テニスにおけるスポーツビジネスとAIやIT技術の導入にみる変化

グランドスラムなど、世界で親しまれているテニスには、「IBM Watson Media」や「Hawk-Eye」といったAIの導入が進められています。

この記事では、テニスに導入されているAIにはどういうものがあるのか、それぞれのツールについて分かりやすく解説します。

AI技術の導入によって、テニスにどのような変化があるのかについても紹介しているので、ぜひ参考にしてください。

また、錦織圭選手や大阪なおみ選手といった有名選手を企業のプロモーションに用いる取り組みも。

まだまだ成長が予測されるテニス市場におけるスポーツビジネスの可能性について迫ります。

試合や練習に。活躍の場が広がるAI

tennis

AIというとスポーツとは無縁のように思われますが、現在、テニスの大会や練習にAIの導入が進められています。

既に大会に導入されているものとして知られているものには「IBM Watson Media」や「Hawk-Eye」が、そして、練習への導入が進められているものとしてNTT西日本が開発を進める練習強化システムがあります。

 それぞれについて、簡単に紹介します。  

・IBM Watson Media

IBM Watson Mediaは、IBMが開発したAIです。

Machine Learningにより画像や動画、人間の表情などを分析。

重要な場面を自動で判別して、動画を作成します。

IBM Watson Mediaによって作られた動画は、テニス協会のデジタルプラットフォームや現地のラウンジ、コートの近くにあるIBM Watson体験広場でみることが可能。

公式アプリでお気に入りの選手を登録している場合、その選手のハイライトが作成された際にプッシュ通知で知らせてくれるなど、情報のパーソナライズ化も進んでいます。

スポーツ大会で自社製品のプロモーションをすることにより、企業のイメージアップにつながっています。

・Hawk-Eyeの導入

Hawk-Eyeとは、ソニーが2011年に買収した企業、ホーク・アイ・イノベーションズが開発したコンピューター映像処理システムのこと。

テニスコートの周りに設置された10台のハイスピードカメラによってボールと選手の動きを記録し、そこから分析されたボールの軌道や位置をコンピューターグラフィックスによって瞬時に再現できるシステムです。

インかアウトかの判定が厳しいケースで、審判の判定に役立てられています。

通常の試合で3名、グランドスラムで4名のスタッフがシステムのセッティングや管理をしています。

 ・SAP社開発の分析アプリ

データの活用が進んでいる競技の1つである女子プロテニス界では、SAP社が開発した分析アプリが導入されています。

ドイツのIT大手企業SAP社とWTAのパートナーシップにより開発された「SAP Tennis Analytics for Coaches」。

「オンコートコーチング」にも用いることができるため、現在の試合データを分析してプレーの修正をしたり、戦略を立てることに利用されています。

 ・NTT西日本が開発を進める練習強化システム

NTT西日本では、AIを使用した練習強化システムを開発しています。

このシステムは、2台のカメラで練習を撮影し、その映像の分析に基づいて戦略や試合構成をアドバイスする、というもの。

このシステムを利用することによって、競技力の向上はもちろん、競技経験の少ない教師の負担を軽減する効果が期待されています。

プレイベントの開催

テニス大会が開催される際には、大会を観に来た観客をターゲットとしたプレイベントも行われています。

例えば、大阪なおみ選手の優勝で湧いた全米オープンテニス2018。

グランドスラムの1つであり、観客動員数もテニス大会の中で最大といわれていますが、この大会の開幕前に、マンハッタンで「US Open Experience」が開催されました。

プレイベントの内容は、有名選手のサイン会をはじめ、テニス大会、そして、ライブイベントなど。

テニス大会に足を運んだ観客が、試合会場以外でも楽しむことができるようになっています。

また、企業によるアクティベーション活動では、各企業が設けたブースごとにさまざまなイベントが行われていました。

エビアンのブースでは、商品の露出や大会を盛り上げる効果を狙った企画として、エビアンを撮った写真をSNSに投稿することによって、観戦チケットが当たるキャンペーンを行いました。

また、大会のスポンサーであるアメリカン・エクスプレスでは、非接触型決済リストバンドをイベントに導入しました。

アメックス・バンドでポロ・ラルフローレンの商品を購入すると、商品をカスタマイズすることができるなど、他の企業とのコラボレーションも。

イベントにおける企業のさまざまな取り組みによって、グッズ購入が促されています。 

選手をブランドアンバサダーに起用

錦織圭選手や大阪なおみ選手など、世界大会での日本人の活躍が注目されるに伴って、選手をブランドアンバサダーに起用する、ということも増えています。

例えば、大阪なおみ選手の所属企業である日清食品。

全米オープンで優勝した際に、報奨金や優勝記念商品の検討がなされました。

日清食品以外の企業で大阪なおみ選手と関連がある企業にヨネックスや日産自動車、シチズン時計などがありますが、大阪選手が使用しているラケットのメーカーとして知られるヨネックスでは、大阪選手が使用しているモデルについての問い合わせが増え、商品の売れ行きが向上しました。

また、日産自動車やシチズン時計などは、大阪なおみ選手をブランドアンバサダーとして起用。

企業のブランドアンバサダーとして有名選手・人気選手を起用することによって、商品の販売促進をはじめ、企業イメージの向上などといった効果が期待できます。

まとめ

 世界中で人気のあるスポーツとして知られるテニス。

テニスの大会や練習にIT技術の導入が進むことにより、テニスをプレーする人数の増加やテニスの観戦者数の増加が見込まれています。

また、スポンサー企業によってさまざまな取り組みが行われるなど、テニスにおけるスポーツビジネスの分野にはさらなる広がりが期待されます。

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