クラブ創設125周年、新たなスタジアムツアー提供
英プレミアリーグのマンチェスター・シティFCは、2019年4月、クラブ創設125周年を記念して、新たなスタジアムツアー「マンチェスター・シティー・ツアー」を発表した。
同スタジアムツアーは最新テクノロジーの活用が特長で、3Dホログラフムのコンテンツ、AR(Augmented Reality:拡張現実)、360度のシネマスクリーンなど、プレミアリーグでは初となる取り組みを通し、クラブや街の歴史・伝統を紹介する。
ツアーでは、オーディオとビデオを組み合わせたガイド機が提供され、選手が試合会場に到着してから試合開始のキックオフまでが体験できる。例えば、記者会見室に入ると、バーチャルなペップ・グアルディオラ監督が登場し、隣に座りながら質疑応答を行うなど、インタラクティブなコミュニケーションが可能だ。
マンチェスター・シティFC 最高執行責任者(COO)のオマール・ベラーダ氏は次のように語る。
「歴史的な記念品とテクノロジーを組み合わせることで、ファンがマンチェスター・シティのストーリーを実体験できる、ユニークなスタジアムツアーを提供でき嬉しく思う。このツアーが、ファンにとって忘れられない体験となるよう願っている」[1]
プレミアリーグのスタジアム・ツアーは、「黄金時代」へ
プレミアリーグでは、新しいスタジアムやスタジアムでの顧客体験・エクスペリエンスへの投資が進む。スタジアムでの体験は、短期的にはチケット以外の収入を生み出すだけでなく、中・長期的にはファンのロイヤル化にも繋がるからだ。満員のスタジアムや大きなファンベースを持つことができれば、スポンサーメリットも創出しやすい。
大手コンサルティング会社のデロイトは、サッカークラブ・ビジネスの主な収入源は、チケットやコーポレート・ホスピタリティなどの「マッチデー」、国内リーグ・カップ戦並びに海外カップ戦の「放映権」、そしてスポンサーシップ、グッズ、スタジアムツアーなどの「コマーシャル」としているが、欧州トップ20クラブ計の2017-2018年の「コマーシャル」収入は前年比2%伸び、全体の40%を占めるに至っている。[2]
今年4月には、トッテナム・ホットスパーが新スタジアムをオープンさせ、VIPエリアにおける観戦や食事のアップグレード、スタジアムグルメ・フードコートの充実化などを実現したが、今後は、スタジアムツアーを含むファン向けのアトラクション「Tottenham Experience」を提供する。ロッカールームや選手入場のトンネルに入ることのできる90分間のガイド・ツアーや、ピッチ上40mのガラスフロアに立つことのできる「Sky Walk」が発表されている。
英国で進むスタジアムでの顧客体験向上への取り組みについて、英国を拠点に欧州でファン・エクスペリエンスのコンサルティングを行うThe Fan Experience Companyのマーク・ブラッドリー氏は、次のように語る。
「ファンは(ホームスタジアムという)“聖地”で、クラブの記念品を目にする機会に常に惹かれてきたが、選手や監督と会うなどの“子どもの頃の夢”には、いつも手が届かなかった。しかし、テクノロジーの出現により、クラブは究極の“実体験のような”体験を提供できることとなった。これまではキャビネットの中のトロフィーを見ることができたが、今では1930年代のキャプテンが笑顔でトロフィーを持ち上げる様子を目にすることができる」
このトレンドは今後も続くというのが同氏の見方だ。
「どのクラブにとっても、最も定義しにくい目標の1つは、クラブが何を表すのか、その本質を捉えることだ。先端テクノロジーとスタジアムツアーを組み合わせることで、クラブはまさにそれを実現できる。英国サッカーのスタジアムツアーは“黄金時代”に突入している。今後数年間で、これらのエクスペリエンスは更に進化するだろう」
◇参照