サッカーの試合中継を見ていると、ハーフタイムや試合後にいろいろなデータが紹介されることが多いことに気づくでしょう。でも、テレビ中継では、アナウンサーや解説者がそのデータについて深く言及する時間がないせいか、視聴者としては、示されたデータについてあまり深く理解できていないことが多いようです。そこで、この記事ではサッカーに関わるデータを読み取るコツをガイドしていきます。
シュート数が多ければいい?
サッカーの試合におけるデータで、必ず紹介されるのが両チームのシュート数です。
シュート数が多ければ、積極的にチャンスを作り、有利に試合を進めているように思われがちですが、実際は、シュート数の多さが得点や勝利に結びつくわけではありません。
シュート数で重要なのは、「枠内シュートの割合」です。
「枠内シュート」とは、ゴールの枠内に飛んだシュートのこと。
ゴールに届く途中でディフェンスの選手にブロックされたシュートは、枠内シュートに含まれません。
シュートを10本打って枠内シュートが0より、シュート1本でもそれが枠内シュートであれば得点が入るので、「シュート数に対する枠内シュートの割合」が高いほど、有利に試合を進めているといえるでしょう。
パス本数とボール支配率は勝敗に関係する?
シュート数と同じく、よく紹介されるのが「パスの本数」です。
ただ、「パス本数が多いほうが優勢」とはいえないようです。
消極的な試合運びでパス成功率が上がる!?
一般的に、自陣でのパスは成功しやすく、敵陣(特にゴール近く)でのパスほど失敗しやすいものです。
自陣でパスを回している時間帯が多いほどパス本数が多くなり、パス成功率は高くなります。逆に、積極的に相手ゴールに近付こうとするパスや決定的なチャンスを作ろうとするパスを多く狙うほど、パス成功率は低くなるのです。
つまり、消極的な試合運びの結果としてパス本数が高くなったり、積極的な試合運びをしたためにパス成功率が低くなる傾向もあるわけです。
したがって、パス本数の多さやパス成功率の高さは、必ずしもプラス面の評価だけではないといえます。
パス本数が最低でも勝利した松本山雅FC
過去4シーズンで最もパス本数が少なかったのが、2015年2ndステージ第3節の松本山雅FCです。
パス本数はわずか157本。
それでも、その試合2-0で勝利しました。
一方で、パス本数が最多だったのは、2017年第8節の川崎フロンターレですが、この時は2ゴールを奪いながらも引き分けに終わっています。
つまり、パス成功率が高かったり、パス本数が多いほうが、勝利に近づくというわけではないといえるでしょう。
「ボール支配率の高さ」は勝利に直結しない
2015年から2018年のJ1全試合をチェックした結果、ボール支配率が50%未満のチームは502勝であったのに対し、支配率51%以上のチームは430勝でした。
つまり、ボール支配率の低いチームのほうが勝利数が多かったのです。
パス本数の多さやボール支配率の高さが必ずしも勝利に結びつくわけではないといえるでしょう。
2019年前半戦終了。データから読み解けることは?
2019年前半戦が終了しました。
ACL参戦の4チーム(鹿島、浦和、川崎F、広島)は、消化試合が1つ少ないものの、その他の14チームは一回りの対戦を終えた時点でのデータを検証してみましょう。
横浜FMが得点・ボール支配率・シュート数・クロス数・スルーパス数の5部門でTOP
前半戦では、各項目で高い数値をはじき出した横浜Fマリノスの数値が目に付きました。
「得点」「シュート数」「ボール支配率」「クロス数」「スルーパス数」と攻撃部門の6つのうち、5部門でトップに立ったのです。
さらに、「走行距離」「スプリント回数」も横浜FMがトップ。
リーグ最多得点を記録する攻撃スタイルは、同チームのずば抜けた走力がもたらしたといえそうです。
「得点」では2位の神戸、3位の名古屋も、攻撃のデータでは軒並み高い数値を記録しています。
5位タイの川崎Fも含めると、いずれのチームも高いボール支配率を誇っているのが特徴的です。
前半戦で首位のFC東京の攻撃データは低い
前半戦で快進撃を見せて首位を独走したのがFC東京です。しかし、同チームの「ボール支配率」は15位とかなり低い結果。
同チームの攻撃データは総じて低いのが特徴ですが、「得点」は5位タイ。
攻撃データが低いのに、FC東京はなぜ得点できたのでしょうか?
その秘密が「スルーパス」です。
ボール支配率では譲りながらも、相手の裏を取る縦パスをゴールに結びつけていると、多くの専門家が分析しています。
守備データでは川崎Fが安定
守備の項目を見ていくと、「失点」「被シュート数」で川崎Fがトップに立ちました。
昨シーズンもリーグ最少失点を記録した川崎Fですが、今季も安定した守備を実現しているといえます。
敵陣での「ボール奪取数」に注目せよ
守備データで注目すべきなのは、敵陣での「ボール奪取数」です。
この部門1位は名古屋であり、2位は横浜FM、3位は川崎Fと、「ボール支配率」でも上位に名を連ねるチームがトップを占めました。
つまり、これらのチームは敵陣で積極的にボールを奪い、相手陣内でボールを回すというスタイルを基本にしていると考えられます。
ただし、こういう戦い方は、ピンチと表裏一体のスタイル。
名古屋(失点数7位)と横浜FM(失点数12位)は、ともに失点が比較的多いチームでもあります。
川崎Fの失点数の少ない秘密は「オフサイド奪取数」
川崎Fの失点数が少ない秘密は、「オフサイド奪取数」。
横浜FMと名古屋は高い守備ラインを保ち、相手チームのオフサイドを誘うことが多いのが特徴です。
その結果、オフサイド奪取数は横浜FMがトップで、名古屋は3位。
一方、川崎Fのオフサイド奪取数は多くなく、13位となっています。
つまり、川崎Fは敵陣でボールを回しながらも、守備時にはしっかりとラインを下げて相手に裏を取らせない守備を徹底しているのです。
このようなリスクマネジメントの高さが、川崎Fの守備力につながっているといえるでしょう。
まとめ
通常のサッカー中継ではあまり深く語られない、Jリーグの各種データについて紹介してきましたが、いかがでしたでしょうか?
サッカーにおけるデータが、非常に奥深いことがおわかりいただけたことでしょう。
シュート数やボール支配率だけでなく、さまざまなデータの意味を考えながら観ると、より楽しむことができるでしょう。
(TOP写真提供 = Sharaf Maksumov / Shutterstock.com)
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