ドラフトとは、日本ではプロ野球選手になるための新人選択会議を指し、野球以外でのスポーツでのドラフトは、バスケットボールのbjリーグの一時期を除き、行われていません。一方、アメリカでは野球以外のスポーツでもバスケ、アメフト、アイスホッケーでドラフトが行われています。それではまず、日本とアメリカの各スポーツにおけるドラフトの状況から紹介して行きましょう。
日本のドラフト
①野球(NPB)によるドラフト
下記に詳しく記載しますが、日本の新人選手でプロ野球選手になるには、NPBのドラフトに登録し選抜される必要があります。
②バスケットボール(bjリーグ)
かつて日本のプロバスケットボールのbjリーグでは、2005年から2015年まで、毎年ドラフトを実施しており、1巡目は日本のプロ野球同様、入札抽選方式、2巡目以降はウェーバー方式で行っていました。ただし、ドラフトに全チームが参加したのは初年度だけで、ドラフト指名選手への最低年棒300万円を保証しなくてはならない制度ではチームへの負担が重く、ドラフト参加チームが減り制度崩壊、現在では直接交渉・自由契約方式に変わっています。
日本のサッカーJリーグにはドラフトがない
サッカーのJリーグには野球のようなドラフト制度がありません。理由には、日本ではサッカー新人選手は、Jリーグチームの下部組織が育てる、という考え方があることと、リーグ間の昇降格があり、ドラフト参加チームが絞れないからです。有力新人選手が一部チームに偏らないようにするためには、規定上、年俸と支度金に当たる契約金の金額上限が設定されています。
アメリカでのドラフト
アメリカでは将来を嘱望される新人選手が、NLB、NBA、NFL、NHLの取り合いになることがあり、そういう意味もあってドラフト会議を行っています。
①野球アメリカ大リーグ(MLB)
野球の本場アメリカMLBのドラフトには2種類あり、ファースト・イヤーと呼ばれるアマチュア選手の獲得制度と、ルール5ドラフトというプロ野球選手を指名するドラフトがあります。
ファースト・イヤー
ファースト・イヤーとは、1965年から各チームの戦力均衡を図るために導入された制度です。直前シーズンのチーム順位の最下位チームから選手を指名、指名は即独占交渉権の獲得を意味する、完全ウェーバー制を採用しています。
ルール5ドラフト
ルール5ドラフトとは、有望選手にも関わらずマイナーリーグチームに所属し、メジャーの陽の目を見ない選手たちを救済しようという、他チーム所属の現役プロ選手を指名して獲得する制度です。
②北米プロバスケットボール(NBA)
NBAは毎年6月、アマチュア選手との契約交渉権を獲得するためにNBAドラフトを行っています。第1回は1947年に行われ、在米の場合は高校卒業から1年後、海外からの選手は19歳以上を対象としています。1巡目上位4位まではNBAプレーオフに進出できなかった14チームによる抽選で指名順位を決め、2巡目はウェーバー方式で行われます。
③アメリカンフットボール(NFL)
アメリカの国技ともいわれるアメリカンフットボールのNFLでも毎年ドラフト会議が行われていますが、歴史は古く、1936年に第1回のドラフト会議が開催されています。戦力均衡が目的で、完全ウェーバー方式が採用されています。
④北米プロアイスホッケーリーグ(NHL)
NHLでも、NHLエントリードラフトというドラフト会議が行われています。18歳以上の若手選手に対し、入団交渉権を獲得するというもので、ドラフトの第1回目は1963年です。1巡目はレギュラーシーズンでプレーオフに出場できなかった15チームが、1から3番目の指名権を争いくじ引きを行います。その後はレギャラーシーズンの順位で指名権を獲得、2巡目からはウェーバー方式になります。
ドラフトとは?
