改革と挑戦 ライジングゼファーの再出発
前回コラム:Bリーグ福岡(2)「普通のこと」ができなかった経営・フロント。クラブ永続のため必要な改革とは
2019年4月30日の臨時理事会で、ライジングゼファー福岡のB2ライセンス交付が正式に決定しました。クラブの社長としてはほっと胸をなで下ろすとともに、ご心配ご迷惑をおかけしたブースターやスポンサーの皆様をはじめ、ご支援いただいている全ての方々にお詫びしたい気持ちで一杯です。
今回、地元企業であるやずや様、アカナファミリージャパン様などに参入いただいたことで当面の運転資金を確保することができました。自己資本50%の株を2社、1個人に売却したことで、これまでオーナー依存体質にあったクラブの経営の在り方も変わっていくことになります。
4月30日はライジングゼファーのリスタートの日。「なんとかなった」という達成感は全くなく、「これからだ」という新たな挑戦への思いが勝っています。
今回のやずや様、アカナファミリージャパン様に加え、より多くの地元オーナー様のご参入を試みましたが、3週間で決定という時間の制約により二社にとどまったものの、今後は時間をかけてさらに地元オーナーを増やしていく予定です。ライジングゼファーという地元のプロバスケットボールクラブに興味を示してくださる地場の企業様が多数あり、今後はさらに地域密着、バスケ王国・福岡、オール福岡のクラブとしての色合いを強めていきたいと考えています。
残った資本を地元の企業様に分散して支えていただくというやり方は、キャッシュフローの改善、リスク分散の面から見ても、メリットが多く、私がクラブ社長に就任した頃に思い描いた「普通」のプロスポーツクラブのあり方に近いものです。
私自身、シーズン終了後、速やかに地元企業様数百社に直接お邪魔し、経緯説明や来季に向けたトップ営業を続けています。経営危機のニュースを受けて「こんな時こそ地元の企業として支えなければ」という温かい言葉を掛けていただくこともあり、ライジングゼファーを地域の公共財として大切に経営していかなければいけないという思いを新たにしています。
「どローカル」クラブに。福岡への地域密着で再生へ
「地域密着」はプロスポーツリーグの先輩であるJリーグの発足時から続く、スポーツクラブの大きな存在意義であり、同時に課題でもあります。地域にただ依存するのではなく、支えていただける、相互にメリットのある形での相乗効果を得るためには、私たちが持っているコンテンツパワーを地域に還元していく必要があります。
スポーツを通して子どもたちに夢を与える活動に積極的に取り組むのをはじめ、車いすバスケへの参画を検討するなど、ライジングゼファーを地域の公共財とし、地域の方々に使っていただく。こうした活動にはさらに積極的に取り組んでいきたいと思っています。
これまで「できている」と胸を張って言うことのできなかった行政との関わりも、今まで以上に密接にしていく必要があります。頻繁に言葉を交わし、地域活性化など共通の目的のために協働体制を築くことで、これまでできなかったことができるようになる。そのことが地域のためになるという視点を持つことは、クラブにとっても大きな変化につながります。
クラブとして地域に貢献し、地域から愛されることで地元企業や行政、地域の方々にも協力していただけるようになる。株主構成を含めて地元・福岡に支えていただける体制ができたことで、株主・スポンサー・行政の“どローカル”で足腰の強い体制を構築していきたいと考えています。
“自分たちなりの最速復帰”を目指す新たな道のり
経営状態の改善と同時並行で、クラブのガバナンス体制も見直す必要があります。すでに広く発信力のある堀江貴文氏、九州で強力なネットワークを持つ麻生健氏を取締役に迎えていますが、外部から取締役COOを採用する、或いは、今回株主となられた企業からの役員受け入れなども検討しています。
また、経営向上委員会(仮称)を結成し、役員・株主・その他さまざまな分野の有識者を巻き込むことで、より広い視点でのクラブ経営と、ガバナンス体制の強化が可能になります。多様な出自の役員、有識者による経営向上委員会を結成し、「クラブの見える化」を進めることで、開かれたライジングゼファーとしてリスタートを切ることが当面の目標になります。
肝心の予算については、まずは自力収入として見込まれる3億円をベースに算出しはじめています。全体予算が昨年から40%程度の大幅カットになるため、チームの強化体制は変化せざるを得ませんが、経験値の高い新GMを起用することで、“育成型”のチーム作りを行っていく方針です。
チーム強化、選手育成に関しても、これまで生かしきれていなかった「バスケ王国・福岡」のアドバンテージを大いに活用して、地元選手の起用、育成、真の意味での地域密着を重視したいと思っています。九州で野球をする選手たちがソフトバンクホークスを目指すように、福岡や九州で育ったバスケットボール選手がライジングゼファーでプレーすることを目指すことのできるようなクラブになっていければと思います。
中期的な目標としては当然のB1復帰を目指します。しかし、功を焦り、同じ過ちを繰り返してしまっては元も子もありません。急激な成長に伴う痛みを支えきれなかった過去の反省を糧に、まずは自力収入で5〜6億円を目指します。
連続優勝、最短昇格は確かに喜びに溢れていましたが、これまでは「競技力」と「経営力」に乖離があり、歪みを生んでいたのも事実です。収支と戦力、地域との関係性など様々な要因を分析しつつ、自分たちなりの最適な“最速”でB1復帰を目指すのが、リスタートを切るライジングゼファー福岡に与えられた新たな使命だと感じています。