感染の予防の意味からも、相手と接近のあるスポーツですから、清潔な身なりを心がけましょう。
洗う際には、手洗いでぬるま湯につけ押し洗いした後に、ぬるま湯ですすぎ洗いし、日陰で陰干しするとよいでしょう。
まとめ
空手の帯について、帯制度、帯の結び方、帯の洗い方について説明しました。
空手は多くの流派に分派が進んでいて、流派によって決まりが異なります。多様性も大切ですが、今後オリンピック種目となって永く続けられていくには、統一感のある団体運営が大切でしょう。今後の空手界に注目していきましょう。
(TOP写真提供 = Ashima Pargal / Unsplash.com)
《参考記事一覧》
よくあるご質問 黒帯になるには (国際空手道連盟 極真会館ホームページ)
極真館の昇級・昇段・帯について (極真館奈良県北支部ホームページ)