安全運転からEV・脱炭素のSDGsまで。日本郵便がオートバイレースを支援する理由

日本郵便は、2018年からHondaとの協業の一環でレーシングチーム「日本郵便 Honda Dream TP」をサポートして全日本ロードレース選手権に参戦している。オートバイレースチームをサポートするというと少し意外な気もするが、その背景には何があるのか? 日本郵便とチームに話を伺った。

5年前にさかのぼる、日本郵便とレーシングの出会い

日本郵便株式会社 人事部 部長 吉澤尚美さん

日本郵便がレーシングチームをサポートするようになるのには、どんなストーリーがあったのだろうか? 日本郵便 人事部の吉澤尚美さんはこう話す。

「Hondaレーシングとの連携のきっかけは、2016年に震度7を記録した熊本地震でした。Hondaの二輪車生産の中心地である熊本製作所も被災して、生産を休止する事態となりました。日本郵便が配達用に使っているバイクは約8万台あって、それがHonda製なんです。そこで、地震からの復興を祈念して、鈴鹿サーキットで行われる8耐(鈴鹿8時間耐久ロードレース)に参戦する『Honda熊本レーシング』へ協賛することになったんです」(吉澤さん)

そのレースでライダーとして走ったのが、現在日本郵便 Honda Dream TPで監督を務める手島雄介さんだ。

「当時からチームの監督として活動していましたが、特別な意味を持つ8耐ということで、その意義を理解している人に走ってもらいたいというHondaさんの意向もあり私が走ることになりました」(手島監督)

日本郵便 Honda Dream TP 手島雄介監督

郵便事業の要ともいえる配達用のバイクをつくるHondaと、被災した熊本を応援するということで、社員からはポジティブな反応が寄せられて来たという。

吉澤さんは「8耐で日本郵便のロゴが施されたマシンが走る姿を見て、社員からは『感動した!』という声が上がったんです。日本郵便は全国に郵便局がありますので、今度は全国のサーキットを全6戦で転戦する全日本ロードレース選手権に参戦しようということになりました。レース会場では、応援に訪れた社員に赤いTシャツを配って、一体感を持って応援しています」と、その手応えを語る。

レースで優勝すると、「日本一速い郵便屋さんが、ゴールしました!」と場内にアナウンスされるなどで盛り上がり、社員からは「民営化して以来、社員として一番ワクワクした」「ライダーへのサポートをずっと継続してほしい」という声が届いているという。

レース会場でサポートを続けてきた日本郵便人事部の片山智哉さんは、徐々に全国の社員に活動が知られていく実感を得ていると話す。

「1レースで、200〜300人の社員が応援に来てくれています。普段会うことのない社員同士が、同じライダーを応援することで横のつながりを感じることができるのは、とても貴重な機会です。サポート2年目の2019年にはシリーズチャンピオンを獲得することができて、全社的に認知が高まりました」(片山さん)

ライダーは、速く走るだけでなく安全に走るプロフェッショナル

日本郵便株式会社 人事部 専門役 片山 智哉さん

認知が上がったことで、各地から安全講習会などの講師としてライダーを招きたいという声がかかるようになったそうだ。

「手島さんたちには、当社の社員への安全講習にご協力いただいているんです。ライダースーツを着た日本のトップライダーが教えてくれたら、自然と参加者のモチベーションも上がりますよね。ライダーの皆さんはバイクの整備と安全に関してのプロフェッショナルですから、本当に学ぶところが多いんです」(片山さん)

日本郵便 Honda Dream TPでレースに参戦する小山知良選手。数々の実績を残してきた同選手は、自身のレースに対する信念には、安全走行という考え方にも共通するという。

「僕は『転ばない走り』を目指してきたんです。『レーサーは転んで成長する』なんていわれたりもしますが、僕はそうは思いません。『いけるだろう』で攻めるんじゃなくて、確信を得られるまで妥協なく突き詰めれば、転ばなくても速く走れるんです。安全に走り切ることが、レースの結果につながります」(小山選手)

日本郵便 Honda Dream TP 小山 知良選手

レース会場では、幼い頃からオートバイに乗る体験をすることで、安全に走ることを学ぶ目的で「ぽすくまの親子バイク教室」も行われている。

「ポケットバイクの試乗体験と、ポケットバイクにまたがる様子を写した記念写真で作ったオリジナル葉書を使った手紙ワークショップなどもしています。まさにオートバイと郵便局のコラボレーションですね。最近は本当に人気で、ありがたいことにすぐに、定員が埋まってしまうんです」(片山さん)

