日本代表戦などをTV観戦していると、よくでてくる「ボランチ」という言葉。サッカーには、ポジションや役割の名前がたくさんあるので、わからない方も多いのではないでしょうか。
本記事が、ボランチについて知るきっかけになれば幸いです。
ボランチとは
ディフェンダーの前に位置する守備的ミッドフィルダーのことです。ポルトガル語で「舵取り」という意味です。
役割
「舵取り」という語源の通り、試合状況を分析し、判断を下すため、攻撃の鍵を握っています。たくさんゴールを決めるようなポジションではありませんが、中盤の要として、試合の中では大きな存在感があります。
ボランチの役割は、主に下記の3つ。
- 攻撃のチャンスをつくるため、味方にパスを繋ぐ
- ゲームを読み、最適な場所につく
- ボールを取り、ゴールに相手を近づかせない
次で詳しく解説します。
攻撃のチャンスをつくるため、味方にパスを繋ぐ
1つ目は、味方にパスを出し、攻撃の起点になること。ボールを奪取した直後から、パスを中心に攻撃を組み立て、攻撃のチャンスを多くつくることが、ボランチの役割です。
定位置である中盤の底は、相手の圧力が比較的ゆるい場所なので、ボールを持ちやすいのが特徴です。
ゲームを読み、最適な場所に行く
2つ目は、ゲーム全体を見渡し、味方を助ける動きをすること。ボランチは位置的にも全体を把握できるため、守備の配置のみならず、味方の攻守のフォローをしたり、パスをもらえる位置につくなど、チームの調整役でもあるのです。
ボールを取り、ゴールに相手を近づかせない
3つ目は、守備です。ボランチのポジションは、バイタルエリアとも呼ばれます。
バイタルエリアとは、得点に繋がりやすいプレーが起こるエリアのこと。守備として、このエリアでボールを奪ったり、相手のプレーを邪魔したりし、チャンスをつくります。
求められるスキル
試合の流れをコントロールしなければいけないため、テクニックをはじめ、判断力など高い能力やスキルが求められます。
攻撃面・守備面で必要なスキルを解説します。
攻撃面 | 守備面 |
・ゲームメイク力 ・ミドルシュートによる、決定力 ・ボールを運び、状況を変える力 | ・ボール奪取力 ・ルーズボールの回収能力 ・危機察知、カバーリング能力 |
攻撃面では、縦パスを出せなければいけません。
また、ボランチのいるエリアは相手の守備が手薄になりやすいエリアのため、ミドルシュートが打てれば、大きな武器になります。
ボールを受け、味方の攻撃につなげることやゲームメイクする能力も必要不可欠です。
そのためには、相手からボールを奪うスキルは欠かせません。あわせてボールコースの予測、ポジショニングに優れている選手はボランチとして活躍できるといえるでしょう。
ボランチの語源
世界初の「ボランチ」選手
今では守備的ミッドフィルダーとして「ボランチ」という言葉は、日本においてある程度認知されています。
その語源はポルトガル語で「舵取り」とされる一方で、かつて存在した選手の名前に由来するとの見方もされています。
現在は攻撃選手が守備を、守備選手が攻撃をそれぞれ担うことは一般的です。
しかし、1930~40年代ごろのブラジルにおいて攻撃と守備は分業とされており、兼任して活躍する選手はいませんでした。
サッカーチームのフラメンゴでの全試合が記録されている「フラメンゴ年鑑」の記録では、アルゼンチン出身の「カルロス・ボランチ」という選手がいました。
1938年のW杯で、彼は守備的ミッドフィルダーとして試合の中盤から攻守共に活躍。
カルロス・ボランチが所属していたフラメンゴは、12年ぶりに優勝しました。
当時のライバルチームの監督は、選手に「ボランチのようにプレーしろ」と指示したとのことです。
それがいつしか、ポジションの名称として浸透したそうです。
日本以外では使われていない「ボランチ」
ボランチという言葉は、守備的ミッドフィルダーのポジションとして日本とブラジル、ポルトガルにおいて使用されています。
しかし、英語圏では「セントラルミッドフィルダー」、イギリスでは「ディフェンシブ・ミッドフィルダー」、スペインでは「ピボーテ」、イタリアは「メディアーノ」というように、他国において守備的ミッドフィルダーを指す言葉は共通していないのです。
日本においてボランチが広まったきっかけははっきりわかっていませんが、一説では日本のサッカーメディアがブラジルの監督や選手などから聞いた話が流行したというものです。
また、日本ではチーム内にボランチを2人配置する場合はダブルボランチ、3人だとトリプルボランチという名称が使われています。
