サッカーで使う筋肉とトレーニング ~筋肉痛防止の方法も紹介~

サッカーをプレーする上でコンディショニングは不可欠です。コンディショニングとは、日本語では「調整」を意味する言葉で、筋力トレーニング(筋トレ)やストレッチング、メンタルトレーニングやマッサージ、栄養補給や休養など、「競技をするために適応能力の高い身体を作っていくプロセス」を指し、その目的は「障害の予防」と「競技力の向上」の大きく分けて2つとなります。

ここでは、その中でも「サッカーの筋肉」に注目し、サッカーで使う筋肉と特性について説明します。

サッカーで必要な筋肉

サッカーで必要な筋肉を見ていく前に、まずはサッカーという競技をイメージしてみてください。(ここでは特殊な役割のゴールキーパーではなく、フィールドプレーヤーとします。)

試合中、選手は長時間、ボールを追ってピッチを走り回る、ボールを蹴る、スローインでボールを投げる、ボールを受ける(トラップ)、ヘディングをする、ドリブルをする、相手をフェイントでかわす、相手と接触する、ジャンプして相手とボールを取り合う等々、さまざまな動きをします。

つまり、持久力、瞬発力、敏捷性などを併せ持つ筋肉が必要となります。

サッカーで使う筋肉

サッカーはスローインの時以外、ボールを手で扱わないスポーツです。つまり、下半身の動きが中心となりますが、上半身が弱いと相手との接触プレーで当たり負けたり、身体が不安定になったりします。また、スピードを出すためのパワーは上半身から得られるもの。

したがって、上半身・下半身の筋肉をバランスよく鍛えることが大切となります。

サッカーで重要な下半身の筋肉には、身体の安定に大切な脊柱起立筋、腰の大臀筋、中臀筋、太ももの大腿四頭筋、大腿二頭筋、大腿内転筋、ハムストリングス、下肢の腓腹筋やヒラメ筋と呼ばれる下腿三頭筋などが使われます。

また、サッカーで使用する上半身の筋肉として、ヘディングでは首・肩の筋肉が、スローインでは僧帽筋、広背筋、大胸筋、腹直筋、腹斜筋、上腕二頭筋、上腕三頭筋など、背中や胸、腹、腕の筋肉が挙げられます。

当たり負けしない身体を作ることで股関節の働きが鈍くなる?

当たり負けしない鎧のような身体を筋トレで作ることは、天性の股関節の転子の働きを鈍くしてしまう、という説があります。サッカーはコンタクトスポーツであり、当たり負けしてしまう身体では安定性に欠けることは事実で、ケガを防ぐためにも鎧のような筋肉をつけるべきだといわれます。 

ただ、鎧のような筋肉をつけすぎると、サッカーで大切なケガをしない柔軟性のある筋肉をつけることはできません。

サッカーの長友佑都選手は、トレーニング前のストレッチを重視し、その後柔らかくバランスのよい体幹を作るためのトレーニングを行なうことで、今でも現役で活躍できる身体を身につけたと言われています。

特に重要なのが、下半身では大腿四頭筋、大臀筋、下腿三頭筋、上半身では広背筋、大胸筋、腹直筋です。

それぞれの強化についておすすめメニューと、大腰筋などのインナーマッスルを鍛えるプログラムを紹介していきます。

おすすめの筋トレメニュー

写真提供 = Yogendra Singh / Unsplash.com

筋トレには、ジムに通って機械を使って行なうものから、自宅でも行なえる自重トレーニングがあります。どこでも気軽にトレーニングしたい場合には自重トレーニングがおすすめです。ここでは自重トレーニングの中から、それぞれの筋肉に効く筋トレメニューを7つ紹介します。

 ①大腿四頭筋を鍛える筋トレ

大腿四頭筋は、走力の向上や、ボールを遠くに蹴るために大切な太ももの筋肉です。大腿四頭筋を鍛える筋トレとしてノーマルスクワットが挙げられます。ノーマルスクワットは基本となる筋トレですが、太ももの前後の筋肉および、大臀筋、下腿三頭筋や前脛骨筋のトレーニングにもなります。

