ウェルネスツーリズムとは?体験方法からツアー計画のポイントまで紹介します

ウェルネスツーリズムとは、健康やリラクゼーションを目的とした旅行や観光の新たな形態です。心身の健康を追求しながら、新しい体験や環境を楽しむことが特徴です。

本記事では、ウェルネスツーリズムの基本的な概念から、実際に体験するための方法やツアー計画のポイントまで、詳しく紹介していきます。健康と幸福を追求する人々にとって、ウェルネスツーリズムは魅力的な選択肢となることでしょう。

ウェルネスツーリズムとは?

まずはウェルネスという概念について説明します。

ウェルネスは、身体と心の健康と幸福を追求する総合的な概念です。単に病気の予防や治療にとどまらず、積極的な健康増進や生活の質の向上を目指します。身体的な健康だけでなく、精神的な健康や社会的なつながりも重視されます。ウェルネスのアプローチは個人の自己管理やライフスタイルの改善に焦点を当て、適切な運動、バランスのとれた食事、ストレス管理、良い睡眠などが重要な要素とされています。総合的なウェルネスの取り組みは、健康な生活と幸福感の向上に寄与することが期待されています。

ウェルネスを提唱した人物

1961年にアメリカの公衆衛生医で、後に「ウェルネス運動の父」と呼ばれるハルバート・ダン氏が、「ヘルス(病気でない状態)」と区別するために、ウェルネスをヘルスより広範な「輝くように生き生きしている状態」と定義しました。

 また、それよりも前の1946年にWHO(世界保健機関)は、健康の定義を「完全な身体的、精神的、社会的に良好な状態であり、単に疾病又は病弱の存在しないことではない」としており、身体中心の健康観からいち早く社会的な側面を加えた概念として定義しています。

 これらから、「心身ともに病気でない状態ばかりでなく、社会的にもよい状態でより良く生きるライフスタイルのあり方」を表した言葉と言えます。コロナ禍を経験し、心身ともに健康であることの大切さを人類が実感した今、ウェルネスは健康を自ら求める前向きな言葉として今後も重要なキーワードになるでしょう。

ウェルネス産業の市場規模は2015年に、Global  Wellness Instituteが試算した世界のウェルネス産業の市場規模は372兆円で、中でもビューティ・アンチエイジング産業は100兆円の市場規模があると言われています。

続いてツーリズムという概念を説明します。

映画の舞台になった場所への旅行などを「シネマツーリズム」や「フィルムツーリズム」、ドラマのロケ地巡りを「ロケツーリズム」と呼び、ツーリズムには観光目的の招致に使う例が多く見られます。また、宗教的で精神的な魂を癒す旅という目的の「聖地巡礼」は、海外でも日本でもかなり古い時期から行われてきました。これらの旅は人や物の移動を伴い(交通や運送業界)、観光地を潤す(宿泊・食事などの消費活動)ことにもなり裾野が広い産業と言えます。

ウェルネスツーリズムは、「ウェルネス(心身ともに健康な状態になる)」を目的とした旅行と考えると分かりやすいでしょう。具体的には、森林浴、温泉、ヨガ、ヘルシーな食事などを取り入れ、心身の健康に加え、自己開発・自己実現を目的とした旅行が紹介されています。

日本に多くある温泉での湯治はウェルネスツーリズムの範疇ですが、温泉がない場所でのお伊勢参りや熊野詣などの「魂を癒す旅」の方がより近い概念と考えるとよいでしょう。

 ウェルネスツーリズムにはどんなメリットがあるの?

ウェルネスツーリズムを実施することで得られるメリットには何があるでしょうか? 以下に3つのメリットを挙げてみました。

 ①実施者が自分と向き合う機会が得られる

まず、実施計画を立てることによって、自分は精神的な癒しに何を求めているのかがはっきりします。現時点で最も求めているものを列挙して考えてみましょう。

 ②実施による非日常の経験と精神的なストレス解消

単に受け身でものを見る・話を聞く以上に、日頃できない体験したかったことを積極的にやってみましょう。例えば、ものづくりが好きであるなら、日常でできないことをワークショップなどに参加して実現するといったことはいかがでしょうか。地元の方々と触れ合うことで、地元の伝統工芸や伝統芸能などの学びにもなるでしょうし、普段慣れないことを行うことは、精神的なリフレッシュやストレスの発散にもなります。

 ③実施者による自己開発や自己実現の機会が得られる

目的は、できるだけ達成が難しいものにすれば、達成の際にはそれだけ多くの達成感が得られるでしょう。例えば、自分を見つめ直す機会として、お寺での座禅会に参加し精進料理を頂くというプランはいかがでしょう。普段できない難しい計画を立て、実行できれば達成感が味わえ、自己実現することができるでしょう。

ウェルネスツーリズムの活用方法や楽しみ方をご紹介!

