「アジア太平洋地域から世界へと羽ばたく選手を育てる」をミッションに掲げて2018年に創設されたジュニアテニスの国際大会がある。テニスブランドDUNLOPを展開する住友ゴム工業が主催する「Road to the AO」は、今や世界中が注目する伊藤あおいをはじめ、トップレベルの舞台で活躍するプロ選手を幾人も輩出してきた。次に見据えるのは「競技大会の枠を超えたプラットフォーム化」だという。同社にその構想を聞いた。
【あわせて読みたい】「へにょへにょテニス」旋風の伊藤あおい、大躍進の土台を作ったのは?DUNLOPが描く“アジア太平洋から世界へ”の道程
「アジア太平洋から世界へ」ジュニア大会で選手を育成
「この大会から羽ばたいていった選手たちの活躍を見るのは、子どもの成長を見守る親心のような気持ちですね」
毎年、三重県四日市市で開催されるジュニアテニス大会、「DUNLOP ROAD TO THE AUSTRALIAN OPEN JUNIOR SERIES IN YOKKAICHI」(略称:Road to the AO)のトーナメントディレクターを務める住友ゴム工業株式会社の鈴木文哉氏は、優しくほほ笑みながらそう語る。
アジア太平洋地域はジュニア国際大会の開催数が少なく、海外選手との対戦経験を積む機会が限られており、世界で活躍するための土台づくりが難しいという課題がある。そこで、全豪オープンの公式パートナーである住友ゴム工業は2018年に同大会を創設することで、アジア太平洋地域におけるジュニア選手の競技力の向上を図っている。

“世界で活躍するための舞台”の最たる例が、大会優勝者への全豪オープンジュニア本戦ワイルドカードの贈呈だ。鈴木氏は「全豪オープンジュニアに出場した選手は意識も行動も大きく変わる」といい、「選手として成長する上で環境と経験がいかに大切かを実感した」とうなずく。
Road to the AOは過去7年で大きく成長してきた。17歳以下の日本およびアジア太平洋地域の男女各16名が出場する「国際大会」に加え、現在では17歳以下の日本人選手男女各16名が出場する「国内大会」、13歳以下の日本人選手男女各16名が出場する「U-13大会」の3カテゴリーを実施。出場選手数も創設時の18名から96名へと5倍以上に拡大している。
Road to the AOならではの価値を提供
今年からの新たな取り組みとして、元プロテニスプレーヤーでDUNLOPテニスのアドバイザーである土居美咲さん、奈良くるみさんが大会期間中に出場選手向けにクリニックを実施する。
それぞれ世界ランク自己最高30位、32位と日本が誇る元トッププレーヤーの指導は、テニスの技術はもちろん、プロとしての心構えやメンタリティーから普段の生活の過ごし方まで「ジュニア選手にとって貴重な学びとなる」(鈴木氏)。

またオーストラリアテニス協会による、選手とそのコーチを対象とした座学・オンコートのセッションも実施される。座学はテニス用具とパフォーマンス、怪我のリスクなどをテーマとし、プレースタイルや力量にあった用具選びを専門家から学ぶ。オンコートセッションでは昨今様々なスポーツで取り入れられている「制約主導型アプローチ(Constraints-Led Approach: CLA)」を通したトレーニングデザイン等を取り扱う。
選手にとってもコーチにとっても、世界基準のトレーニング・育成メソッドに触れることで、日々の練習やその指導に新たな視点やアプローチを取り入れるきっかけとなり、アジア太平洋地域全体の競技力・育成力向上にもつながると期待される。
さらに来年以降、米国の大学コーチを招聘し、ジュニア選手にとっては大学進学、大学にとってはリクルート活動につながる機会の創出も検討しているという。「将来のキャリアを考えるにあたって、(高卒ですぐ)プロになる以外に海外の大学に進学するという選択肢もある。選手の未来を広げるきっかけとなるよう、今後も多面的な展開を進めたい」(鈴木氏)。
見据える、競技大会の枠を超えた「プラットフォーム化」
Road to the AOで近年キーワードになっているのが「プラットフォームとしての新たな価値創出」だ。
選手に国際試合をする環境と経験の場を提供するのは前提として、単に試合に出場するだけでなく、Road to the AOでしか得られない体験づくりを目指す。鈴木氏はさらに、「選手だけでなくさまざまな方々にプラットフォームとして価値提供できるような仕組みをつくっていきたい」と未来図を描く。
具体的な取り組みとして今年始めたのが、DUNLOPと同じく全豪オープンやATPツアーの公式パートナーであるwaterdropとのコラボレーションだ。

