今回、「学問」としてのスポーツマーケティングの実態について調べてみました。
その結果、教育界で行われているスポーツマーケティング教育の実態としては、地域との連携という意味で画期的な取り組みが行われていることが分かりました。
この記事では、実例の紹介を中心に、実際に学んでいる学生たちの姿について取り上げて紹介します。
スポーツマーケティングとは?
スポーツの世界には、古くから発足していたプロ野球をはじめ、1993年にスタートしたサッカーのJリーグ、さらには発足して間もない新興のプロバスケット、Bリーグといったプロスポーツが存在します。
野球を別にすれば、日本の多くのスポーツは「企業アマ制度」が中心で、いわゆる実業団スポーツに多くが支えられていました。
そんな福利厚生と企業宣伝の一環だったかつてのスタイルから、現代ではスポーツ競技を積極的に活用して事業化につなげるビジネスモデルが求められています。
こうした動きをリードするのが、「スポーツマーケティング」です。
スポーツ興行を利用した広告ビジネスを展開する一方で、選手個人や競技スポーツ、あるいはスポンサーの代理人として、ファンと報道メディア、企業をつなぐ役割をスポーツマーケティング企業が果たしているわけです。
従来は大手広告代理店のスポーツ事業が担ってきたその役割を、今やスポーツマーケティングに特化した専門企業が活躍するようになっています。
最近では、広報活動やプロモーション活動に加えて、情報やデータの配信、スポーツ映像制作などのメディア事業やファンクラブの運営、イベント開催など多彩なジャンルに進出しており、さらなる注目度が高まっています。
スポーツマーケティングを学ぶには?
体育学
スポーツマーケティングの専門知識を学ぶのにふさわしい学問と言えば、まずは「体育学」系が挙げられます。
国内と海外のスポーツ事情全般について、その歴史から現状まで、正しい知識を学ぶことはスポーツマーケティングにとって不可欠です。
スポーツ経営学
いわゆる「人間科学」系の学部と一部の「経営学」系の学部に設置されている「スポーツ経営学」は、スポーツマーケティングに直結する学問分野です。
スポーツ経営学においては、スポーツをあくまで「経営」「ビジネス」という視点で研究します。
はじめに「経営学」の基本理論を学び、その上でスポーツ競技の文化としての側面や、社会の中での役割を理解していきます。
さらに、スポーツ競技の指導とプロチームの組織運営という実践的な知識を学び、選手のマネジメントなどをはじめとする「ビジネスとしてのプロスポーツ」の経営法に踏み込んで行くというスタイルが、一般的なスポーツ経営学のカリキュラムと言えるでしょう。
これらの学部では、スポーツイベントの企画やスポーツ用品の開発、といった研究テーマもあります。
専門学校で、スポーツマーケティングコースを設けているところもあります。
そこでは、スポーツ用品の企画から販売までに必要とされるマーケティングの基本をはじめ、広告宣伝や販売促進の方法などを、スポーツメーカー出身の講師から学ぶことができ、スポーツメーカーへの就職が主な目標とされています。
プロスポーツチームとの連携による人材育成
一部の大学では、プロスポーツチームとコラボして、スポーツビジネスを支える人材を実践的に育成するという取り組みを行っています。
その実例を紹介しましょう。
産業能率大学×B.LEAGUE
「地元プロバスケットボールチームが主催する、平日のホームゲームの集客力を高めるにはどうすればいいか」というミッションに挑戦するのは、産業能率大学経営学部の演習科目「スポーツマーケティングリサーチ」の受講生たち。
同大は、リーグ設立時からBリーグの横浜ビー・コルセアーズと協力関係を築き、支援をしていますが、その一環として、学生に課題を与えているのです。
受講生たちが班ごとに分かれ、チームから与えられた課題に対して、試合開催日に合わせて企画を立案します。
まずは実際に平日の試合を見学し、課題や提案の材料を探し出すとことからスタート。
2か月後には、チームの球団代表に向けたプレゼンテーションを行うのです。
「20代半ばのOLを想定し、平日限定のスタンプカードを作る」といった具体的なユーザーを想定するペルソナ分析や、「SWOT分析」などのマーケティング手法を用いる学生もいるなど、その内容は本格的です。
準備期間こそ短いものの、実現可能で具体的な案を精査した結果、選手の似顔絵コンテストなど5つの案が採用され、その企画が実現したことによってファミリー層が多数来場するなどの成果を上げました。
似顔絵コンテストを考案した学生は「アリーナに遊び場はあっても、子供のイベントがなかった。そこで子供が気軽に参加できる似顔絵コンテストを思いついた」とその理由を説明しています。
球団代表は「チームの本拠地は横浜の住宅地。平日開催時にはファミリー層以外の集客に苦戦しているのが現状。これからも若い学生のアイデアを活かして来場者を楽しませたい」と、期待を込めています。
麗澤大学×Jリーグ
麗澤大学でも、地元のJリーグチームと連携しています。
同大は2018年に経済学部にスポーツビジネス専攻を新設しましたが、60人の在籍学生のうち、約半数は現役アスリートです。
そこで看板授業となっているのが、Jリーグの柏レイソルとのプロジェクト型講義なんです。
麗澤大では、17年に柏レイソル職員による学内講義やインターンシップ生の受け入れなどをテーマに教育連携協定を結んでいます。
ファン感謝デーやホームゲームでのイベント、年間シートの特典など、クラブから与えられた課題に対して学生が企画提案に取り組んでいます。
経営学を基礎から学ぶなど、「広い意味でスポーツ産業に携わる人材を育てるのが使命」とされています。
柏レイソル側にも狙いがありました。
女性や若者の集客増に向け、学生の知恵を借りたかったのです。
18年からは千葉ロッテマリーンズの柏市後援会とも連携し、同様の授業を始めています。
まとめ
日本では、スポーツマーケティングそのものを学べる大学は多くありません。
しかし、経営学の一分野として、スポーツマネジメントやスポーツマーケティングに着目する大学も増えており、今後はさらに増加していくと思われます。
近い将来、麗澤大のようなスポーツビジネス専攻コースが他大学に新設されるということが大いにあり得るでしょう。
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