ノーマルスクワットのやり方は、まず、 両脚を肩幅より広めに開いて立ちます。両腕は胸の前でクロスさせ、胸を張り、背筋を伸ばした姿勢で、膝を曲げ太ももが床と平行、もしくはそれより深くなく135度の角度(クォーター)までお尻を下ろして元に戻ります。膝が爪先よりも前に出ないよう姿勢に気をつけましょう。

②大臀筋を鍛える筋トレ

大臀筋は、下半身の動きを制御し、キックするための土台となる臀部の筋肉です。スクワットでも大臀筋を鍛えられますが、大臀筋を特に鍛えるならニーリングと呼ばれる筋トレがおすすめです。

ニーリングは、まず、四つん這いになります。片手は頭の後ろに置き、置いた手とは逆の足(右手を頭の後ろなら左の足)の膝を息を吐きながら伸ばします。お腹に力を入れて姿勢を保ちましょう。

③下腿三頭筋を鍛える筋トレ

下腿三頭筋は、俗に「ヒラメ筋」と呼ばれる筋肉を含む、足首のコントロールやつま先の力強さに関係してくるふくらはぎの筋肉です。繊細な足の動きに密接に関係してくる重要な筋肉です。

下腿三頭筋を鍛える筋トレとしてカーフレイズがあります。

カーフレイズのやり方は、つま先立ちを繰り返すというもの。

いつでもどこでもできるトレーニングですが、真剣にやるとかなりきついトレーニングです。

段差を使ってのつま先立ちや、重りを抱えることで負荷をかけるといいでしょう。

下腿三頭筋に加え大臀筋を鍛えることができます。

④広背筋を鍛える筋トレ

広背筋は、腕を振るために大切な背中の筋肉です。

広背筋を鍛えるトレーニングとしてバックエクステンションがあります。

バックエクステンションは、まず、床でうつ伏せになり、手のひらを床に向けて両腕を体側に伸ばします。

その後、おへそを支点にして背中を反らし、両腕と両脚を床から上げて静止し、元に戻します。

指先とつま先を伸ばして、肩甲骨を引き上げる感覚を持つと広背筋に効果的です。脊柱起立筋のトレーニングにもなります。

⑤大胸筋を鍛える筋トレ

大胸筋は、ぶつかり合いに負けないために鍛える胸板に当たる筋肉です。

大胸筋を鍛える筋トレとしてプッシュアップがあります。

プッシュアップでは、両腕を肩のラインで床についてうつ伏せとなり、両腕のスタンスをできるだけ広く取ります(ワイドスタンス)。

肘を伸ばし両脚を揃えて後ろに伸ばし、胸を張って身体を真っ直ぐにし、その状態で肘を曲げて上体を床すれすれに近づけ、元に戻します。腰を落とさないように注意してください。

両腕のスタンスを広くとると大胸筋の、狭く取る(ナロウスタンス)と上腕三頭筋のトレーニングになります。

正しいフォームで行なうことと、どこでもできるのでまめにやることが肝心です。

⑥腹直筋を鍛える筋トレ

腹直筋は、上半身と下半身をつなぎバランスを取るのに大切なお腹の筋肉で、体幹を強くする筋肉です。

腹直筋を鍛えるトレーニングとしてシットアップがあります。

シットアップのやり方は、まず、床で仰向けになり、揃えた両膝を90度に曲げます。

両腕を肩の真上に伸ばし、おへそを見るように上体をゆっくり起こし、元に戻しましょう。

反動を使わないこと、腕は真っ直ぐに伸ばしたままにすることが大切です。

⑦インナーマッスルを鍛える筋トレ

インナーマッスルとは、身体の深層にある筋肉のこと。

ここでは、インナーマッスルとアウターマッスルの連動性を高めて、手足の動きにキレを出すための6つの筋トレプログラムを紹介します。

6つを1セットとして、複数のセットを行ないましょう。

バックキック

両手両膝を床につけて、肩の真下で両肘をつきます。片方の脚を真っ直ぐに上げて頭から足先までを一直線に5秒キープ。脊柱起立筋、広背筋、大臀筋に効きます。

ドローインVクランチ

仰向けになって上体を起こし、肩の真下で肘をついて、片方の膝を立てます。息を大きく吸ってお腹を凹ませドローインをして、もう片方の膝を立てた方の膝の高さまでゆっくり上げたら床下ぎりぎりのところまでゆっくり降ろします。ドローインをしたまま上げ下げを10〜20回繰り返すことで、大腰筋、腹直筋に効果が期待できます。

