Sportsとtechnologyの掛け合わせを意味する造語であるスポーツテック(sports-tech)。さまざまな企業がスポーツテックでスポーツ産業へ参入しています。今後、さらに発展することが予想される分野であり、大きなビジネスチャンスになるのは間違いありません。
しかし、参入したからといって簡単にチャンスをつかめるものではありません。参入して失敗しないために、成功をおさめた企業事例から学ぶことも多いでしょう。今回は、数ある企業の中からSAPの事例を紹介します。ぜひ参考にしてください。
BtoB企業のSAPがスポーツ産業に参入した背景
SAPは、企業(法人)を相手に事業や商取引を行うBtoB企業です。
2013年からスポーツ&エンターテインメント産業向けのソリューションを提供していますが、いったいどのような企業なのか、そして、なぜスポーツ産業に参入したのか解説していきます。
SAPとはどんな企業?
SAPは、ドイツ中西部のヴァルドルフに本社を持つ置くヨーロッパ最大級のソフトウェア会社です。SAPが開発した企業の業務を統合して一括管理するソフトウェア、ERPパッケージは、その分野で世界一のシェアを誇っています。
2014年開催のFIFA ワールドカップにおいてドイツが優勝できたのはSAPが開発したシステムが陰の立役者となっていたからだともいわれていますが、サッカー以外にも、NBAやF1、MLBのチームとパートナーシップを組むなど、スポーツ産業へのアプローチを積極的に行なっています。
なぜスポーツ産業に参入したのか?
SAPは、ERPの分野のソフトウェアで世界NO1のシェアを誇っていましたが、SAPはその状況に逆に危機感を感じていました。
そこで、新たに開発したインメモリ技術によって大量のデータを超高速で処理できる「SAP-HANA」と呼ばれる新型のデータベースを活用したさまざまなプロジェクトを模索したのです。
その高速処理できるデータベースがスポーツの持つリアルタイム性との親和性が高いとの考えから、SAPはスポーツ産業への参入を決めたのです。
3つのキーワードで表されるSAPのソリューション
SAPは、
- OPERATION
- TEAM
- FAN
という3つをキーワードとしてスポーツテックを展開しています。
それぞれのキーワードでの事例を紹介します。
Operation
OPERATIONは、スポーツ組織や大会、スタジアムなどのオペレーションの高度化のことです。
そのために開発・提供しているソフトが「SAP Live Stadium Experience」です。
このソフトは、来場した人の動向をリアルタイムで分析することができるというもの。したがって、混雑状況に応じてスタッフを配置したり、トイレの混雑状況の見える化、試合前・試合終了後の混雑の解消など、さまざまな角度から顧客満足度をあげることができます。
FCバイエルン・ミュンヘンでは、「SAP Live Stadium Experience」を活用したスマートスタジアム(ICT技術を駆使してファンの感動やエンゲージメントを高める設備を備えたスタジアム)戦略を推進し、世界からも注目されています。
Team
Teamとは、選手・チームのパフォーマンス強化を目的として提供するスポーツテックです。TeamをキーワードにSPAが開発したのが、「SAP Sports One」というソフトです。
このソフトには、2014年開催のFIFA ワールドカップでドイツをW杯王者へと導いたビッグデータ分析ツールをはじめ、選手の健康状態を一括して管理できるツールや、効果的にトレーニング計画をサポートするツールなど、選手個人だけでなくチーム全体の強化に繋がるツールが5つ組み込まれています。
このソフトは、FCバイエルン・ミュンヘンやFC今治、バイエルン・ミュンヘンのバスケットボールチームやアイスホッケーのアドラー・マンハイムなどが採用し、チームの強化に役立てられています。
Fan
ファンエンゲージメントの強化、マーケティングのためにSPAが提供しているのが、
- SAP Hybris Commerce
- SAP Hybris Marketing
- SAP Hybris Profile
などのソフトです。
これらのソフトは、アプリやネットから顧客情報を得て、その情報からターゲットに対してさまざまなアプローチができることから、スポーツ産業でのマーケティングやファンエンゲージメントの強化を図ることができるというもの。
顧客情報を基にアプローチすることができるため、よりターゲットに適したサービスを提供することができます。
このソフトは、本来、あらゆる産業におけるマーケティング支援を目的に開発されたソフトであることから、スポーツ産業以外の業界でも採用・活用されています。
SAPがスポーツビジネスにもたらしたもの
SPAはスポーツ産業においては後発であったにも関わらず、今やSPAが開発したさまざまなソフトウェアはいろいろなスポーツに導入されています。
SAPがスポーツ産業に参入した際にまずしたことは、財務状況の確認や顧客情報の取得など、ビジネスの基盤をしっかりと固めること。業界や分野が違っても、ビジネスの土台をしっかり作り上げたことが、SPAがビジネスチャンスをつかむことができた理由といえるでしょう。
AIやIoTなどのテクノロジーをうまく取り込み、相手が求めているモノを知って、ニーズに合う商品やサービスを作りあげることが大切であると示したことが、SAPがスポーツビジネスにもたらしたものといえそうです。
まとめ
企業を経営するにあたって、ヒト・モノ・カネというリソースの管理が重要となります。スポーツ界はリソースが不足している業界であり、スタッフにどのような業務を担ってもらうか、どの業務を外注にするのか、という判断をすることが大切です。
そのために必要なのがデータの活用です。
今や、スポーツ業界へのテクノロジーの導入は必要不可欠であり、すでにスポーツ業界に参入している企業はもちろん、さまざまな分野・業種に新たなビジネスチャンスがあります。
ビジネスチャンスを見逃さないよう、スポーツテックでの成功事例の参考・分析を行っておくといいでしょう。
(TOP 写真提供 = Cineberg / Shutterstock.com)
《参考記事一覧》
ドイツをW杯王者に導いたIT界の巨人「SAP」は、なぜスポーツ産業へと参入したのか?~前編~(VICTORY)