2019年にはラグビーワールドカップ2019日本大会が、そして、2020年には東京オリンピックが開かれる日本。2019年から2021年の3年間は、別名「ゴールデン・スポーツイヤーズ」と称され、大きなスポーツビジネスのチャンスとされています。この記事では、日本のスポーツ産業の市場規模は現在どれくらいなのか、海外のスポーツ産業の市場規模やその特徴について紹介します。また、市場規模拡大のためにどのような対策が検討されているのかについて、詳しく解説します。
日本におけるスポーツ産業の市場規模はどれくらい?
日本のスポーツ産業の市場規模はどれくらいなのでしょう。
GVA(付加価値)と雇用者数による市場規模の目安が発表されています。
GVA(付加価値)に見るスポーツ産業の市場規模
GVAとは、粗付加価値のことです。
この数値は、生産性を分析するための指標として用いられるものであり、その産業がどれだけの生産性があり、価値を付属できているかを表しているのです。
2011年から2014年までのGVAの値をみると、スポーツ活動、教育、小売、卸売の分野で割合が高くなっています。
つまり、これらの分野の産業が、日本のスポーツ産業を引っ張っているともいえます。
ちなみに、日本のスポーツ産業のGVAは、6兆円台で推移しています。
このうち、スポーツ部門が最も多く、全体の約9割、残りの1割が流通部門と投入部門です。
雇用者数に見るスポーツ産業の市場規模
2014年の統計によると、スポーツ産業の雇用者数は約1億人です。
雇用者数が多い業種には、
- スポーツ活動
- 小売
- 教育
- ホテル・レストラン
などがあります。
最も雇用者数が多いスポーツ活動における雇用者数は、約38万人。
これに続く小売が18万人、教育が15万人となっています。
2025年までにスポーツ産業の市場規模を15兆円に拡大
スポーツ庁は、2025年までにスポーツ産業の市場規模を15兆円に拡大するという目標を発表しました。
これは、2015年の市場規模と比べると、約3倍の数字です。
この目標達成のためのポイントを2つ紹介します。
規模を拡大するためのポイント1:人材の確保
規模拡大のためのポイントの1つ目は、人材の確保です。
現在、日本では少子高齢化が進んでいます。
そのため、様々な業種で人手不足が起こっていて、スポーツ業界も例外ではありません。
そういった人手不足の流れの中で、いくつかの大学ではスポーツビジネス関連の教育プログラムが設置され始めています。
また、BリーグやTリーグなどのプロリーグの発足やスポーツ産業団体の経営改革によって、雇用が増えています。
しかし、こうった流れは始まったばかりです。
したがって、新卒を採用してじっくり育てるというわけにいかず、どうしても即戦力を求めてしまうというのが現状です。
規模を拡大するためのポイント2:グローバル化
規模拡大のためのポイントの2つ目はグローバル化です。
世界中の人気チームやクラブは、スタジアムへの動員だけでなく、様々なコンテンツを世界中に発信しています。
世界がグローバルの流れに進む中、日本国内はまだまだ遅れているのが現状です。
その理由としては、日本のスポーツ産業が地域密着を大事にしたことがあげられます。
地域の振興を大切にすることはもちろん大切です。
しかし、グローバル化する世界市場や人口の減少、外国人観光客の増加などの流れがある今、スポーツ産業が市場拡大を狙う上でどうしても避けて通れない道がグローバル化であると言えるでしょう。
海外のスポーツ産業の市場規模は?