しかし、これらはあくまで英語とポルトガル語を合わせた造語で、日本以外では通じないローカル用語です。
ボランチの練習方法
攻撃の際はパス回しの中心になり、守備の際は味方の動きをサポートする役目があるため、攻守でバランスを取る能力や、豊富な運動量、基礎能力、視野の広さが必要です。
有能なボランチになるには、どのように練習をすればよいのでしょうか。ポイントは、下記の3つです。
- スタミナの強化
- サッカーの基礎能力を強化
- 広い視野
まずボランチには、中盤で動き回るため、豊富な運動量が必要です。そのため走り込みや体幹トレーニングなど、スタミナを強化する練習メニューを取り入れましょう。
次に、サッカーの基礎能力。まずはボールコントロールを身につけるため、足元にピタッとボールを止める練習をしましょう。ボランチは守備の要なので、ボールキープ力がなければチームの役に立てません。
また、足に吸い付くようなボールさばきも必須のスキルです。
広い視野を持ってプレーできるよう、ある程度ボールを止めるようになれば、パスを受けたときにも周りを見られるようにしましょう。チームにより守備型、攻撃型、司令塔型と求められるボランチのスタイルは異なります。
チームスタイルに合わせて練習方法も変化させてください。
ボランチの有名選手
ボランチで有名な現役選手をピックアップしました。海外、日本を併せて注目選手を集めてみました。把握しておくと、サッカー観戦がちょっと楽しくなるかもしれません。
遠藤保仁選手(Jリーグ/ガンバ大阪)
「ボランチ=遠藤選手」というイメージが多くのファンに浸透しているほど、長年日本代表のボランチとして活躍してきました。正確無比なパス、精度の高いセットプレーが魅力で、絶大の存在感をはなちます。日本サッカーでのボランチを語るには、欠かせない選手です。
長谷部誠選手(ドイツブンデスリーガ/フランクフルト)
フォワード以外のすべてのポジションを経験している、規格外の順応性を持つ元日本代表の名キャプテンです。サッカーに詳しくない方でも、長谷部選手の名前は知っている、という方も多いのではないでしょうか。
コーチング力やメンタルの強さも特徴です。
『心を整える』という著書でも一躍話題になり、世界でも認められた日本の名選手です。
柴崎岳選手(スペイン/レガネス)
現在スペイン2部リーグに所属している柴崎選手。名門レアルマドリード、バルセロナからゴールを奪うなど、ミドルシュートの精度の高さによる決定力が魅力です。
視野も広く、卓越したパスセンスとプレーで現在日本代表としても活躍しています。1つのパスでゲームを動かすことができる司令塔として、今後の活躍も見逃せません。
アンドレス・イニエスタ選手(スペイン/J1ヴィッセル神戸)
世界最高のテクニックを持ち「魔術師」との異名を持つイニエスタ選手。ボールキープが抜群に上手く、ドリブルのコースでも常に相手の逆を突いてきます。
長年名門バルセロナを牽引し続けてきた、まさにボランチの伝説的選手といえるでしょう。現在は、日本でプレーしていますので、TVなどで卓越した技術をぜひ確かめてみてください。
ルカ・モドリッチ選手(スペイン/レアル・マドリード)
モドリッチ選手は、高いボールテクニックを持ち両足での精度の高いボールコントロールを得意とし、相手を翻弄するキックテクニックを持っています。
戦術眼や戦略プランにも長けていて、頭脳はボランチの代表格です。サッカー界の最高栄誉とされる「バロンドール」を獲得したこともある選手です。
セルヒオ・ブスケツ選手(スペイン/バルセロナ)
ゲームの組み立てが上手く、中盤の底から得点に結びつくプレーを展開するテクニシャンといえば、セルヒオ・ブスケツ選手でしょう。
相手にボールを奪われないボールキープ力も飛び抜けており、189cmと大柄な身体と強いフィジカルで、相手のプレッシャーを跳ね除けるパワーがある魅力的な選手です。
まとめ
今回は、ボランチについて紹介しました。ボランチの選手は、総じてスタミナが高く、卓越した技術を持っています。彼らのプレー次第で、試合の流れが変わることも少なくありません。
ボランチのことを少しでも理解できると、サッカー観戦もさらに楽しくなることでしょう。
(TOP写真提供 = Alliance Football Club / Unsplash.com)
《参考記事一覧》
今さら聞けない…サッカー用語「ボランチ」とは、一体なんだ!?(調整さん)
【日本/海外別】サッカー”MF(ボランチ)”の超一流選手ランキングTOP10!【2021現役】(SOCCER MOVE)