海外ではスポーツがビジネスとして成り立っているのに対し、日本ではまだスポーツがビジネスとしては、まだまだ発展の余地があります。しかし、日本のスポーツビジネスは可能性を十分に秘めています。
日本のスポーツビジネスの発展が遅れている理由は、スポーツを「教育」として捉えているため。つまり、教育上の「体育」と「スポーツ」が強く結びついていることから、スポーツでお金儲けをしようとすることに難色を示す方も多いということです。
海外ではプロスポーツを養成してお金を稼ぎ、地域経済に貢献するという仕組みがすでに存在。例えば、ハンドボールのように日本ではあまり注目されていない競技にも「お金を稼ぐためのシステム」が構築されています。
本記事では、日本のスポーツが抱える問題について解説しています。
ぜひ、最後までご覧ください。
スポーツ庁・経済産業省の見る日本のスポーツビジネス
スポーツビジネスでは、主要なプレイヤーとして以下のものが関係してきます。
- コンテンツホルダー
- 行政
- スタジアム・アリーナ
- 推進企業
- メディア
このうち行政機関では、スポーツ庁の「スポーツ基本計画」に沿ってスポーツ行政が推進されています。また、政府はスポーツ産業の活性化を考え、2025年までにスポーツ産業の市場規模を15.2兆円に拡大を予測。これは、2012年時の5.5兆円をはるかに上回る数字です。
このスポーツ産業活性化において政府は「スタジアム・アリーナ」、「周辺産業」を軸に据えており、前者は2.1兆円から3.8兆円、後者は1.4兆円から4.9兆円へ拡大する考えだといいます。
確かにアマチュアスポーツにおける五輪メダリストの存在や、卓球、バドミントンなどで世界ランキング上位選手がいる以上、育成環境は整っているでしょう。しかし現時点だと東京オリンピック、パラリンピックのパフォーマンス強化施策が中心のようで、コンテンツマーケティングに対する補助金は見当たらないとのことです。
民間の場合はどうなのか
ここで気になるのは民間の取り組みです。以前バレーボールでは、以下の柱を掲げてスポーツビジネス化の推進が行われました。
- スポーツで稼ぎ、収益をバレーボールの振興などに役立てていくこと
- 負担から収益
- 人々の需要に応える付加価値のあるサービスを提供。スポーツ産業の振興を促進
- 日本の基幹産業に据えるため、スポーツ産業の経済的な価値を顕在化させる
そのため、確かに動きはあるのですが、いまだにプロスポーツといえばプロ野球、Jリーグ、Bリーグ、Vリーグほどですので、ビジネスの波はそれほど広範囲に及んでいないというのが現状です。
日本のスポーツビジネスにおける課題
では、日本のスポーツが抱える問題やビジネスにおける課題にはどのようなものがあるのでしょうか。主に、以下の2点が挙げられることが挙げられます。
- 日本におけるスポーツの捉え方
- チームが企業の広告塔になる
それでは、詳しくみていきましょう。
日本におけるスポーツの捉え方
日本国内ではスポーツを「教育」の一環として捉える風潮があり、これがビジネス化を阻んでいる原因の1つだと指摘されています。
そのため、スポーツでお金儲けをするということに難色を示す方もおり、同時に「プロを作っても成功するわけがない」という考え方があって、プロ化が進みませんでした。
しかし、欧州ではハンドボールのプロチームが多く存在し、一定のレベルで給料も貰っています。これにならって、日本でもプロ化が進むとよいですね。
チームが企業の広告塔になる
プロ化をしない2つ目の理由は、企業の広告塔としてチームが位置付くため。日本のスポーツは1960年代から企業の広告塔として機能し、お金が足りないとほとんどの競技団体が会社に資金出資を依頼していました。
だからそこから自立するということを避け、「最後は企業に頼れば良い」という考え方が広まってしまい、独立したプロ化が起こりにくい体質ができてしまったのです。
スポーツビジネスを発展させるには?