写真提供 =Eneko Urunuela/ Unsplash.com

参加の仕方

参加の仕方には、自分でプランを考え実行する、旅行会社のプランに参加する、などがあります。自分でプランを立てづらい、という方は、旅行会社のウェルネスツアーのプランに一度参加し体験してみるのもよいでしょう。

ツアー・目的地の実例

実例を2件紹介しましょう。

①山梨県

山梨県は東京から近く、1~2時間で豊かな自然と美しい景観、温泉や新鮮な野菜・果物などの魅力に出会えることから、ウェルネスツーリズムを推進している県です。「温泉につかってウェルネス」「自然に癒されウェルネス」「体を動かしウェルネス」「やさしい食事でウェルネス」とカテゴリー分けし、それぞれの場所や施設でウェルネスの魅力を紹介しています。

②島根県

ANAトラベラーズは、島根県認定として、ポーラ・オルビスグループと提携し、「美肌ウェルネスツーリズム」を体験型のウェルネスツーリズムとして提供しています。ツアーのポイントは、「1.デトックスによる不要なものを流す」肌分析やカウンセリング、美容レッスンを個人ベースで行い、現地の美肌の湯で温泉ソムリエによるレクチャーやエステを受ける、「2.満たす」肌に良い食事を頂き、日本茶ワークショップでのたしなみなどの体験をする、「3.発見」宮司による御祈禱や、島根県ならではの出雲大社への参拝と神饌(しんせん、神様に献上するお食事)の食体験を行う、を10名限定の2泊3日の行程で行います。

 日本ではウェルネスツーリズムの認知度がまだ低い感がありますが、今後は消費者への訴求力や商品企画力が勝負になりそうです。

計画の立て方のコツ

 ウェルネスの定義「身体的、精神的、そして社会的に健康で安心な状態」から、日本でのウェルネス旅行の計画を立てる上でのコツを考えてみましょう。

 ①自然と触れ合う

 日本は春夏秋冬の四季があり、それぞれの季節で味わいが変わります。また、北と南に国土が広がり、多くの自然遺産もあります。都会に暮らす人は日常で自然に触れ合う機会が少ないため、自然に触れ合い、自然からのパワーを得ることを目的に考えるとよいでしょう。森林浴や温泉などを中心に、地元の食材による名物料理など美味しいお店で食を楽しむというプランはいかがでしょうか。

 ②神仏などの魂の癒し

 日本には約10万社以上の多くの神社が存在し、長い期間に渡り神様を祀っています。多くの人々に支えられてきた古くからの神社をめぐる旅も、非日常に思いを馳せるという意味でおすすめです。神社参りは気持ちが洗われる感じがしてリフレッシュできます。なぜ昔から人々はお伊勢さまを目指すのか、奈良の大神(おおみわ)神社はなぜ山が信仰の対象なのか、など日本の古来からの信仰については知らないことが多く好奇心が刺激されます。現地に行って感じることも多くありますので、神社参りをメインに、近くの温泉や食を楽しむ旅もよいでしょう。

 ③日本古来の文化

 地元に伝わるお祭りも神事に関連しています。お祭り期間中の地元の方々の活気は想像以上にすごいものがあります。お祭りは期間が定められていることがほとんどなので、その時期に合わせての計画が必要ですが、お祭りを見る・参加するをメインに、地元の文化や食を体験する旅を企画してみるのはいかがでしょうか。

・自分は「心癒される」何をしたいのかを明確にする

 人それぞれで心が癒される対象は異なります。趣味を極めることで心が癒される方もいれば、日常を離れ非日常を経験することでストレスからの解放になる方もいるでしょう。自分のやりたいことをじっくり考えてみることも大切な「自分と向き合う」ことになります。企画から自分で考えてみる、ということが大切でしょう。

日本でおすすめのウェルネスツーリズムの目的地

日本でおすすめのウェルネスツーリズムの目的地は以下のようなところです。

1. 京都:古都として知られる京都は、美しい寺院や庭園が点在し、静けさと落ち着きのある雰囲気が特徴です。ヨガや瞑想、禅の修行など、心のリラックスを追求するウェルネス体験ができます。

2. 高野山:高野山は日本の仏教の聖地であり、山岳信仰の中心地です。ここでは宿坊での宿泊体験や座禅、写経などの修行体験ができます。静寂な環境の中で心身を浄化し、内なる平和を求めることができます。

3. 箱根:箱根は温泉地として有名であり、自然に囲まれたリゾート地でもあります。温泉巡りや散策、美術館めぐりなど、心身のリラックスを追求するためのさまざまなアクティビティが楽しめます。

4. 美ヶ原高原:長野県に位置する美ヶ原高原は、美しい自然環境と清らかな空気が広がる場所です。ハイキングやトレッキング、森林浴など、自然の中でのアクティビティがウェルネス体験に最適です。

これらは一部の例ですが、日本には多くのウェルネスツーリズムに適した場所があります。自然環境や伝統文化、温泉などを活かしたリラックスや癒しの体験を求めるなら、これらの目的地を訪れることをおすすめします。

まとめ

ウェルネスツーリズムとは何か、からどういうプランがあるかまで、紹介しました。

 個人それぞれに「心癒される対象」は異なるもの。仲間と一緒に旅する際にはできるだけ目的が一致している方との旅が、個人の目的がぶれず、満足感も高まるでしょう。

 堅苦しく考えず、まずは心身ともに自分に気持ちの良い旅を企画し実行してみてはいかがでしょうか。

(TOP写真提供 = kike vega / Unsplash.com)


《参考記事一覧》

ウェルネスを目指す旅。ウェルネスツーリズムのメリットと事例 (eo健康)

序章 ウェルネスとは何か (Global Wellness Day公式サイト)

やまなしウェルネスツーリズム ホームページ (公益社団法人やまなし観光推進機構)

美肌ウェルネスツーリズム (ANA国内ツアーサイト)