千葉ジェッツ新ホームアリーナがファンを魅了する秘密とは?MIXIが手掛ける「熱狂体験」の裏側

バスケ日本代表にも選出された富樫勇樹や渡邊雄太らを擁し、Bリーグ屈指の人気を誇る千葉ジェッツ。今シーズンから「LaLa arena TOKYO-BAY(ららアリーナ 東京ベイ)」を新たなホームアリーナとし、平均観客動員数は前年比で2倍となる1万人超えを記録している。大盛況の一端を担うのは、2019年にグループに入り、ともに歩む株式会社MIXIの存在だ。観客を魅了する「熱狂体験」はいかにして生み出されているのか?取り組みの裏側に迫る。(全2回の1回目/後編へ続く)

MIXIが大切にする「コミュニケーションの創造」

2024年10月5日、この日は千葉ジェッツの歴史に残る一日となった。

チケット完売で迎えた2024-25シーズンの開幕戦。新ホームアリーナのLaLa arena TOKYO-BAY(ららアリーナ 東京ベイ)は、興奮と熱気に包まれた。真っ赤に染められたスタンド、洗練されたムービー、迫力ある音響と噴き出す炎、そして延長戦の末につかみ取った劇的な勝利――。会場の観客は極上のエンターテインメントに酔いしれた。

LaLa arena TOKYO-BAYでの開幕戦の様子。©CHIBAJETS FUNABASHI

こうした千葉ジェッツのホームゲームの会場演出を支援しているのが、株式会社MIXIだ。2019年に千葉ジェッツ、2022年にFC東京の経営権を取得するなど、近年スポーツビジネスに注力している。

MIXIは創業以来、“コミュニケーション”を大切にしている。SNSの「mixi」や「mixi2」、スマホゲーム「モンスターストライク(以下、モンスト)」、子どもの写真・動画共有アプリ「家族アルバム みてね」など、家族や友人と一緒に盛り上がることのできるコミュニケーションサービスを数多く提供してきた。

同じチームを応援する仲間たちと共にひとつのプレーに一喜一憂し、勝利の歓喜を分かち合う。そんな唯一無二のコミュニケーションを生み出すスポーツに事業として進出したのは、必然だといえる。

そんなMIXIの理念を体現する施設を目指して、LaLa arena TOKYO-BAYはつくられたのだ。

アリーナで目指す「心躍る熱狂体験」

「試合を見るだけではなく、その日一日をどう楽しんでもらうか。興行全体をひとつのエンタメとして体験価値を高めていくことを目指したい」。そう話すのは、MIXIでデザインチームをリードし、クリエイティブを通して千葉ジェッツに関わる越智純平氏だ。

株式会社MIXI デザイン本部 動画クリエイティブ室 室長 越智純平氏

以前のホームアリーナだった船橋アリーナと比べると、約423インチのセンタービジョンや最先端の音響など設備面は格段に充実している。バスケットボール観戦の体験価値を高めるこれ以上ない好機だ。

千葉ジェッツのブースター(※バスケットボールのファンを表す名称)が根源的に求めているものは何か?そして、千葉ジェッツがブースターに提供すべきものは何なのか?

この問いを徹底的に突き詰めて生まれたのが、「心躍る熱狂体験」というコンセプトだ。

「千葉ジェッツのブースターの“熱狂”はBリーグ随一。どんな観戦体験を創り出すかを考えるうえで、“熱狂”という言葉を切り離すことはできない」と話すのは、MIXIから現在千葉ジェッツに出向し、会場演出を含めビジュアルコミュニケーションやグッズ、ユニフォームなどあらゆるクリエイティブを手掛ける新井匠氏。

「ジェッツに携わる前、いちブースターとして(旧ホームアリーナの)船橋アリーナで観戦していたときから感じていたのは、ジェッツの会場演出は本当に素晴らしいということです。そのうえで、新アリーナでハード面が大きく進化する中で、熱狂体験も高めていきたいと考えました」(新井氏)