waterdropは欧米豪で人気急上昇している水分補給ブランドで、飲料の新たな選択肢としてサステナブルな方法で手軽にフレーバーウォーターを作れるキューブやオリジナルボトルを展開している。大会を通じて、製品をジュニア選手に手に取ってもらう機会が設けられる予定だ。
来年以降は他にも大会を通じてさまざまな企業・ブランドとコラボレーションしながら、サステナビリティーの推進や地域・社会課題の解決など、企業間連携や社会価値の創出を促進していく。
「Road to the AOは創設から8年目となり、多くの方々のご協力でここまで順調に発展してきました。これからはさらに、共催の日本テニス協会(JTA)や開催に協力をいただくオーストラリアテニス協会といったテニスやスポーツ関係者、開催地の四日市市とその地域住民の方々、そして全豪オープンのパートナーをはじめとした企業各社など、大会に関わる全ての方々にメリットを生み出していきたい」(鈴木氏)
視聴者・来場者の体験価値創出も
今後は、より多くの人たちが観戦を楽しめる大会にもしていきたいという。そのために力を入れているのが、観戦・視聴体験の向上だ。
昨年からは、国内最大のテニスレッスン系YouTubeチャンネル「スターテニスアカデミー(スタテニ)」とタッグを組んで一部試合のライブ配信を行っており、今年はチャンネルMCの日本テニス界のレジェンド・鈴木貴男さんに加え、前出の土居さん・奈良さんもゲストとして出演する。
これまでもDUNLOP公式YouTubeチャンネルでライブ配信を行ってはいたが、初めてスタテニと手を組んだ昨年大会は視聴回数がこれまでに比べ約10倍と大幅に増加。「今後も配信の魅力をさらに高め、より多くの人に大会の存在や意義を知ってもらいたい」(鈴木氏)。

現地では、今年、日本車いすテニス協会と連携して体験イベントを実施する予定だ。同社はこれまでも車いすテニスへの取り組みを行っており、2009年から冠スポンサーとして特別協賛する「DUNLOP KOBE OPEN」は海外の出場選手からも人気が高い。「Road to the AOが車いすテニスに触れて、始めるきっかけになればうれしい」と、鈴木氏。
来年以降は、一般来場者へのテニスレッスンや体験イベントを実施することも検討しているという。今年は土居さん・奈良さんのクリニックは出場選手に限られているが、地域や一般の人々にひらかれる可能性もある。
大会をハブとして、スポーツの可能性を広げる
今年で8回目を迎え、大会への選手エントリー数は右肩上がりで、出場選手の国・地域は大きく広がりを見せている。コロナ禍という危機を挟みながらも、「アジア太平洋地域の次世代育成」という理念が着実に浸透し、大会の認知度が高まってきている証左だといえる。
だがそれでも鈴木氏はまったく満足していないという。
「選手向けにはさまざまな取り組みが始まっていますが、一般来場者の集客や観戦体験の向上はまだまだです。大会が進化していくチャンスだと捉え、今年の大会を『プラットフォーム化の第一歩』と位置付けて、多くの人たちを巻き込んでいきながらスポーツの可能性をさらに広げていきたいですね」(鈴木氏)
単なる競技大会の枠を超えて、新たな価値を創出する。それがやがて、社会を変え、未来を変えると信じて――。壮大な夢に向かって、DUNLOPはこれからも走り続ける。
INFORMATION
進化を続けるジュニアテニス大会「Road to the AO」が、今年も三重県四日市市で開催!全豪オーブンジュニアの切符をかけた熱い戦いが繰り広げられます。
国内大会/U-13大会:2025年11月4日(火)〜8日(土)
国際大会:2025年11月10日(月)~14日(金)
会場:四日市テニスセンター(三重県四日市市)
※入場/観戦無料。大会詳細は〈公式サイト〉からご確認ください。
Sponsored:住友ゴム工業
