スポーツクラブが続々と「医療」に参入するなか、次のトレンドは「口腔ケア(オーラルケア)」かもしれない。現にFCバルセロナではオーラルケアが義務付けられ、Jクラブもその取り組みを進めているという。
世界的スポーツチームのドクターが参画するSports Doctors Networkのアジア初カンファレンスで、オーラルケアに取り組むSCOグループ代表取締役 玉井雄介氏と、元電通スポーツアジア社長CEOで現在は筑波大学非常勤講師を務める森村國仁氏が議論を交わした。(全7回の6回目/第1回から読む)
スポーツ界で注目される「オーラルケア」
森村國仁氏(以下、森村氏):オーラルケアとスポーツの関係については、なかなかイメージが湧かないかもしれません。しかし、昨年スペインのFCバルセロナの監督になったハンジ・フリックが、選手全員にオーラルケアを義務付けたといいます。これからの流れとして、スポーツのパフォーマンスとオーラルケアについて注目が集まってくると思われます。
玉井雄介氏(以下、玉井氏):SCOグループはAIで歯科医院の予約・受付業務を効率化するサービスを提供しており、口腔内からアプローチして、多くの人の健康を導くことを目指している会社です。「人生100年時代」といわれていますが、さらに健康寿命を5年延ばそうというコンセプトです。
森村氏:スポーツとはどのように関わりを持っているのでしょうか。
玉井氏:アスリートのパフォーマンスを通して、一般の方々に自分の体や健康に目を向けてもらいたいと思っています。自分の歯で生きて自分の歯で食べ物を食べるということが大事なんですが、その副産物として自分の体に興味を持ってほしい。そこにアスリートの力を借りて、行動変容につなげていければと。これが私たちがスポーツと関わっている背景です。
森村氏:具体的にどのようにスポーツをサポートしているのでしょうか?
玉井氏:Jリーグのモンテディオ山形は、当社が2021年からスポンサーとしてクラブを支援しています。他には、トライアスロンの高橋侑子選手、卓球の吉村真晴選手のサポートも行っています。

Jクラブとも連携してプロジェクトを展開
森村氏:アスリートをオーラルケアでサポートしていくという取り組みは、日本ではユニークな取り組みかと思います。実際、Jリーグのクラブとオーラルケアプロジェクトを始めていますね。
玉井氏:課題として、日本人の『歯が痛くなったら歯医者さんに通う』という意識を変えなければならないと思っています。歯が痛くなくても歯医者さんに通って、日常的に自分の口腔内をメンテナンスすることが重要だからです。そこから少しずつ、たとえばアルコールが強い体なのか、あるいは運動に向いているのかとか、自分の体に意識が向き始めるといいと思っています。
森村氏:10年ほど前に、病院を始めたのが鹿島アントラーズというチームです。鹿島スタジアムの中に『アントラーズスポーツクリニック』を作り、アントラーズのチームドクターが試合のある日ない日にかかわらず、一般の患者さんの治療にあたっています。それが成功して、Jリーグクラブがどんどん医療に参入していくなかで、次はオーラルケアというのがトレンドになるのではないかと感じました。
玉井氏:鹿島アントラーズの例は、ベンチマークとして見ていました。
森村氏:試合のない日にも患者さんが治療に訪れる姿を見ると、Jリーグのクラブが地域の医療を支えているというのが肌で感じられます。これをオーラルケアでさらにつなげていけるといいですね。