株式会社MIXI ライブエクスペリエンス事業本部 バスケットボール事業部 マーケティンググループ 新井 匠氏

例えば、試合1時間前に展開される千葉ジェッツ伝統の「オープニングフライト」は必見だ。充実した設備により視覚と聴覚を刺激され、相乗効果が倍増し、洗練されたムービーと計算されたタイムラインで、試合開始に向けて徐々に高まる興奮が演出されている。

©CHIBAJETS FUNABASHI

「“観る”から“体感する”へ」 参加型の演出を追求

とはいえ、越智氏も新井氏もハード面に頼り切ることは考えていない。ハード面に依存すると、お金をかけて設備を良くすることでしか観戦体験を進化させられなくなる。「だからこそ知恵を絞ってソフト面で勝負することが大事」と越智氏は言う。

では具体的にどんな会場演出を考えるのか。キーワードは、「“観る”から“体感する”へ」だ。

「以前モンストのイベントを手掛けたとき、ゲストがクイズに答えるのを見るだけよりも、自分もクイズに参加できてランキングを見ることのできる方が満足度が高かった。そういう経験もあり、参加型のコンテンツを増やそうと考えたのです」(越智氏)

その一つが「BOOSTER’S CAM」だ。来場者が自身のスマホで撮影したライブ動画が、クラウドを通じてコート上のセンタービジョンに映し出されるという施策。運営側が撮影するのではなく、観客が自らの意思で参加するという点で最初はハードルの高い企画だったが、今では家族で一緒に映ったり、推しの選手をアピールしたりと積極的に参加する人が増えている。

BOOSTER’S CAMのイメージ

「ドリームシュートチャレンジ」も好評を博している。制限時間内にフリースロー、スリーポイントシュート、ハーフコートシュートを成功させると賞金を獲得できるもので、参加者だけでなく見る人も一緒に盛り上がるプログラムとなっている。

NBAで見た、忘れられない光景

シーズンが開幕して半年ほどが経った。LaLa arena TOKYO-BAYでは旧ホームアリーナから2倍以上の収容人数となったにもかかわらず、ほぼ毎試合チケットが完売となる盛況ぶりを見せている。平均観客動員数は1万人を超え、ダントツのリーグトップだ。

越智氏は「MIXIの強みも十分に活かせている」と手応えを感じている。

「MIXIにはクリエイティブ、デザイン、開発のチームがそれぞれあるので、自社内でコンテンツを創り出すことができます。例えばBOOSTER’S CAMも、社内に開発チームがあったからこそ短い準備期間で実装まで持っていくことができたのです」(越智氏)

それでも二人は「まだまだ満足していない」と口をそろえる。

ブースターの楽しみ方は実に多様だ。全ての人を満足させるのは容易なことではない。

「だから僕らにできることは、ジェッツを好きになってもらえるように、とにかく強い意思を持って作り続けること」と新井氏が言えば、「さまざまな入り口を用意することで、バスケットボールに興味のない人にも届くようになる」と越智氏も続ける。

だが二人に共通する思いは、「あくまで試合がメインディッシュ」ということだ。「入り口は多様にあっていい。でもそこから試合にのめり込んでいくようになるのがベスト」(越智氏)。

二人には忘れられない情景がある。

NBAの試合を視察に行ったときのことだ。熱狂的に応援する人もいれば、隣の人とずっとおしゃべりをしている人や、ほとんど席にいない人もいた。試合の楽しみ方は実に多様だった。

だが試合も終盤に近づくと、観客がアリーナに集まり始め、自然と全員が立ち上がって声援を送り出す。その一体感は、日本では見たことがないものだった。「観客から自発的に熱狂が生まれていく。あれこそ『心躍る熱狂体験』の理想といえるものでした」(新井氏)。

何年後になるかは分からない。だがあの場所で見た景色を、いつか、LaLa arena TOKYO-BAYでも見てみたい。そのために、クリエイティブの力で何ができるのか――。千葉ジェッツとMIXIの挑戦は始まったばかりだ。

後編では、好調な観客動員にも貢献している、千葉ジェッツの「公式YouTubeチャンネル」の裏側について伺います。

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