女子サッカーは「10億ポンド(1600億円)ビジネス」に。イングランド女子リーグWSLチェアが抱負

欧州では女子サッカーの人気と注目度が増している。クラブや国代表の国際大会では、続々と入場者数の歴代記録が更新された。世の中でダイバーシティ&インクルージョンが取り組まれる中、社会課題を解決する推進役としても期待される。

先月ロンドン行われたスポーツビジネスイベント「Leaders Week London」には、イングランド女子スーパーリーグ(FA Women’s Super League:WSL)のドーン・エアリー(Dawn Airey)チェアが登場。リーグと女子サッカーの抱負を語った。

歴代の入場者数記録を次々と更新

欧州の女子サッカー人気が目覚ましい。今年3月に行われたUEFA女子チャンピオンズリーグでは、準々決勝のバルセロナ対レアル・マドリード戦で9万1553人の入場者数を記録し歴代記録を塗り替えると、次の準決勝では再びバルセロナのホームで9万1648人を集め早々に更新した。

それまでの女子サッカーにおける入場者数記録は、1999年女子ワールドカップ決勝のアメリカ対中国までさかのぼる。記録更新は20年以上ぶりの快挙ともいえる。

7月には国対抗となる女子EURO決勝で、開催国のイングランド代表が決勝まで駒を進めると、8万7192人がウェンブリー・スタジアムに詰めかける事態に。男子サッカーの記録も超えてEURO史上最多の入場者数記録となった。UEFAによると決勝戦は世界で5000万人が視聴し、大会全体の総視聴者数も過去最多だった。

「女子サッカーには無限のポテンシャルがある」とエアリー氏(写真=Leaders)。Sky、Yahoo!などメディア企業で要職を務めた後、2019年から英女子リーグのトップを務める同氏は、「女子サッカーがスタジアムを満員にできない理由はない」とも力強く述べる。

「女子サッカーは10億ポンド(1600億円)ビジネスに」

エアリー氏からは「WSLのビジョンは最も成功を収め、利益をあげるリーグをつくること。WSLは向こう20年で年間の売上を少なくとも10億ポンドにしたい」という強気の発言も飛び出した。現在の日本円換算で約1600億円規模になる。

ひとつのカギは放映権だ。イングランドサッカー協会(FA)では、2021/22から初めて女子(WSL)の放映権を男子(プレミアリーグ)と分けて販売した。結果、SkyおよびBBCと3年にわたる契約がまとまった。

エアリー氏は「公表はしていない」と前置きしながらも、WSLの放映権料が年間1000万ドル(約16億円)と報道されていることを認め、同60億ドル(約9600億円)とも言われる男子と比較しても伸びしろがあるとの認識を示した。

「短期的には、放送局のプロダクト(=試合放送)を限りなく良いものにしたい。そのためには試合会場のインフラへの投資が必要。上位と下位のクラブでは施設のレベルに差があるのは事実で、リーグは全てのクラブの基準を上げなければならない」(エアリー氏)

エアリー氏がそう話すのは、放映がもうひとつの大きな収入源に密接に関係しているからだ。

「WSLは現在、バークレイズ、エレクトロニック・アーツ、ナイキなどから大きなサポートを得ており、こういったスポンサーシップを更新していかなければならない。スタジアムの入場者数だけではなく視聴者数といったオーディエンスも重要になる」(エアリー氏)

目指すは「ポジティブチェンジ」

WSLの2022/23シーズンはちょうど先月に開幕した。女子EUROでの母国優勝という追い風に乗って、開幕戦のリバプール対チェルシー戦は最大40万人以上がTV視聴、第3節のアーセナル対トッテナム戦(エミレーツ・スタジアム)には4万7367人が入り、どちらもリーグ歴代記録を更新した。

WSLの創設は10年以上前の2010年だが、ここにきて同国内サッカー界の努力が実を結ぼうとしている。「女子EUROでの成功は一時的なものではなく、綿密な戦略と多くの人々が存在したからこそ。協会とリーグ、クラブがグラスルーツから代表チームまで女子サッカーを発展させるために長きにわたって取り組んできた」とエアリー氏。

リーグの戦略には「身近さ」もある。WSLは手の届きやすいチケットの価格設定を行い、誰でも試合も見に行きやすいリーグを目指す。「家族連れにやさしくインクルーシブであること」をリーグの特徴に挙げるエアリー氏は、「プレミアリーグのチケットは高すぎて手に入れられない人も多い。男子リーグを模倣する必要はない」とも指摘する。

その理由は、より広い視野でリーグが社会の中で果たすべき役割を見つめているからだ。WSLには「女子スポーツにポジティブな変化を起こす」という目的がある。女子サッカーを発展させることで、ひいては社会における女性の活躍を推進していこうというビジョンに他ならない。

「社会はよりインクルーシブになりつつある。ただしこう言うのは気がひけるが、私たち女性が男性に追いつくまでの道のりはまだ長い。その中でサッカーは『変化』をもたらす重要な手段になる」(エアリー氏)

母国開催の女子EUROで優勝というまたとない機会を得ることになったイングランドサッカー界。その勢い受けて女子サッカーリーグは盛り上がりを見せ、ますます多くの女性をエンパワーする存在になろうとしている。「10億ポンド」というビジネス目標も出たが、その先にあるビジョンの実現にこそ、引き続き注目したい。

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