Jリーグのガンバ大阪は、クラブが指定管理する市立吹田サッカースタジアム(パナソニック スタジアム 吹田)をテレワークに利用できるプラン「パナスタワーク」を今月12日に開始した。ピッチを一望できる開放的な環境で、各種設備の提供からユニフォームの展示まで。気になる内容、そしてその狙いを聞いた。
最新鋭スタジアムでテレワーク
ガンバ大阪の「パナスタワーク」は、Jリーグの試合などのイベントがない日に、スタジアムをテレワークの場所として利用できるサービス。バックスタンド4階のVIPフロアが利用スペースとなり、屋外のバルコニー席を含む共有ラウンジを1日1,000円で利用できる。
ラウンジ席数に従い、一日の利用人数は先着20名。電源やスタジアムWi-Fiの利用も可能で、フロアからはスタジアム全体を見渡すことができる。追加料金で個室も利用でき、オンライン会議にも対応する。
年内に見込まれる利用日数は50日から70日程度。ガンバ大阪はスタジアムの指定管理者であることから、試合日以外の利用が進めやすい。利用日が多いことはユーザーにとっても利便性が高い。
ガンバ大阪 管理部施設運営課の唐津昌美さんは、「多方面からテレワークの需要があることは見聞きしていました」と話す。2015年に竣工したスタジアムは各種設備が整う以外にも、快適な仕事空間になっている。
「緑の芝生、ガンバブルーの座席、青い空と白い雲など、目に優しい落ち着いた景観。街中の飲食店でのテレワークと違い、隣席を意識しない広々とした利用環境が見どころです」
各個室には、ガンバ大阪の歴代ユニフォームが一枚ずつ配されている。「Web会議の背景に利用できます」(唐津さん)というのも、ファンにはたまらない。
Jクラブで広がる、新たなスタジアム活用法
コロナ禍でテレワークも定着した。日本生産性本部が今年4月に行った「働く⼈の意識に関する調査」では、全国のテレワーク実施率は約20%だが、回答者の約8割は1週間の出勤が4日以下。テレワークを部分的に取り入れている人々が多いことが分かった。
現在、大阪府では全33の市が来月22日まで「まん延防止等重点措置」の対象となっている。もちろん、ガンバ大阪のホームタウンである北部地域も例外ではない。全国では東京都と沖縄県が緊急事態宣言下となるなど、この先の見通しも不透明だ。
こうしたコロナ禍の状況に合わせて、Jクラブではスタジアムの新たな活用方法が広がっている。
テレワークを先行したのは名古屋グランパス。今年3月から豊田スタジアムで「テレワークスタジアム」を実施し、ナイトゲームがある平日に、電源付きのテーブル席を午前9時から午後5時までの間、提供している。普段は目にすることができない開場前のピッチ準備が見られるなど、新たな魅力づくりも行う。
京都サンガF.C.では、昨年から本拠地となった京都府立スタジアムでコワーキングスペースを提供。フロアからピッチを眺められる眺望のほか、スタジアムには保育園なども併設され、利便性の向上を図る。
地域の核としてにぎわいをつくるという発想は、近年のスタジアム運営に共通する考え方だ。これに加えて、Jリーグの各クラブでは、地元地域や社会全体の課題解決に力を注いでいる。
ガンバ大阪のテレワークスタジアムもこれに然り。先出の唐津さんは、今回の取り組みは、新たな収益源でもファン施策でもないと説明する。
「スタジアムは公共施設なのですが、サッカーしか用途がないと思っている近隣の方々が多くいらっしゃいます。いろいろな使い方があることを知っていただき、多くの方に施設の良さを知ってもらいたい」