【前編】3人制バスケ「3x3.EXE PREMIER」に見る、日本発プロリーグの世界的な広がり

2014年に世界で初めて「プロリーグ」として国際バスケットボール連盟(FIBA)に承認され、日本バスケットボール協会(JBA)公認にもなっている世界唯一の3人制バスケットボールのプロリーグ「3x3.EXE PREMIER」は、日本のわずか7チームからスタートした後、2025年のシーズンでは5カ国99チームへと拡大している。

リーグを運営する、ゼビオグループで戦略的マーケティングを担うクロススポーツマーケティング株式会社(以下、XSM)が、その成功事例と見据える未来を紹介する。(前後編の前編/後編を読む)(初出=JSPIN

「3x3.EXE PREMIER」とは

通常のバスケットボール(5人制)は、28mのコートの両端に約3mの高さに設置されたゴールへシュートを放ち得点を争う競技だ。1チーム5人、10分×4ピリオド(計40分)で行われ、スピード感ある展開で人々を魅了してきた。

では「3人制バスケットボール」についてはどうか。

5人制を基準とすれば、3人制は“ほぼ半分”。コートは14m、1チーム3人、試合時間は10分。ボールの大きさも異なり、変わらないのはリングの高さくらいである。

3人制バスケットボールは、10人集まらない時でもバスケを楽しみたいというローカルルールから生まれた競技だ。学校の部活動や海外のストリートでも親しまれ、バスケ経験者なら誰もが気軽にプレーしてきたスタイルでもある。

XSMが3x3に着目した理由は、都市型スポーツとしての可能性、スピード感とエキサイティングな競技特性、そして世界的な広がり……など。だが最も大きな動機は、「プロアスリート」の概念を変え、より多くの人にスポーツを身近に提供したいという思いだった。

コミッショナーの中村考昭氏はしばしば「1億円の選手を1人輩出するより、バスケで100万円を得られる選手を100人にしたほうが幸せは広がるのではないか」と語る。

こうした思想を形にすべく、2014年に誕生したのが「3x3.EXE PREMIER」である。民間企業が運営するプロリーグでありながら、FIBAの承認とJBAの公認を得た唯一無二の存在として創設以来、国内外で存在感を放ち続けている。

「3x3.EXE PREMIER」が通常のスポーツと大きく異なる点は、ホームアリーナのような箱を持たずに試合を開催していること。バスケのハーフコートが設置できる場所であれば、どんな場所でも会場に生まれ変わることができ、これまでも駅前や漁港、ショッピングモールのスペースなど、あらゆる場所を「試合会場」に変えてきた。

旧焼津漁港の漁具倉庫をリノベーションした「焼津PORTERS」

さらに、試合は「無料」で観戦できる。一部有料のチケット席を設けてはいるものの数席程度であり、基本的に観戦は無料だ。具体例は後述するが、試合日は1日数千人から数万人が会場を訪れ、3x3を体感する。この盛り上がりを見た企業、自治体、あるいは施設の関係者などから「この3x3のイベントを当社の〇〇スペースで開催してほしい」と要望があり、会場備品の運搬や設置、当日の運営費用として幾ばくかの金額をいただいて開催する座組みだ。

企業や自治体などに対して「興行権利」を販売してマネタイズしているため、XSMとしてはいわゆる「チケット収入」に注力していない。箱を持って人を呼ぶのではなく、既にあるインフラを活用し人を集めて地域を盛り上げることに注力しているため、例を挙げるなら、サーカスやお祭りのようなスタイルと言えよう。これらのある種「逆転の発想」が世界で注目を集め、日本のみならず世界各地で同じ形で興行が行われている。

海外進出の足掛かり

3人制バスケットボールが東京オリンピックの正式種目に決定したのは2017年。これに伴い、呼称が「3on3(スリー・オン・スリー)」「3x3(スリー・バイ・スリー)」など混在していたものから、FIBAが正式に「3x3(スリー・エックス・スリー)」へ統一した。また、場所を問わずプレーできるストリート発祥のスポーツであることから「アーバンスポーツ」として位置づけられた。

しかし、正式種目化を前に、XSMはまず2014年に日本で初めて3人制バスケのクラブチーム世界一を決める「FIBA 3x3 World Tour Masters Final」をゼビオアリーナ仙台に誘致する。その後、2016年にはXSMは栃木県宇都宮市と連携し、宇都宮の二荒山神社で「FIBA 3x3 World Tour」の誘致を成功させた。その翌年である2017年のオリンピック正式種目化は、まさに追い風となった。

宇都宮市の二荒山神社にて特設コートを設置して開催する「FIBA 3x3 World Tour Utsunomiya Opener」

そして、「3x3.EXE PREMIER」が世界規模に広がり始めたのは2019年。2017年のオリンピック正式種目化をもって「3人制バスケットボール」に新たな可能性を見出し、取組を模索する中で各国が注目しはじめた「3x3.EXE PREMIER」には、さまざまな国からのコミュニケーションが発生し、結果的に2019年はタイ、ニュージーランド、韓国の参入が決定。

日本を含む4カ国72チームのグローバルリーグへと一気に成長した。グローバルリーグとなった初年度、六本木ヒルズアリーナで行われた頂上決戦「PLAYOFFS」は、2日間で約4万人を動員。東京五輪の3x3への注目度を大きく押し上げる結果となった。

六本木駅前にある「六本木ヒルズアリーナ」

コロナ禍を経てグローバル化が加速

2020年には男女あわせて5ヵ国(インドネシア、韓国、タイ、日本、ニュージーランド)1地域(チャイニーズタイペイ)で102チームにまで拡大した「3x3.EXE PREMIER」。しかし2020年は新型コロナウイルスの影響で従来の開催が困難となり、レギュラーシーズンを中止。各国でカップ戦として開催する方針に移行し、また、無観客で「可能な範囲」で競技を継続した。

しかし、予定されていた東京五輪は延期。延期された2021年も無観客での実施を余儀なくされた。日本代表も男子6位・女子5位でいずれもメダル獲得には届かず、明るいニュースは乏しかった。

一時の停滞を経て、2022年には再び加盟国が一堂に会するPLAYOFFSを東京で開催。プロアマ混合の「3x3.EXE TOURNAMENT」、小学生向けの「3x3.EXE GAME」も再開し、2025年のシーズンでは日本、タイ、ニュージーランド、オーストラリア、ベトナムの5カ国99チームまで拡大し、ようやく本来の姿でリーグを運営。2024年には上位チームが世界を転戦する新リーグ「3x3.EXE SUPER PREMIER」も始動し、グローバルな挑戦はさらに加速している。

〈後編〉では、海外での広がりとリーグの今後のビジョンについて詳しく紹介していく。

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