ミクシィ石井宏司氏に聞く、国内スポーツビジネスの課題。――なぜ投資が集まらないのか?市場成長に必要な視点は?

12月3日に開催され、盛況のうちに幕を閉じた『HALF TIME Sports Business Meetup』。当日のパネルディスカッションでは、60名を超える参加者から多くの質問が挙がったが、時間切れで答えられなかった質問も多数。そこで今回は、ミクシィ スポーツ事業部 事業部長の石井宏司氏に、幾つかの質問に特別に答えてもらった。

日本のスポーツビジネス市場の成長には、何が必要か?

現職の前には、野村総合研究所でスポーツ庁の業務をはじめ、スポーツビジネス・コンサルティング業務を行なっていた石井氏。スポーツビジネスの市場環境や、今後の成長要因などマクロ的な視点からの質問が寄せられた。


――海外、特にヨーロッパ諸国と比較した時に、日本のスポーツビジネスに投資が集まらない背景には、どのような要因があるのでしょうか?

「投資が集まらない背景の要因として6つ挙げられると考えます。1つ目は、海外からの投資を積極的にプロモーションしていないことです。イギリスをはじめ、EU諸外国では政府が先頭に立ち自国への投資を積極的にPRをしています。日本ではどうしてもこれまでの流れで、現在も対内投資よりも、対外投資への動きが積極的であるように感じてます。2つ目は、英語の壁です。海外のビジネスカンファレンスなどで、各国が積極的に英語でPRしているのに比べると、日本はまだまだ英語、かつ伝わる内容でグローバルにPRしきれていないところがあると感じます。

3つ目は、金融ネットワークの差があると感じます。日本の金融機関は、どうしても日本企業との距離が近く、もう一方で今海外で大きく動いている米国マネー、中国マネー、中東のオイルマネーなどへの距離が遠いように感じます。そういった大きな海外のお金を、日本へ持ってくる姿勢が不足していると思います。もしこういった大きな海外のお金の流れを、日本の金融機関が日本国内の投資などに呼び込んでくることができれば、その一端がスポーツやスタジアム・アリーナ、都市再開発などに流れていけるのではないかと思います。

4つ目は、スポーツ業界で重要な収入源の一部である放映権を、海外へ向けてまだまだ販売しきれていないこと。5つ目は、最近は欧州のサッカークラブがアジアや日本、欧州や米国でエキシビジョンマッチを展開しファンをグローバルに増やしていますが、他方、日本のスポーツ界が海外に積極的に赴き、エキシビジョンマッチなどを行ってないことが挙げられます。

最後の6つ目は、海外から投資を受けることに対する無意識のアレルギーがあると思っています。例えば、日本企業が海外資本になることは、ビジネス上では戦略的なオプションの一つです。しかし日本社会ではなぜか『海外に買われた、買収された」と、感情的に、さも問題があるように報道されてしまう。どうしても外資を受け入れることに何か心理的な抵抗感を感じがちなメンタリティがあります」

――スポーツビジネスを考える上では、その国の歴史背景や文化などの社会的な背景を踏まえる必要があると考えています。日本のスポーツビジネス市場が成長するために、どのような視点が必要でしょうか?

「日本のスポーツビジネス市場が成長するには、必要な視点として3つあると考えています。

1つ目は、スポーツにはまだ、全体を統括する業界団体がありません。つまり、まだ公式には産業になっていないとも言えます。 産業になるには団体と、その要求を受ける国の機関が必要です。例えば、自動車と道路が発達したのには、自動車工業会という団体と、国土交通省という国の機関があり、車の生産を増やすとともに、全国に高速道路を引く政策を推進してきた背景があります。従って、スポーツ業界はまず団体を作り、キーマンやリーダーが集まり、各ステークホルダーに働きかけ、産業としての基盤を築くところから始めなければなりません。スポーツ庁ができたことで、ここは少しずつ変わっていければと期待しています。

2つ目は、人材です。日本のスポーツ市場ではどのような人材が必要で、どう養成するのか、誰もマネジメントができていません。一方で、国はIT人材を育成するために、育成フレームを設定し、どんな人材が充足、不足なのか常にチェックしています。ましてや(スポーツのような)サービス業は人材が生産装置のはずですから、それを誰も管理せずに成長するわけがありません。スポーツを含めた、付加価値の高い、エンターテインメントやイベント、観光業などに必要な人材をそろえていく戦略と実行が今求められていると思います。

3つ目は、海外のスポーツビジネスはグローバル市場で成長しています。そのため、マルチリンガルに対応してきています。今後、国内市場は(人口減少などで)しぼむのが目に見えていますから、マルチリンガル対応と国際進出は、マストです」

スポンサーシップの効果最大化のポイントとは

――スポーツにおけるスポンサーシップの権利活用の最大化のポイントは何でしょうか?アクティベーションによって費用対効果を向上させる、或いは価値創出を行うために重要視していることを教えてください。

「スポンサーシップの目的は各企業によって異なります。広告として実施される場合は、露出換算がKPIとなり、マーケティングとして実施される場合は、顧客獲得コストや、会員化コストなどがKPIとなるでしょう。

ミクシィを例に挙げると、私たちはスポーツビジネスに参入することを目的としているので、事業投資として経験や人脈をスポーツ業界で積むことができるか、我々自身が学び、事業スピードをあげられるのか、を重視しています。この事業投資が将来収益を生む資本になるか、すなわち、スポーツビジネス自体でお金を生むことができるかが最終的に重要になってきます」

現職のミクシィでは、Bリーグの千葉ジェッツ、JリーグのFC東京、プロ野球のヤクルトスワローズなどのスポンサーシップとビジネス連携を担当する石井氏。ミクシィは、2019年4月に千葉ジェッツと資本提携し同チームを子会社化すると同時に、1万人規模のアリーナ構想を発表。同4月には、FC東京とも出資の上マーケティングパートナー契約を行っている。従来のスポンサードを超えて、今後ミクシィがスポーツビジネスでどういう貢献ができるか注目される。

スポーツ業界で活きる経験と、この先見据えるもの

――これまでの経験で、最もスポーツ業界で活きているものは何でしょうか?

「ビジネスをゼロからスタートした経験が活きています。その経験から特に、パネルディスカッションでもお話しした、3つの力が身に付いたと感じています。まずはファン、チーム、選手など、現場から見えるニーズ、見えないシーズを把握する力である“観察力“。次に、 toCやtoBモデルなど、関わる人が多いビジネスの中で仕組み化する“仕組み力”。最後は、ファンにどんな体験を提供できるかゼロから作ることのできる“ストーリー作成力”です」

――現職があるとは思いますが、今後スポーツ業界で進みたいキャリアはありますか。

「特定のキャリアをしたいというのはありません。その時代ごとに求められるポジション。或いは少し先を見た際に、誰かがやっておいたほうがいいポジションに先回りして、自分として貢献できる役割を果たしていきたいと思っています。先回りカバーポジションとでも言いましょうか」

パネルディスカッションでも、スポーツ業界への初めての転職が40代半ばだったことから、当時の困難や乗り越える工夫も語った石井氏。だが、それまで培った経験こそ今に活きているというのは、これから転職や複業でスポーツ業界に携わろうとするビジネスパーソンにとって、大きな示唆となるはずだ。


今後も『HALF TIME Sports Business Meetup』では、スポーツ業界の第一線で活躍する様々なビジネスパーソンをゲストに迎えて開催する予定だ。開催レポートなど、これまでの関連記事はこちらから。

 
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