スカイライト コンサルティング株式会社が、スポーツビジネス界で存在感を高めている。中央競技団体へのコンサルティングのほか、スポーツテックのスタートアップへの投資やブラジルでプロサッカー選手の育成を目的としたアカデミー経営も手掛けるなど、一般的なコンサルティング会社の域を超える取り組みが目立つ。スカイライト コンサルティングはスポーツビジネスで何を成し遂げようとしているのか。その矜持を聞いた。
コンサルの枠を超える、スカイライトのスポーツビジネス
「スポーツには感動するシーンもあれば、共感するシーンもある。やる楽しみ、応援する楽しみ、運営する楽しみがある。そういうパワーを高めていくためには、ビジネスとして回していくことが必要になる。それが、スカイライト コンサルティングがスポーツ事業に取り組み始めた理由です」
近年、スポーツビジネス界で唯一無二の存在感を示すスカイライト コンサルティング株式会社の代表取締役、羽物俊樹氏はそう語る。
2000年に設立された同社はその名の通り、経営コンサルティングをなりわいとする会社だ。一般的にコンサルティング会社といえば、クライアント企業が抱える経営課題に対して解決策を提供するなどの支援を行う。実際スポーツ界でも多くのコンサルティング会社がリーグやクラブのパートナー企業として支援を行っている。
だがスカイライトの場合、そうした既存のコンサルティングにとどまらない。イノベーションを実現させるために、スタートアップを支援したり自社で新たに事業を立ち上げるなど、コンサルティングの枠を超えた取り組みに挑んでいる。
ブラジルで挑む、プロサッカー選手育成アカデミーの運営
スカイライトのスポーツ事業で最もユニークなのは、ブラジルでのプロサッカー選手育成アカデミー事業だ。
元ブラジル代表でFIFAワールドカップ日韓大会の優勝メンバーであるエジミウソン氏とスカイライトによる共同出資で2019年に設立されたFC SKA Brasilは、サンパウロ郊外のサンタナ・デ・パルナイーバを本拠地として運営されている。
その特徴について、スカイライトで同事業を担当する宮下和之氏は「トップチームを持たない育成に特化したクラブ」で、「ブラジル国内はもとより、欧州やアジアなど世界中のクラブで活躍するプロサッカー選手を輩出することが目的」と話す。
きっかけはエジミウソン氏が母国の育成環境に抱いた危機感だ。選手移籍のさらなる若年化が進んだ結果、ブラジルでは「育成というよりも、才能の発掘と輩出ばかりに傾倒するようになった」(宮下氏)という。
「エジミウソンがよく言うことに、『才能はあっても、人間性が伴わない選手は成功しない』と。だから技術だけでなく人間的にも優れた選手を育成していくことを、自分でやりたいと考えたようです」(宮下氏)
だがエジミウソン氏から「一緒にやらないか」と提案されたとき、羽物氏は率直に「サッカー王国のブラジルで日本人が育成なんてできるわけがない」と感じたという。だが実際に地球の裏側で目にしたのは、育成で有名だったチームの選手寮が廃墟のように朽ち果てるなど、短期的な視点に基づき育成環境が悪化している状況だった。
「我々には経営面でチームを支える知見があります。ただ、チームを強くするには、経営面と競技面の両輪が必要です。選手育成という競技面に関わることは、スポーツビジネスに携わる者として大きなプラスになると考えるようになりました」(羽物氏)
成果は表れ始めている。昨年はU-17ブラジル代表を輩出し、これまでに約40名の選手がブラジルのビッグクラブを中心に活躍の場を移した。黒字化も見えてきた。宮下氏は「自分たちが育てた選手がUEFAチャンピオンズリーグの試合で活躍する姿を見てみたいですね」と意気込む。
スポーツテックのスタートアップに投資、共に成長を実現
スカイライトではスポーツテック領域のスタートアップへの投資も積極的に行っている。
もともとスカイライトでは事業の一つとしてスタートアップに投資している。同事業を担当する戸田哲氏はその特徴に「長期的」「伴走型」を挙げる。
「短期的な視野で見ると、その企業が本当に求めているサポートや成長を阻害している要因にまで目が届かなくなることがあります。資金による支援だけでなく人材の派遣も含め、たとえ遠回りしても、一緒に成長を実現することを目指しています」(戸田氏)
スカイライトが出資・経営参加するスタートアップの一つが、スポーツ向け動画検索・分析サービスを提供するRUN.EDGE株式会社だ。2018年に富士通株式会社の社内ベンチャーを会社分割する時から支援を続けている。
野球向けの『PITCHBASE(ピッチベース)』はNPBならびにMLBにおいて多くの球団に利用され、サッカー・バスケットボール等のフィールドスポーツ向けの『FL-UX(フラックス)』は、JリーグやBリーグをはじめとした国内外のプロ・アマ200チーム以上が導入しており、戸田氏も「順調に成長している」と期待を寄せる。
選手とクラブのオンラインマッチングアプリ『DSFootball』を運営する株式会社dreamstockもスカイライトが出資するスタートアップだ。
自分のプレー動画をアップロードすることでdreamstockが提携するクラブのセレクションに参加できるほか、プロ選手向けには欧州やJリーグなどへの国際移籍をサポートするサービスを展開し、ブラジル人選手を中心に90万人もの選手が登録している。「今までになかった非常にユニークなサービスで今後の成長が楽しみ」(戸田氏)だという。
スタートアップへの投資は、スカイライトにとってどのような意義があるのか。
リターンを得ることは大前提とした上で、戸田氏は「スポーツ産業に新しい価値を生み出す」ことだと話す。スポーツテックの発達はスポーツの魅力をさらに高めることにつながる。スポーツ界を産業として成長させることはスカイライトにとって重要なミッションの一つだ。
