スポーツ大国アメリカのファンが熱狂!日本発スポーツギフティング「エンゲート」が海外展開

日本最大級のスポーツギフティングサービス「エンゲート」が、アメリカのスポーツファンの心をつかんでいる。2024年12月、ハワイ大学のバスケットボールの試合で実施した「ギフティングタイム」が大盛況を博し、海外のチームからの問い合わせが相次いでいる。なぜエンゲートはスポーツ大国アメリカで順調なスタートを切れたのか?エンゲート株式会社 代表取締役の城戸幸一郎氏に話を聞いた。(初出=JSPIN

エンゲートは「スポーツ界の“推し活サービス”」

「我々のサービスは、スポーツ界最大の“推し活サービス”といえます。ファンの方々が応援するアスリートとつながって、喜んでいただけているのが非常にうれしい」

エンゲート株式会社 代表取締役の城戸幸一郎氏は、同社が提供するスポーツギフティングサービス「エンゲート」についてそう語る。

スポーツギフティングは、ファンがポイントを購入することで応援したい選手やチームを支援できる仕組みだ。購入されたポイントは選手やチームに”ギフト”として贈られ、その贈られたポイントに応じて選手・チームは金銭を得られる。

これまでスポーツ界では、“推し”の選手を応援したいと考えた場合、所属チームのチケットやグッズを購入する、ファンクラブに入会するといった方法が一般的だった。

だがエンゲートの場合、同サービスのサイト内でポイントを使ってデジタルギフトを購入し、応援のメッセージとともに選手を支援することができるのが新しい点だ。スマホがあれば、24時間365日、どこからでも、少額から気軽に応援できる。

エンゲートには様々なチームが参加している。画像=エンゲートWebサイトより

応援したチームや選手からお礼のメッセージが返ってくることもあり、特別なイベントの場合にはサイン入りユニフォームなどの限定グッズや、選手からのメッセージ動画、選手との交流といった特別なお返し(リワード)を受けることもできる。

例えば国内プロ野球チームでは、“推し”の所属選手の誕生月に、ファンが一定額以上のギフティングをすると、その選手が選んだ花束がそのファンの自宅に届くという企画が人気だ。城戸氏も、「これまでのような一方的な支援ではなく、双方向性のあるコミュニケーションで、これまでにない新しい体験を味わえるのが、エンゲートがファンから支持される大きな理由」だと語る。

現在国内を中心に約150チームがエンゲートを導入している。ファンエンゲージメントを高め、新たな収益源を生み出すことができるとあり、スポーツ界からの注目度は日増しに高まっている。

アメリカで大盛況を博した「ギフティングタイム」

昨年12月、アメリカで人気の高い大学バスケットボールの公式戦において、ハワイ大学と連携して海外で初めてのイベント企画を実施した。

試合前、第1・第2クオーター間、第2・第3クオーター間の計3回、アリーナの中央に設置された大型ビジョンに「GIFTING TIME(ギフティングタイム)」と映し出されると、アリーナに詰め掛けた数多くのファンが一斉にスマホを使ってギフティングを始めた。

ビジョンにはギフティングしたユーザーの顔写真とデジタル花火が次々と打ち上げられ、そのたび会場のボルテージが上がっていった。

ファンはスマホひとつでギフティングができる。写真提供=エンゲート

「想像していた以上に良い結果だった」と城戸氏が振り返るように、日本国内で導入済みの約150チームと比較してもトップクラスの金額がギフティングされた。この様子は地元テレビ局にも取り上げられ、「他に複数の大学やCFL(カナディアン・フットボール・リーグ)のプロチームからも導入したいという問い合わせがあった」(城戸氏)というほどに大きなインパクトを残した。

城戸氏は「確かな手応えをつかんだ」と口にすると同時に、「まだまだ伸びる余地がある」とも話す。

日本ではギフティングの対象にチームと所属選手をそれぞれ選ぶことができるが、ハワイ大学との取り組みでは今のところチームしか選ぶことができない。エンゲート全体では選手に対するギフティングが約8割というデータを踏まえると、選手へのギフティングが選べるようになれば、さらに数字が伸びていくと予想される。