それでは話を日本のプロ野球(NPB)に戻して、ドラフトについて説明しましょう。
日本では近年テレビでもバラエティー番組の扱いで放送されていることで、ドラフトがプロ野球の新人選手の獲得の場になっていることは、ご存知の方も多いでしょう。選手ひとりひとりに野球人生があり、そのプロとしての入り口が決まる会議ですので、それぞれにドラマがあるのは間違いありません。
過去には、意中のチームの指名を得られなかったことで、浪人する選手や、高校生なら大学野球や社会人野球に進む選手もいて、ドラフト制度自体の是非等を論ずる意見も多くありますが、ドラフト制度がもたらす各チームの戦力均衡が、ひいてはNPBの将来の発展につながるという意見に異論はないでしょう。
NPBのドラフト会議について
NPBのドラフト会議は1965年に始まりました。ドラフトでは以下の方式を採用しています。
新人選手とは、日本国籍を有する、中学校以上の学校に在学した経験があって、NPB球団と契約未締結の選手のことを指し、球団はドラフト会議で新人選手との契約締結の交渉権を獲得しなくてはなりません。
ドラフト会議ではまず、1巡目は入札・抽選を行います。重複入札がなかった場合には単独指名となり、交渉権を獲得できます。重複入札の場合は抽選を行い、当選したチームは交渉権獲得、外れた球団は再入札をします。以降、全球団の選択が確定するまで入札・抽選を行います。2巡目はウェーバー方式を使い、前シーズンの「球団順位の逆順」で指名を行い、3巡目は「球団順位」、といったように以後は交互に折り返しで指名します。セ・パの順は、2021年度はセ・リーグに優先権がありましたので、セ・リーグ最下位の横浜DeNAが第1順位、北海道日本ハムが第2順位、…といった順番で指名します。
指名の終了は、全球団が原則10名までの制限で「選択終了」となるか、少ない指名の球団の分を他球団が指名することで選択人数が120名になったところで終了です。
新人選手選択会議で120名に達していない場合は、希望球団による育成選手選択会議が行われます。
ドラフト会議から入団までの流れ
球団は交渉権を獲得し、選手と契約交渉を行います。順調に契約締結となれば入団ということになります。
獲得した交渉権は放棄することも他球団に譲渡もできず、翌年の3月末までに交渉権を得た選手と契約が締結できなかった場合には、その球団は交渉権を失います。
今年入団が決まった注目の選手
2021年の今年は10月11日に、テレビはTBS系列、ラジオはニッポン放送、さらにインターネットではParavi、Sports Bullが放送権を獲得、ドラフトの中継を行いました。今年は「超目玉」選手はいないのですが、豊作と言われたドラフトでした。
今年の注目選手
高校生では、最速157キロの速球が魅力のノースアジア大学明桜高校の風間球打投手、完成度の高い投球術を持ち最速152キロの右腕である市立和歌山高校の小園健太投手、中学生で全国大会春夏連覇をした、最速154キロを投げる高知高校の森木大智投手、中京大中京高校の畔柳亨丞投手、天理高校の達孝太投手、技巧派のサウスポー・大阪桐蔭高校の松浦慶斗投手、岐阜第一高校の阪口楽外野手、
大学生では、高校時代から注目されていた法政大学の山下輝投手、大学日本代表の筑波大学の佐藤隼輔投手、全日本大学選手権初戦で好投した関西学院大学の黒原拓未投手、技巧派で最速150キロの左腕である西日本工業大学の隅田知一郎投手、中央大学の古賀悠斗捕手、隅田投手から決勝ホームランを打った上武大学のブライト健太外野手、
社会人では、三菱自動車倉敷の廣畑敦也投手、JR東日本の山田龍聖投手らの前評判が高かったです。
今年のドラフト交渉権獲得球団
ドラフトの結果、風間投手は福岡ソフトバンクホークス、小園投手は2球団競合で横浜DeNAベイスターズ、森木投手は阪神タイガース、達投手(1位)と畔柳投手(5位)と松浦投手(7位)は北海道日本ハムが交渉権を獲得しました。
その他、各球団の1位指名選手は、中日ドラゴンズは上武大学のブライト健太外野手、西武ライオンズは4球団競合で西日本工業大学の隅田知一郎投手、広島東洋カープは関西学院大学の黒原拓未投手、読売ジャイアンツは関西国際大学の翁田大勢投手、東北楽天イーグルスは高校通算56発の昌平高校の吉野創士外野手、千葉ロッテマリーンズは市立和歌山高校で小園投手とバッテリーを組んできた松川虎生捕手、東京ヤクルトスワローズは2球団競合で法政大学の山下輝投手、オリックス・バファローズは東北福祉大学の椋木蓮投手をそれぞれ指名しました。
このように見てみますと、ドラフト1位選手12名中、8つの球団が投手を指名しているように、各チームともドラフトでは投手を中心に交渉権を得ている様子が分かります。
1位指名選手では、広島の黒原投手、ロッテの松川捕手、西武の隅田投手、楽天の吉野外野手、日ハムの達投手、ソフトバンクの風間投手、巨人の翁田投手の入団が決まっており、来年からの活躍が楽しみです。
まとめ
ドラフトについて、日本でのプロ野球ドラフト、アメリカでの野球・バスケ・アメフト・アイスホッケーのドラフトを説明しました。
日本では、野球が国技のようだった時代に、セ・リーグの一部球団に戦力が集中した弊害からドラフトが導入され、その結果、セ・パの実力も、各チームの戦力も均衡がなされ、ペナントレースも日本シリーズも楽しくなってきました。
一部ファンにとっては贔屓チームが勝てなくなり、ドラフトをよく思わない方もいるかもしれませんが、期待の若手がどのチームに行くか、毎年のドラフトを楽しみにしている方も増えており、ドラフト制度は将来に向けて存続されていくことでしょう。
(TOP写真提供 = Nathaniel Yeo / Unsplash.com)
《参考記事一覧》
今更ですが清宮で気になった。なぜJリーグにはドラフトが存在しないのか (Yahoo!ニュース)
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