「今後は海外でもスタートアップを発掘して、大きく育てていくことができれば面白いですね」(戸田氏)
ブラインドサッカーで社会課題を解決に導くオープンイノベーション支援
クライアント企業の経営課題を解決に導く、いわゆるコンサルティング業務も行っている。日本ブラインドサッカー協会(JBFA)の支援プロジェクトもその一つだ。JBFAが掲げる、「ブラインドサッカー(※1)を通じて、視覚障がい者と健常者が当たり前に混ざり合う社会を実現する」というビジョンの実現に向けたサポートをしている。
具体的な支援プロジェクトの一つが、「サクセッション」だ。JBFAはこれまで競技面だけでなく、ブラインドサッカーの特性を生かした『OFF T!ME』や『スポ育』といった事業(※2)面でも成長を遂げてきた。一方、組織の規模が大きくなっており、組織運営は次のフェーズに入っている。
スカイライトでJBFA向け支援を担当する井川朋久氏は、「組織運営においていかに次の経営を担う人材を育て、つないでいくかが課題」と話す。「さらなる成長曲線を描くため、次の経営を担う人材と共に中期経営計画を立案し、その実行を支えていくのが我々の大きな使命です」(井川氏)
もう一つのプロジェクトが「オープンイノベーション」だ。視覚障がいにおける社会課題を解決するための新しいサービスを生み出す仕組みづくりを目指している。「さまざまな企業、大学、自治体等と視覚障がいのある人が交流し、知見を交換し合いながら、これまでにない新しいサービスを生み出す。そうしたオープンイノベーションを促進させる“ハブ”となる機能をつくろうと支援しています」(井川氏)
昨年ブラインドサッカー男子日本代表は、初めて自力でパラリンピックの出場権を獲得した。
「パリパラリンピックでは、日本代表の選手たちが世界の強豪とひたむきに戦っている姿を見たいですね。その中で良い結果に終わることができれば、ブラインドサッカーに携わる方々にとっての夢の実現につながっていくんじゃないかと願っています」(井川氏)
※1:ブラインドサッカーは視覚障がいのある選手が行う5人制のサッカーで、パラリンピックの正式種目に採用されている。
※2:「OFF T!ME」はブラインドサッカーの個人参加型プログラム。情報の8割を視覚から得るといわれる中、目隠しをした状態で走ったりボールを蹴ったりすることで、コミュニケーション、チームビルディング、ダイバーシティ理解など日常生活や仕事に生かせる気付きを得ることができる。企業向けの体験型研修プログラム「OFF T!ME Biz」もある。「スポ育」は学校向けの体験型ダイバーシティ教育プログラムで、子どもたちの心に“気付き”や“変化”の種をまく。
「いい未来を、共に生みだす」 スポーツを産業として前進
スカイライト コンサルティングは今年1月、新ブランド「SKYLIGHT Sports」を発表した。
これまでさまざまなスポーツビジネスを手掛けてきたが、羽物氏は「“点”でやっている」と感じていた。「ここまで幅広くスポーツビジネスに取り組んでいる会社は他にない」(羽物氏)。“線”として有機的につなぎ合わせ、さらに強化していくことを目的に、一つのブランドの下に統合するに至った。
「SKYLIGHT Sports」では、「稼いだお金をスポーツに再投資することで、競技力が上がり、環境が整備され、さらにお金を稼げようになる。そうした循環をつくる」(羽物氏)ことで、スポーツを“産業”として成熟させることを目指している。
そんなスカイライトだが、ほんの10年ほど前までは「コンサルティング会社でスポーツをビジネスにすることには懐疑的だった」(羽物氏)という。考えを改めたきっかけは、ある若手社員の提案だった。
「彼は東京ヴェルディのサポーターで、今思えば彼の“妄想”が入っていたかもしれませんが(笑)、当時スカイライトでは海外でコンサルティングビジネスを展開したいと考えていました。ちょうどヴェルディがアジア戦略を考えていると聞きつけた彼が『何かできませんか!?』と問い掛けてきたのです」(羽物氏)。
Jリーグが創設された1993年当時、ほぼ同時期に創設されたイングランド・プレミアリーグと売上規模に大きな開きはなかった。むしろ1クラブ当たりの平均売上高ではJリーグが上回っていた。だがそれから20年が経ち、7倍以上の差が開いた。羽物氏はそこに可能性を感じた。
「1年かけて調査して感じたことは、日本でも同じことができるんじゃないかと。ただ我々はそれまでスポーツビジネスに関与してきたわけではなかった。スポーツビジネスを“知る”という過程が必要になる。そのためには資本業務提携を結ぶのが一番いいだろうと考えたのです。出資するということは、短期的ではなく、長期的な関係を結んで、協力し合って一緒に成果を出していこうという証しです。そうした思いをもってスタートしました」(羽物氏)
いい未来を、共に生みだす――。
これは、スカイライト コンサルティングが掲げるビジョンであり、使命だ。外部からコンサルティング業務をするだけでなく、自らリスクを取って事業を始めたり、出資して経営に参画するのはこうした矜持があるからに他ならない。
「スポーツはやはり素晴らしい。多くの人たちがスポーツを楽しんでいて、人生の中核にもなっている。でも綺麗事だけではいつかどこかで破綻してしまいます。将来にわたってより楽しめるように、産業としてより発展できるように。スカイライトが貢献できていければ、嬉しいですね」(羽物氏)
インタビューの様子はこちらの動画から
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