全日本ロードバイク選手権で2020年シーズンの年間チャンピオンに輝いた高橋裕紀選手も、バイク教室の重要性を感じているという。

「バイク教室をお手伝いさせていただいているんですが、5歳くらいの小さな子どもでも乗れちゃうんですよね。自転車に乗れるようになる前に、ポケットバイクに乗れる子もいます。郵便屋さんに親しみを持ってくれている子どももいて、未来のために安全を伝えるのが僕たちの役目だと思っています」(高橋選手)

子ども用のポケットバイク。「未来のために安全を伝えるのが僕たちの役目」と高橋選手

「どのサーキットにいっても応援してもらえる」

日本郵便の社員からのメッセージボードを見せてくれた高橋選手。笑みがこぼれる

新型コロナウイルス感染拡大で多くのイベントが影響を受けたが、今後も日本郵便はレース活動を支援していく予定だ。より多くの社員とお客様に活動の主旨を理解してもらえるように、サポートを続けていく。日本郵便人事部の相坂宗毅さんは、活動が実を結びつつあるのを実感しているそうだ。

「会場の雰囲気に圧倒されてレースにハマる人もいますね。スタート前の静寂と緊張感、そこから爆音で走り出すバイク。非日常感を存分に味わえるんです。レースを重ねるにつれて、サーキットに日本郵便のロゴがあることも馴染んできましたね。ありがたいことに、日本郵便のチームで走りたいと言ってくださる若手ライダーもいるようで、続けてきてよかったなと感じています」(相坂さん)

実際にレースを走るライダーとして、小山選手は全国に展開している日本郵便ならではの存在に背中を押されているという。

「レースはチームみんなで挑むものですが、実際にスタートするとライダーは孤独です。日本郵便は全国に郵便局があるので、どのサーキットにいっても応援してもらえるんですよね。レースでは、バイクのセッティングも自分のコンディションも万全なことの方が少なくて、苦しいときの応援は本当に力になります。それを受けて僕ががんばって走る姿をお見せすることで、感動と笑顔をお返ししたいです」(小山選手)

同じ哲学を持って社会課題の解決に挑む

日本郵便 人事部 主任 相坂宗毅さん

最後に、日本郵便がレース活動をサポートし続ける、その先にある目標を聞いてみた。

「今年は社員向けだけですが、レースの模様を動画サイトで公開しました。普段は見ることのできない、ピット内の様子などが盛り込まれています。ゆくゆくは、一般にも公開できればと考えています。コロナ禍でなかなか会場に行けない社員も多かったので、選手への寄せ書きを送ってくれる郵便局もあって、ピットに飾ってレースをしました。将来的には、チームのTシャツを着た社員が、スタンド一体を真っ赤に染めてくれたらいいですね。新型コロナが収まって、そんな日が来ることを願っています」(相坂さん)

将来的にはEV(電動バイク)化が進むと予測されているなかで、レースチーム、バイクメーカー、そして多くのバイクを使うユーザー代表としての日本郵便がタッグを組むことに、大きな意義がある。

「事故ゼロ、カーボンニュートラルやSDGsなど、社会課題に一緒に取り組んでいきたいと思います。すでに一部の郵便局に試験的にEVを導入していますし、他にはチームと一緒に、EVの燃費レースなども開催していきたいと思っています。レースから拡がって、同じ哲学を持って課題解決に進んでいければいいですね」(吉澤さん)

「私は、『モータースポーツを国技に!』と思ってチーム活動をしています。それは、バイクもクルマも戦後の日本を支えてきた産業なので、それを使ったスポーツをもっと盛んにしたいということなんです。そこには“つくる人”と“使う人”という役割分担があって、同じバイクを扱うプロ同士が共感し合って取り組めるのはいいことですね。私たちは、事故ゼロに少しでも貢献して、日本郵便の社員さんとそのご家族の笑顔を守るためにもがんばりたいと思います」(手島監督)

モータースポーツというスポーツエンターテインメントの力を借り、多くの人を巻き込みながら、安全や安心に取り組んでいく。そして、レースから社会問題までがつながり、大きなうねりになって社会を動かしていく。日本郵便 Honda Dream TPとして、企業とレーシングチームがそれぞれの得意を活かして、これからも新しい世界を見せてくれるだろう。

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JP CAST