メディカルテック企業のSCOグループとボルシア・ドルトムントの関係が新たな局面を迎えている。2025年9月に結ばれたパートナーシップを経て、本年2月、両者はさらに踏み込んだ「戦略的パートナーシップ」を締結。能登半島地震の復興支援プロジェクト、そして奈良県生駒市を拠点とする「IKOMA FC 奈良」との連携など、具体的な取り組みが動き始めた。
能登に灯される新たな希望
SCOグループとドルトムントが締結したパートナーシップは、連携の強化を加速させている。
象徴的な取り組みが、能登半島地震の被災地支援を目的に6月上旬に開催予定の小学生年代を対象としたサッカーイベントだ。SCOグループでプロジェクトを取り仕切る取締役の小出俊輔氏は、概要をこう説明する。
「戦略的パートナーシップの最初のプロジェクトとして私から真っ先に提案し、合意をいただいたのが能登の震災復興支援です。U-12のチームが10チームほど参加する大会を開催しつつ、試合のハーフタイムや各種イベントを通して、ドルトムント・サッカーアカデミーのメソッドを用いたクリニックを実施する計画です」(小出氏)
同社はもともとサッカーを通じた健康づくり、地域おこしなどに力を入れてきた。しかし能登でのプロジェクトは、従来の試みにも増して大きな意義を担っている。
「2024年1月の震災で子どもたちはサッカーをする場所や、場合によっては家や家族さえも失ってしまうという過酷な状況に直面しています。私たちとしてはスポーツの力で地域を元気づけたいという思いがありました。そこで今回、世界的なビッグクラブであるドルトムントに協力を仰いだのです。
今大会はSCOが協賛・オーガナイズを行い、ドルトムントがサッカークリニックを開催。会場運営は地元のJクラブに協力いただく予定です。試合運営はU-12の全国大会を主催し、3万人規模の小学生年代のネットワークを持つブルームビジョンさんに協力いただきます」(小出氏)
同社はこの取り組みを単なるスポーツ支援でなく、医療・スポーツ・教育を横断した次世代育成と、地域経済の活性化につなげようとしている。
ドルトムントのアカデミー部門でアジア責任者を務めるマリウス・ロレンツ氏も、並々ならぬ決意を示す。
「能登のプロジェクトについて伺った際、ドルトムントは即座に協力を決断しました。私たちには『Leuchte auf(ロイヒテ・アウフ:希望の光)』という名のプログラムがあり、社会貢献はクラブの根幹です。能登のような大きな悲劇に見舞われた地域に対して、サッカーを通じて貢献できるのは非常に光栄なことです」(ロレンツ氏)
ロレンツ氏によれば、今回のクリニックは参加する子どもの「内面」に働きかけるものだという。
「今回、ドルトムントのコーチを現地へ派遣してクリニックを開催しますが、その目的はサッカーを教えることだけではありません。大切なのはトレーニングが終わり、子どもたちに『楽しかった?』と聞いたとき、全員が『イエス』と答えてくれることです。
サッカーをする喜びや楽しさ、『もっとやってみたい』と思えるような内面的な動機付けが重要なのは、プロも子どもも変わりません。ましてや能登の子どもたちは大変な経験をしてきていますから、サッカーを通してポジティブになれることが重要です」(ロレンツ氏)
オーラルケアとサッカーの「さらなる融合」へ
被災地支援を目的とした今回の事業には、もうひとつの意味合いもある。それがSCOグループならではの活動、サッカーと連携した健康づくりの推進だ。
「今回のパートナーシップ強化のもう一つの柱がオーラルケアとサッカーの融合です。被災地では歯科医も不足しますし、歯を磨くといった日常の健康習慣がおざなりになりがちです。U-12の大会というのも、小学生年代がオーラルケアにとって非常に重要な時期という理由もあります。子どもたちだけでなく親御さんに対しても、オーラルケアの大切さを学べる場を作っていきたいと思います。
現在、ドルトムントとはのクラブのホームエリア周辺に、クラブとSCOのブランドを冠した共同のオーラルケアクリニックを設立するプランも協議しています。2年以内には具体化したいと考えていますが、これが実現すれば、我々にとってもグローバル展開の第一歩になります」(小出氏)
ロレンツ氏も、連携の強化と発展に期待を寄せる。
「オーラルケアとスポーツを組み合わせるというSCOグループのアプローチは非常にユニークです。ドイツでのクリニック開設については、ブループリント(青写真)をもとに協議を行なっています。