ハワイ大学当局の期待も高く、今シーズンはバスケットボールに加え、アメリカンフットボール、バレーボール、野球など15~20試合でエンゲートを導入・実施予定だ。

エンゲートが初の海外展開で成功を収めた2つの理由

なぜ初めての海外展開でこれほどの成功を収めることができたのか。大きく2つのポイントが挙げられる。

1つ目は「選択と集中」だ。

エンゲートでは今回の海外展開に先駆けて「かなりの時間をかけてアメリカのスポーツファンにユーザーインタビューを行った」(城戸氏)という。エンゲートのサービスをどう感じるか、普段応援しているチームやアスリートにどんな支援をしているのかをリサーチした。

「こんなサービスは見たことがない」「これまでたくさん寄付してきたが、直接選手を支援できるのは非常にユニークだ」といった声が聞かれる中、95%の人が口にしたのが、「ギフティングタイムは絶対にやってみたい」という回答だった。

上述のように、エンゲートのサービスは“24時間365日”どこからでも”支援できるのが特徴だ。だがアメリカ進出においては、“試合開催日”に“試合会場”でのみ参加できるギフティングタイムにフォーカスすると決めた。

「ユーザーインタビューで浮かび上がってきたのは、日本で展開してきたサービスや実績を全部伝えても、なかなか刺さらないということです。アメリカ展開にあたっては、アメリカで一番刺さるサービスに絞って押し出した方がいい。(試合会場で行われる)ギフティングタイムを突破口にしながら、ゆくゆくは他の機能も使ってもらえるような戦略を考えています」(城戸氏)

2つ目は「ローカライゼーション」だ。

日本でも様々な試合でギフティングタイムは実施してきたが、アメリカ向けにアレンジを施した。ギフティングしたユーザーの顔写真をビジョンに映し出し、さらに高額のギフティングをした場合は顔写真とデジタル花火のサイズをより大きくした。

「アメリカは寄付文化が根付いていますし、自分がどれだけ貢献しているかを表に出すという国民性もあります。ギフティングを楽しみながら、周囲の人にも知ってもらえるという点が、特に好評を得た印象です」(城戸氏)

エンゲート株式会社 代表取締役 城戸幸一郎氏。写真提供=エンゲート

学生アスリートのマネタイズ「日本にも波」

アメリカの大学スポーツは、競技レベル、人気、経済規模などあらゆる面において、日本の大学スポーツとは比べものにならないほど先を進んでいる。

そのアメリカでは3年前、学生アスリートが自身のNIL(Name:氏名、Image:画像・映像、Likeness:肖像)を活用して収入を得ることが州によって認められ始めた。当然、学生アスリートがエンゲートを活用して収益をあげることもできる。大学スポーツの在り方が大きく変わる可能性がある。

日本では、現在もNILの収益化に関する明確な制度は確立されていないが、ファンが学生アスリートを直接支援できる仕組みへの関心は高まりつつある。「この流れは、いずれ日本にも本格的に訪れる」と城戸氏は予測する。アメリカでの経験や知見は、日本の大学スポーツの変革にも大きく貢献するだろう。

その先に見据えるのは、米国の4大プロスポーツだ。城戸氏の構想は膨らむ。

「MLBには大谷翔平選手をはじめ多くの日本人選手が活躍していますし、NBAでは河村勇輝選手が活躍し始めています。ただ現状では海外に活躍の場を移した選手に直接応援を届けることは難しい。ゆくゆくは日本のファンからも国境を越えて支援できるクロスボーダーギフティングを実現できるよう進化させたい」(城戸氏)

2023年11月、大谷翔平選手は「野球しようぜ!」のメッセージとともに全国の小学校にグローブを寄贈した。このグローブに触れたことをきっかけに野球を始めた子どももいるだろう。アスリートが子どもに与える影響は計り知れないほどに大きい。

ファンがギフティングをし、アスリートがその収益を次世代の子どもたちに還元する。それによって新たなアスリートが生まれ育ち、多くの人々を惹き付ける――。エンゲートを通じて、今後、そんな好循環が生まれることも夢ではない。

「スポーツを続けるには少なからずお金がかかります。才能もやる気もあるのに、経済的な環境で、自分の夢を追えるのか、それとも諦めるのかが決まってしまう。世界中の誰もが自分の才能を信じ、夢を諦めることなくアスリートになりたいという夢を実現できる。そんな世界をつくっていきたいですね」(城戸氏)

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