パ・リーグはなぜ台湾でのプロモーションに注力するのか? 目指すのは「日台の架け橋」

2023年よりパシフィックリーグマーケティング(以下、PLM)は台湾におけるパ・リーグ6球団コンテンツの現地プロモーションに注力している。台湾プロ野球・富邦ガーディアンズ(以下、富邦球団)とのコラボレーションに至る背景、実施内容と実施して得た手ごたえ、そして今後の展望について、PLM メディアライツ事業部 海外グループ マネージャーの髙木隆氏が解説する。(文=PLM メディアライツ事業部 髙木隆、初出=JSPIN

富邦球団×PLMのコラボレーションに至る背景

時は、2023年の7月まで遡る。昨年の寄稿に記載の通り、PLMは台湾プロ野球・楽天モンキーズ球団の主催試合でのブース出展を実施した。その出展翌日に、台北で富邦球団の総経理・Joyce氏に挨拶する機会をいただいた。たった30分間だったが、共に米国留学していたなど、共通点もあり、2024年に一緒にできることを模索しようと合意し、筆者は帰国の途に就いた。

年が明けて、2024年の2月にJoyce氏より6月に日本をテーマにしたイベントデーを台湾プロ野球公式戦で行う予定と連絡があった。急ピッチで実施内容を検討していく中で、台湾の野球文化醸成や台湾の地域社会の活動及び教育に対して貢献することにより、これまで以上にパ・リーグ6球団が台湾現地で根付くことを思い、本年のプロモーションの意義・目的を、台湾での社会貢献活動とした。

富邦球団×PLMのコラボレーション実施内容

富邦球団と議論を重ねていく中、真っ先に合意したのは、富邦球団の地元にある小学校の2チームをスタジアムに招待する野球教室開催であった。イベントデー当日は、ナイターの公式戦が控えている中、パ・リーグOB選手や富邦球団の現役日本人コーチ3名に試合前の会場で子どもたちに直接指導いただいた。

野球教室に加えて、現地メディア約10社が出席した富邦球団主催の記者会見も開催された。現地でのメディア露出は、パ・リーグOB選手の球場への来場告知から当日の記者会見や野球教室内容の報道を含めて、取り上げられた。

加えて、イベントデー後には、冨邦球団やDAZN台湾のソーシャルメディアで本コラボレーションの密着取材動画が公開された。当日来場できなかったファンにも動画で様子が伝わる効果的なメディア戦略を描き、実行できた。

日本と台湾は距離的に近いとはいえ、台湾でパ・リーグ6球団がメディアで取り上げられることは珍しい。今回のコラボレーション実施により、富邦球団のオウンドメディア、パートナーメディア、マスメディアを介してパ・リーグの現地露出をとれたことは今後の活動に繋がる大きな収穫となった。

その他には、パ・リーグ6球団ユニフォームを活用したアクティベーションを2点実施した。一つ目は、昨年楽天モンキーズ球団との取り組みで大好評を得たフォトブースを設置。ファンがユニフォームや応援グッズを身に着けながら写真撮影を楽しむ機会を提供。二つ目は、富邦球団のチアガールがスタジアム内で、パ・リーグ6球団のユニフォームを公式戦にて着用し、試合中にダンスパフォーマンスを行った。

台湾では試合中も常にBGMを流しながら、チアガールが選手毎に異なるダンスを踊るという応援スタイルが主流。そのため、非日常となるパ・リーグ6球団のユニフォームを着用したチアガールは球場内のファンや、ケーブルテレビ、インターネット中継を視聴するファンから、大きな注目を得る結果となった。

普段パ・リーグの試合を一切放送していない台湾の放送局が富邦球団の公式戦を放送しているため、パ・リーグ6球団のユニフォームを着用したチアガールのパフォーマンス映像を通して、新たなファン層にリーチでき、非常に良い機会となった。

富邦球団×PLMのコラボレーションの手ごたえ

PLMが2023年から開始した海外展開を進めるうえでの3年計画の2年目に位置する今年のプロモーションは、「台湾プロ野球球団と関係性を深化し、ゼロベースでPLMが台湾の社会に貢献できることを最大化する」がテーマであった。振り返ると、プロモーションの意義・目的という大きな概念を早期に富邦球団と合意できたのが、プロモーション内容の拡充に繋がったと考える。

今回の取組みを通じて、総経理のJoyce氏のほか、富邦球団スタッフのWade氏やSpring氏、チームコーチ陣の多大なサポートをいただいたことに心から感謝したい。彼ら、彼女らの尽力もあり、プロモーション当日は多くの台湾のファンに球場とPLMブースに足を運んでいただき、約30名の子どもたちが野球教室を経験する結果となり、大きな手ごたえを得た。

なお、パ・リーグ6球団のユニフォームを着用でき、サイン球などのグッズが当たる取組を行ったPLMブースは、全ブース中最大の人気を誇り、2日間で約800名が訪れた。野球教室は現地小学生指導者からも感謝の言葉をいただいた。シーズン中にプロ野球球団が野球教室を開催することは日本では難しいことであり、もちろん台湾でも異例中の異例であった。実施に向けて富邦球団側に大きな労力があったことは、想像に難くない。改めて、富邦球団の皆様に敬意を表したい。

全イベント終了後の記念撮影(左からWade氏、Joyce氏、筆者・髙木、Spring氏)©PLM

今後のPLM海外事業の展望

台湾においては富邦球団や、他台湾プロ野球球団、台湾各マスメディアとともに、パ・リーグ6球団のファンベースを中長期的に醸成していくことを目標にしている。具体的には、パ・リーグ6球団コンテンツが台湾出身選手を起点に現地で身近な存在になり、いずれは、台湾の方が日本人選手にも興味・関心が及ぶようなプロモーション施策を2024年から実施しているが、これを継続していく。

加えて、パ・リーグ6球団コンテンツ視聴のみに留まらない、PLMの活動を通した日台の相互交流も進めていきたい。今回は、PLMと台湾プロ野球球団のみの取組みであったが、将来的には、この座組に台湾に進出している日本企業もしくは、日本に進出している台湾企業が加わることにより、台湾でより大きな社会貢献とさらにパ・リーグ6球団が根付くことを進めていきたい。

他国においては、2020年から今年で5年目となる北米、2024年5月に公表した中南米・カリブに加えて、新たな国・地域での放映権販売を含む売上拡大を目指していきたい。具体的には、韓国や、オーストラリア、メキシコなどが候補となるが、より多くの方にパ・リーグ6球団の野球を楽しんでもらいたいと考えている。

今後も台湾のみならず、スポーツを通じて、日本と海外の架け橋になりプロ野球界にとどまらずスポーツ界全体の発展に貢献していきたい。

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