ここまで、日本のスポーツ産業の市場規模を紹介してきましたが、ここからは、世界のスポーツ産業の市場規模について、アメリカ・ヨーロッパ・韓国を例に挙げて紹介します。
アメリカ
アメリカは、世界一の経済大国ですが、スポーツ産業の市場規模も世界一です。
アメリカでは、
- NFL(アメリカンフットボール)
- MLB(野球)
- NBA(バスケットボール
- NHL(アイスホッケー)
という4つのプロスポーツリーグがあるのをはじめとして、サッカーやゴルフ、テニスといったスポーツが盛んです。
プロスポーツリーグの他に、アメリカのスポーツ産業を支えているのが大学スポーツです。
アメリカでは、大学スポーツの収益化に力を入れており、4大プロスポーツと同じくらい(もしかしたら超えるくらい)の産業として発達しています。
欧州
ヨーロッパのスポーツ産業を支えているのがサッカーです。
ワールドカップやプロリーグの盛り上がりを見ても、その傾向は一目瞭然ですね。
そして、次に人気があるのはなんとモータースポーツです。
サッカーとモータースポーツの2つのスポーツがヨーロッパのスポーツ産業において大きな規模を占めています。
そんなヨーロッパのなかでも、スポーツ産業が盛んな国が
- フランス
- イギリス
- イタリア
- スペイン
- ドイツ
など。
これらの国は、スポーツ産業が盛んで、GDP比で見ても日本と同じくらいの経済規模を誇っているのです。
ワールドカップなどでよく見るサッカー強豪国が名を連ねていますね。
韓国
近年、韓国国内でもスポーツ産業への関心が高まっています。
しかし、正確な規模や体系調査は行われていません。
なぜかというと、スポーツ産業がスポーツ活動に関連されているため、個々の経済規模に反映されないためです。
そういった数少ない韓国のスポーツ産業指標の中で見られる顕著な傾向が、スポーツアパレル用品の成長です。
とくに、女性用のスポーツアパレル用品が多くを占めています。また、そのなかでもレギンスとスポーツブラが多くのシェアを持っているのです。
女性用トレーニング用品の内訳は、ジムやフィットネスへの使用が60%、ヨガやピラティスなどの屋内スタジオスポーツへの利用が40%となっています。
スポーツ産業の発展にむけた取り組み
スポーツ産業をこれからもっと発展させていくために、多くの取り組みが行われています。
ここでは、代表的な取り組みを見てみましょう。
スタジアムやアリーナの建設
スポーツ庁では、
- 収益モデルの確立
- スタジアムやアリーナを中心とした街作り
- 民間資金の活用と公民連携
という3つの指針に沿って、スタジアムやアリーナなどのスポーツ施設の増設をしています。
この例として、大阪に新しく建設された「市立吹田サッカースタジアム」(ガンバ大阪の本拠地)やマツダズームズームスタジアムなどがあります。
「市立吹田サッカースタジアム」(ガンバ大阪の本拠地)は、スタジアム付近に娯楽施設やショッピングセンターなどが併設され、スタジアムを含めた複合施設になっているのです。
また、広島東洋カープの本拠地であるマツダズームズームスタジアムでは、商圏と住宅街を一緒に開発を行ったり、観客がストレスフリーで試合を観戦するための工夫がなされ、広島全体への広がりを見せました。
こうした大阪や広島の例から、アリーナの開発といったハード面と商業、娯楽業などのソフト面が一緒に活性化していることがわかります。
ハード面だけでなくソフト面も一緒に発展させていくこと、というのが、今後のビジネスモデルとなるのでしょう。
経営人材の育成
日本の産業の多くが人手不足となっていますが、スポーツ産業にもその波が押し寄せています。
スポーツ産業の経営人材には、マインドとスキルといった能力が求められます。
それらのスキルをしっかりと取得できている経営者が不足している今、人材の確保や教育が急務なのです。
他産業との融合
スポーツ産業をより広めるためには、他の産業との融合が必要です。
しかし、そこには激しい競争が発生しています。
なかでも、スポーツを放送するエンタメ部門では変化が起きているのです。
数年前までは、プロ野球などの多くのスポーツがテレビ中継されていました。
しかし、現代ではインターネットなどによる放送や情報の発信が行われています。
これだけをみると情報通信業との融合が行われているだけですが、そういったコンテンツを発信する企業は、他のエンタメ(アニメ、ドラマ、ニュース)なども積極的に取り上げています。
こうしたなかで、スポーツが盛り上がるためには、他産業との融合を意識しつつ独自の強みを開発することが必要となっているのです。
競技者を支える支援体制の整備
スポーツ産業を拡大するためには、実際に競技を行う選手の支援は欠かせません。
今までの支援体制としては、選手引退後のセカンドキャリアが重視されてきました。
しかし、現在の支援ではしっかりとした人生を歩んだ上で、競技者としても成長するデュアルキャリアが重視されています。
現在、多くのアスリートが東京オリンピックを目指し日々トレーニングしています。
そういった日本の誇るアスリートがより幸せに生きるために、競技力アップとキャリアの形成が必要なのです。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
現在、日本のスポーツ産業は、発展産業として成長をみせています。
しかし、スポーツ庁が掲げる2025年の目標達成のためには、より踏み込んだ改革が必要と言えるでしょう。
《参考記事一覧》
スポーツ産業市場の拡大に向け、スポーツ庁が描く青写真とは?(MARS CAMP)
2017年スポーツ用品国内市場規模は前年比102.3%の1兆4,685億円の見込~スポーツ競技人口は減少もスポーツシューズ、スポーツアパレルのライフスタイル需要拡大~(矢野経済研究所)