では、日本でスポーツビジネスを発展させるにはどうすればよいのでしょうか。これには以下のような方法があります。
- スポーツへの投資をすすめる
- アジア戦略
- 「みる」「する」「支える」の面からスポーツを支える
それでは、詳しくみていきましょう。
スポーツへの投資をすすめる
例えば、パナソニックは投資を行い、「パナソニック スタジアム 吹田」を建てたという事例があります。このように各企業がこぞってスタジアムやアリーナなどにお金を投資し、市場を大きくして地域社会に貢献するという方法をとれば、スポーツビジネスの活性化が期待できますね。
つまり、施設の投資によって、スポーツが抱える問題を解決できることもあるということです。
アジア戦略
プロサッカーのJリーグではアジア戦略を進めており、ヤンマーがスポンサーとなっているセレッソ大阪はフィリピンで練習をすることで、企業の知名度を現地で上げ、地元の農家で会社の耕運機を買ってもらおうとしています。
このようにアジア各国へ選手が練習に行き、スポンサー企業の知名度を上げるという戦略もとれるのです。
「みる」「する」「支える」の面からスポーツを支える
例えば、試合を開催し、それを観戦しに来場した人たちが選手を応援しますよね。このとき、プロチームは競技を行い、それを支えるスポンサーや投資家がアリーナ内の店舗で食品やグッズなどを出し、客はその商品を購入します。
あるいは、スポンサーや投資家が「スポーツ選手に技術指導が受けられるイベント」や「アマチュア試合」を開き、それ自体を商品として展開するといった仕組みを作れば、ビジネスに繋がります。
日本のスポーツ業界の組織
日本のスポーツ業界組織には、世界の業界組織と比べた場合、少し異なところがあります。
世界のスポーツ業界組織も、スポーツを愛好する人々の自発的な努力によって支えられてはいますが、日本の業界組織はその傾向が顕著。また、自発的な努力でそのスポーツを長年支え続けていた方が、そのスポーツ業界で強い発言力を持つようになるケースもみられます。
そうしたことから、日本のスポーツ業界の組織は、下記のような傾向があります。
- 身内意識が強い
- コンプライアンス意識が徹底されない
- 組織内の慣習や人間関係への配慮が優先される
- ガバナンスの確保がおざなりになっている
それらが原因となり、意思決定がファンや世の中目線ではなく業界組織寄りに偏ったり、忖度などのスポーツが抱える問題点に繋がったりしてしまいます。
また、プロ・アマを問わずさまざまな日本のスポーツ業界組織で、組織運営上の問題やパワハラ、違法行為といった不祥事が起き、スポーツビジネスの発展を妨げることが多い理由にもなっています。
子供のスポーツ離れ
東京都の調査によると、1日の運動時間が60分以下という子供が、都全体の60%に達しています。さらに、スポーツをしたいと思わない子供が約15%とのこと。こうした子供のスポーツ離れは、東京都だけでなく日本中でみられます。
子供のスポーツ離れが進んだ理由には、下記の4つが挙げられます。
- スマートフォンの普及により友達同士でスポーツをして遊ぶ子供が減った
- 塾などでの学習が増えたことでスポーツをする時間がない
- 外でスポーツができる場所が減った
- 親が過保護になり、子供だけでのスポーツを禁止してしまう
また、せっかくスポーツを始めても、スポーツ指導者の問題から途中で辞めてしまう子供が多いことも、子供のスポーツ離れが進んでいる理由です。日本のスポーツ指導者には、今でも根性論重視の思考が根強く残っています。
スポーツで上達するためにはそのスポーツを根気よく続け、辛くてもくじけない根性が必要。しかし、根性論重視の指導に、そのスポーツの楽しみを見出せないまま辞めてしまう子供も少なくありません。
アスリートに対する付加価値が足りない
世界で活躍している日本のアスリートがよく口にする内容が「日本は海外と比べてアスリートの価値が低い」といった意見です。
また、日本ではオリンピックなどで活躍した後など、メディアで注目されている間はアスリートに対するリスペクトや付加価値が高まる傾向にあります。しかし、引退するなどしてメディアへの露出が減った途端、付加価値が下がりますよね。
もともと、海外と比べてアスリートの価値が低いのに加えて、注目されなければ付加価値が高くならないため、現役を退いたらスポーツでは生活していけなくなる選手も少なくありません。そのため、スポーツで華々しい活躍したアスリートであっても、指導者や育成者にはならず、そのスポーツから去ってしまう方も多いです。
スポーツ・スポーツビジネスを発展させるためには、次世代を育てる経験豊富な指導者や育成者が不可欠。しかも、アスリート自体の価値が低いスポーツは、そのスポーツを支える方々の価値も高まりません。
そのため、アスリートの価値とアスリートに対する付加価値をもっと高めなければ、日本で今以上にビジネスを発展させるのは難しく、日本のスポーツが抱える問題といえます。
まとめ
今回は、日本のスポーツが抱える問題について解説してきました。日本では、まだまだスポーツを教育と捉える思考が強く、ビジネスにおいて大きな問題点といえます。
しかし、スポーツビジネスは、エンターテイメントとしても大きな可能性を秘めた分野ともいえます。そのため、海外の成功事例を参考に、日本でも発展を目指す動きがみられますが、大きな成果に繋がっていないのが現状です。
子供のスポーツに対する意識改革など、日本が抱える問題点はいくつかありますが、1つずつ改善して、将来的に日本でもスポーツビジネスが定着するとよいですね。
本記事が、日本におけるスポーツビジネスの現状と問題点について知りたい方の参考になれば幸いです。
(TOP写真提供 = Kyle DeSantis / Unsplash.com)
《参考記事一覧》
問題だらけの日本スポーツ界……古い組織を変えるのは“非連続性”だ(文春オンライン)
今、日本スポーツ界が抱える課題「アスリートの価値に比例する『周辺の仕事』の価値」(THE ANSWER)
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