全世界で3億人と、世界第2位の競技人口数を誇るクリケット。
しかし、日本ではあまり馴染みがないため、「名前は知っているけれど、どういう競技かは分からない」という人も少なくないのではないでしょうか。
この記事では、クリケットとはどのような競技なのか、そしてその市場規模はどれくらいなのか、詳しくご紹介します。
ファンは世界に10億人、プレーヤーは3億人
クリケットのプレーヤーは世界に3億人、そして、ファンは10億人いるとされています。
クリケットのファンとプレーヤー
クリケットは、かつてイギリスの植民地だった国々で特に人気のスポーツです。
2018年に実施された調査では、ファンは世界に10億人、そして、競技人口は1位のサッカーに続いて3億人いるとされます。
インド、パキスタン、スリランカ、バングラデシュなどの南アジア諸国では圧倒的人気を誇っていて、ファンの9割である約9億人はインド人であるとされています。
人口の多いインドで人気が高いことが競技人口・ファンの数が多い要因であるといえるでしょう。
ちなみに、日本での競技人口は約3,500人。年々競技人口は増えていますが、世界的に見るとまだまだ非常に少ない状況です。
クリケットのワールドカップは4年に1度、10万人規模のスタジアムで行われていますが、2015年に開催された大会の視聴者は15.6億人。ワールドカップの歴代最多優勝国は男女ともにオーストラリアとなっています。(ワン・デイ・インターナショナル試合形式による)
また、クリケットは男女関係なく楽しめるスポーツで、ファンの平均年齢は低く、34歳。
クリケットの人気が高いインドの人口は今後も増えることが予想されていることから、今後もクリケットの発展が期待されます。
クリケットは、1900年パリ大会で一度だけオリンピック種目になったことがありますが、その後は採用されておりません。ただ、2028年にはクリケットがオリンピック競技に復活するかもしれないと期待している人も数多くいます。
クリケットの始まりとルール
クリケットは、守備チームと攻撃チームに分かれてプレイし、得点の高いチームが勝利するというもの。
ここからは、クリケットの起源とルール、そして野球との違いについて解説します。
クリケットの始まり
クリケットの始まりは13世紀。
イギリスで行われていた「棒状のもので石を打ち返す」という羊飼いの遊びから始まったという説が有力です。
18世紀にはイギリスで統一ルールが作られ、貴族や富裕層の間で人気となります。
その後、英国のパブリックスクールでの必修科目になるなど、クリケットは「紳士・淑女のスポーツ」と呼ばれるようになります。
クリケットのルールとは
クリケットは、ボウラーの投げるボールをストライカーが打つ、というものですが、バウンダリーという境界線を超えてボールを打つか 、打った後2つのウィケットと呼ばれる3本柱の立札の立つクリース間を走るか、によって点を取るゲームです。
ボールのノーバウンドキャッチや、ストライカーがクリースに到達する前に守備側にウィケットを倒されたらアウトになります。
クリケットと野球の違い
クリケットは野球の原型とも言われるスポーツですが、クリケットと野球とは、ルールやチームの人数などで異なるところがあります。
たとえば、クリケットの投手は、投球する際に助走をつけたり、ワンバンボールが認められている一方、投球する際に肘を曲げてはいけません。
また、打者の場合、デッドボールがなかったり、打撃をしてもアウトが出るまでは同じ人が打ち続けることが可能。
チームの人数は野球と異なり、クリケットの場合は1チーム11名。それに補欠選手が加わります。
そして、野球のバッターに当たる選手はバッツマン、そしてピッチャーはボーラーと呼ばれるなど、呼び方も異なります。
クリケットでは、野球で使用される棒状のバットではなく、オール型の平たいバットを用い、グローブをつけられるのは捕手選手のみとなっているため、他の選手は素手でプレーする、というのもクリケットならではの特徴です。
ちなみに、捕手選手は両手にグローブをつけることが許されています。
インドのプロリーグ「India Premier League」の評価額は年々増
インドではクリケットの人気が高いと前述しましたが、ここからは、インドでクリケットが広まった理由やインドのプロリーグについて紹介していきます。
インドでクリケットが広まった理由
インドはかつて、旧大英帝国時代のイギリスの植民地だったため、イギリス人によってクリケットが伝えられました。
クリケットは、貴族や富裕層に人気がある「紳士・淑女のスポーツ」といわれますが、板とボールがあれば始めることができ、整備された競技場も特に必要なくプレーできることから、貧困層の多いインドでも広まったのです。
インドではクリケット選手養成機関がある
インドには、インドクリケット管理委員会(BCCI)が運営する選手養成所があります。トップ選手になれば高収入も得られるため、若い選手たちが競い合ってクリケットをプレーしているとされています。
インドのプロリーグ「India Premier League (IPL)」の収益とブランド評価額は