ツイストクランチ

仰向けに寝て、両脚を上げ、両膝をつけて90度に曲げます。膝を上げたまま、上体を起こし肩甲骨をしっかり上げてひねり3秒キープ。腸腰筋、腹直筋、腹斜筋に効きます。

腕伸ばしツイスト

脚を前後に開き、両腕は前に伸ばして手のひらを合わせます。膝を骨盤を固定し、腕を左右に往復20回動かします。この時、顔は正面を向いて動かさないようにしてください。腹横筋、大臀筋、腹斜筋に効きます。

Vクランチ

仰向けに寝て、片方の膝を90度に立てます。上体と立てていない方の脚を同時に持ち上げV字を作りましょう。上体は膝の高さまで持ち上げ、上げ下げを10〜20回行います。大腰筋、腹斜筋、腹直筋に効きます。

片手フロントブリッジ

うつ伏せになり、肩の真下で両肘をつき、胸から上を起こします。脚は骨盤の広さに開きましょう。骨盤と片方の腕を一緒に持ち上げ、腕を真っ直ぐに伸ばし、指先からかかとまでが一直線になる状態で2秒キープします。左右5回、広背筋、腹斜筋、腹横筋、腹直筋、大臀筋、ハムストリングスに効きます。

筋肉痛の予防・回復方法

運動をすると筋肉痛になる、という方も少なくないでしょう。

筋肉痛は、普段よりも高負荷の運動で筋肉がオーバーワークになったこと、または普段使っていない筋肉を使うことによって起こる筋肉組織の損傷です。

筋肉は、水分を除くと80%がタンパク質ですが、そのタンパク質を使って運動を行なっています。筋肉痛は、活動により損傷を受けた筋肉を白血球が修復する際の副産物である老廃物が筋肉に残ることで痛みを発生するというもの。

つまり、筋肉痛に対する対策として、副産物を早く除去することと、修復に必要な酸素と栄養を早く届けることが挙げられます。

筋肉痛の発生を予防するためには、運動後にゆっくり走るなどの有酸素運動を行ないクールダウンし、筋肉痛になりそうな、太ももや腰回りなどの大きな筋肉をストレッチして伸ばしておく、ということが大切です。

これらの運動をすることで、血液の循環を急激に落とさず、疲労物質の排出を促進することができます。

また、ぬるめのお湯に20分から30分程度浸かる「低温浴」もおすすめです。これも同じく血液の循環を促進し、老廃物の排出を促すことができるもの。低温浴に併せて筋肉痛の起こりそうな筋肉をマッサージするとよいでしょう。

低温浴をする前に痛みを感じている場合には、筋肉等が炎症を起こしていることが考えられるため、まず、冷やすことが大切です。

冷やした後に、ぬるめのお湯で低温浴するとよいでしょう。

筋肉の修復

筋肉の修復には酸素と栄養、睡眠が必要です。

試合やトレーニングの後、30分程度から筋肉の修復が始まります。したがって、それまでに筋肉の素である良質のタンパク質を補給することがおすすめです。食事が取れない場合はアミノ酸サプリメントを取ることでもよいでしょう。

また、就寝後2時間程度から筋肉の修復を行なう成長ホルモンは活発に分泌されます。ゆっくりリラックスして睡眠を取ることを心がけましょう。

まとめ

サッカーで大切な筋肉の説明と、コンディショニングのひとつである筋肉トレーニングのおすすめの方法、筋肉痛を起こしにくく早く回復する方法について説明しました。

サッカーのパフォーマンスの向上には、筋肉をよく知り、効果的なトレーニングを行ない、筋肉痛を残さない取り組みが大切となります。

本記事を 参考に、ケガをせず、パフォーマンスが向上する、理想的な身体作りを目指してください。

(TOP写真提供 = Jonathan Borba / Unsplash.com)


《参考記事一覧》

サッカー上達に必要な筋トレメニューとは? (POWER PRODUCTION MAGAZINE)

サッカー前後にやって欲しい筋肉痛防止対策! (ATHLETE TRAINING MAGAZINE)

『1週間で腹を凹ます体幹力トレーニング』(木場克己 著)

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