サッカー選手にとって歯の健康を保つことは、消化や栄養吸収なども含めた総合的なパフォーマンス向上にとって大切な要素です。同社の専門知識を活用すれば、ドイツの子どもたちや住民の健康レベルの向上にも寄与できるでしょう」(ロレンツ氏)
「IKOMA FC 奈良」との連携可能性も
能登における支援とともに具現化し始めたのが、奈良県生駒市を拠点とする「IKOMA FC 奈良」との連携だ。クラブは昨年12月、SCOグループが新たなオーナーに就任。元日本代表ストライカーの播戸竜二氏が代表取締役社長に就任し、新たな一歩を踏み出している。
これまでクラブはトップチーム主導型で運営されてきたため、アカデミー組織を有してこなかった。しかし地域社会と一体となった活動の展開、ひいては地域活性化や草の根レベルでのサッカー文化の醸成という観点から、ドルトムントとの連携を模索し始めている。
「IKOMA FC 奈良は『0から1』を作っていくフェーズです。アカデミーなどの組織整備や人格教育、地域活性化の視点でもドルトムントのアプローチを参考にし、独自のクラブカルチャーをつくることができるのではないかと期待しています。
ドルトムントは1909年にわずか18人の若者が集まってクラブが創設されたのが原点だと伺いました。地域密着型のクラブづくりが奏功し、いまや世界有数のビッグクラブへと成長しています。ドルトムントの力を借りて、生駒でも地域に根ざしたサッカー文化を育んでいきたいと考えています」(小出氏)
クラブ代表を務める播戸竜二氏が、ドルトムントとのパートナーシップに大きな期待を寄せていることは言うまでない。播戸氏は、次のように語る。
「(香川)真司がドルトムントに移籍して以来、ドルトムントというクラブはずっと見てきました。2014年には現地にも行き、どれほど地元の人々に愛されているクラブなのかを肌で感じました。IKOMA FC 奈良も、そうした『愛されるクラブ』を目指したいと思っています。
ドルトムントとの連携では、アカデミーからトップチーム、さらにはシニアレベルまでを視野に入れた、さまざまなことが実現できる可能性があります。IKOMA FC 奈良はJリーグを目指すのはもちろん、子どもたちの教育や引退後のセカンドキャリア、レジェンドの活用などのノウハウも学びながら、自分たちの形を作っていきたいと思っています」
深まる相互理解と加速するプロジェクト
具体的なプロジェクトが進むSCOグループとドルトムントのパートナーシップ。小出氏とマリウス氏は、この数カ月間でもさらに相互理解が深まっていると口を揃える。
「半年前にドルトムントを訪れてからより深く感じるようになったのは、彼らが『人間教育』の一環としてサッカーの指導を行っている点です。ボールの蹴り方だけを教えるのではなく、総合的に判断する力を養おうとする。こうした判断力は、将来子どもたちがどのような道に進むにせよ必ず必要になります。それもまたSCOグループがこのプロジェクトに挑む最大の意義であり、教育としてのスポーツを追求する理由です」(小出氏)
「日本の子どもたちは非常に技術が高く、ファーストタッチやドリブルの基礎がしっかりしていることに改めて驚きます。さらに『ゲームインテリジェンス』や、困難な状況を打破する『スマートなプレー』を学んでいけば、より大きく育つはず。もちろんドルトムントも日本人の謙虚さや規律、献身的な姿勢から学ぶべきことが多くあります。そういう意味でも、お互いに理解が深まってきているのを感じます」(マリウス氏)
今回、プロジェクトの協議のため来日したドルトムントのクラブアンバサダー、ヨルグ・ハインリヒ氏は、クラブにとっても自身にとっても、新たな幕開けになると総括してくれた。
「私は2012年からドルトムントのアンバサダーを務めていますが、UEFAプロライセンスを持つコーチとして欧州やアジアなど世界各地で子どもたちを指導してきました。指導というのは素質のある選手を見つけ出し、育成することだけが目的ではありません。サッカーを通して人間として成長する機会を提供することが何より重要なのです。
そうした意味で、能登や生駒での取り組みは多くの可能性を秘めています。私自身、日本の子どもたちに『ハードワークと献身によって夢は必ず叶えられる』というメッセージを伝えたい。私自身の体験やアイデアも共有しながら、多くの人に希望を届けることが自分の役割であり、今回のプロジェクトの根幹だと思っています」(ハインリヒ氏)
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