IPLは、BCCIが主催し、2008年に発足した8チームからなるインドのプロクリケットリーグです。
スポーツ競技の市場規模の表し方として、プロリーグの売上高やブランド評価額で表す仕方がありますが、IPLは、2017年にスポンサーシップだけで約1,000億円の収益をあげています。
米国コンサルタント会社によると、2019年のIPLのブランド評価額は約7,200億円。2017年の約5,300億円、2018年の約6,500億円と比べて年々拡大しています。 少子高齢化が進む他国に比べ、インドはいまだ人口増加傾向にあります。若いクリケットファンも多いため、市場規模はますます拡大することが予想されます。
IPLチーム選手の平均年俸は
インドの人気俳優であるシャー・ルク・カーン氏が共同オーナーを務める「コルカタ・ナイトライダーズ」は、選手たちがリーグ最高の平均年収を得ているチームです。その年収は約3億4000万。日本のプロ野球界で最も平均年収が高いとされる福岡ソフトバンクホークスの選手平均年収9,600万円と比べても高いことが分かります。
インドのクリケット市場のスポンサー
インドの人口は2019年現在、約13億人。まだまだ発展途上にあることから、インド市場は将来性のある魅力的な市場とされており、数多くのグローバル企業がクリケット市場に着目しています。
日本企業のエアコンメーカーや自動車メーカー等のほか、中国企業も資金力を背後にスポンサーに名乗りを上げています。
ペプシコ
ペプシコーラの製造企業である「ペプシコ」は、2013年から5年間、IPLのメインスポンサーでした。そのスポンサー料は年額約12億円、5年間で約60億円。ただし、契約途中の2016年に中国企業のVivoにスポンサー権利を引き継いでいます。
マイクロマックス
マイクロマックスは、インドの携帯電話機器メーカーで、インドのナショナルチームのメインスポンサーです。スポンサー契約は、ナショナルチームの1試合あたり約4,000万円を支払う契約となっています。
ダイキン
ダイキンは、日本の大阪府大阪市に本社を置く総合空調専業メーカーで、世界のエアコン業界をリードする企業です。IPLチームのメインスポンサーとして10年以上貢献しています。
三菱重工業
三菱重工業は日本の東京都千代田区に本社を持つ、重工業メーカーです。インド現地にて発電設備などの重電機を製造していますが、IPLチームとスポンサー契約を結んでいます。
日本ペイント
日本ペイントは、日本の東京都品川区に本社がある汎用塗料の製造販売を行う企業です。インドでは、子会社が自動車塗料の製造販売を行っており、2020年8月にはシンガポール塗料大手企業のウットラムグループの傘下に入る奇策を打ち、業界の話題となりました。IPLにはチームスポンサーとして参加しています。
日産自動車
日本の神奈川県横浜市に本社を持つ自動車メーカーである日産自動車は、2015年にICCとの間で8年間の長期スポンサー契約を結び、全世界で開催されるクリケット競技大会の公式スポンサーになりました。この契約によって、全ての国際クリケット競技会でのトロフィーに、日産の企業名が付されています。
Vivo Electronics
Vivoは中国のスマートフォン大手メーカーです。2016年にペプシコからリーグスポンサーの権利を引き継ぎました。2018年から5年契約を結んでいましたが、2020年8月、期間満了を待たずに契約を解除しています。この背景には、2020年6月に起こったヒマラヤ山中の国境係争地でのインドと中国との武力衝突があります。
ドリーム11
ドリーム11は、インドのスポーツゲーム大手メーカーで、ユニコーン企業と呼ばれる評価額10億ドル以上の未上場・スタートアップ企業です。Vivoの契約解除に伴い、スポンサー料約31億円で2020年12月までのIPLメインスポンサーを獲得しました。スポンサー料はペプシコの契約時(7年前の約12億円)に比べ、ずいぶん高騰していることが分かります。
クリケット選手の年俸
2021年に発表された世界のアスリート界の年棒ランキングによると、66位にクリケットのヴィラット・コハリー選手がランクイン。その額は約25億円と高額です。
また、2020年のクリケット選手の年棒ランキングを見ると、コハリー選手に続いて、マヘンドラ・シン・ドニー選手の23億円が2位、そして、3位はクリス・ゲイル選手の約8億円がランクインしています。
トップ選手は高額の年俸を稼いでいる、といえるでしょう。
まとめ
クリケットの起源やルール、選手の年棒などについて紹介しましたが、いかがでしたでしょうか。
日本では、まだまだ競技人口が少なく、知名度の低い競技ですが、世界には3億人のプレーヤーがいて、男女共に人気のあるスポーツです。
オリンピック種目への採用も検討されており、目が離せません。
(TOP写真提供 = ChrisVanLennepPhoto / Shutterstock.com)
《参考記事一覧》
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