日本でバレーボールのVリーグが構成を再編したことは、記憶に新しいことです。
新生Vリーグは、バレーボールを「スポーツで稼ぎ、収益をバレーボールの振興に役立てていく」という「ビジネス化」を目的として作られました。
しかしVリーグが新しくなったといっても何がどのように変化したのか、いまいち分かりにくいという方もいるでしょう。
そこで今回は、新・Vリーグ発足によって何が変わったのか、その構造は一体どのようなものなのかなど、様々な角度から解説していきたいと思います。
Vリーグから新・Vリーグへ
2017年の5月。
Vリーグ機構の嶋岡健治会長は「バレーボールのスポーツビジネス化」を打ち出しました。
これによって、チームやホームゲーム数が増えるだけでなく、ライセンス制度が導入されました。
また、ファンクラブやジュニアチームを持って地域との連携を強めていく体制づくりを発表。
これにより、バレーボールの「ビジネス化」が進められていったのです。
そのコンセプトは以下の通りです。
◇「スポーツで稼ぎ、収益をバレーボールの振興などに役立てていく」こと
◇負担から収益
◇人々の需要に答える付加価値のあるサービスを提供。スポーツ産業の振興を促進する。
◇スポーツ産業の経済的な価値を顕在化させ、日本の基幹産業に据える
このコンセプトから分かることとして、新・Vリーグ発足はバレーボールの「事業化」という意味を持っています。
事業化によって試合の開催・運営権はチームが持つようになり、ホームゲームによって得た利益は全てホームチームが管理するようになりました。
また、ホームゲームを一定数開催し、会場の装飾や演出でファンを魅了。
チームが独自色を出しながら試合を進められるようになりました。
つまりは、チームの試合運営がビジネス化推進の役割を果たし、Vリーグ機構も排球堂マーケティング会社を通すことで事業を推し進めるということです。
また、地域経済に貢献するという観点から、各自治体の確約を得たチームが地元に根づいた活動を展開。
これによってファンを生み、試合を見に来てもらえるようにする仕組みが作られています。
チームが試合の開催・運営権を持つことによる「正の連鎖」と先述のマーケティング。
これらが組み合わさって、企業・地域・チームが地域経済に貢献する体制ができあがるというわけです。
新Vリーグの構造
ではここから、新・Vリーグが一体どのような構造で成り立っているのかを見ていきましょう。
新しいVリーグは
- V1リーグ
- V2リーグ
- V3リーグ
という3つのリーグに分かれています。
・V1リーグ
V1リーグは、V・プレミアリーグ以上の競技を目指すリーグです。
V・プレミアリーグからV1リーグに代わることによる変更点は以下の通りです。
・試合の開催権利を都道府県バレーボール協会からホームチームが持つようになり、自治体によるチーム支援を取りつけること。
・チーム名に企業名とホーム地域名を使えるようになり、試合数は一定数のホームゲームを開くことが義務化される。
・外国籍選手も多く採用し、アジア圏へのアピールも計画。
・チーム数は8から男子10、女子12へ。
V1リーグは男子・女子ともに平均3000人収容可能なホームグラウンドを用意。
試合数はそれぞれ男子36、女子32とされています。
また、試合方式は男子がレギュラーラウンド27試合、ファイナル6、3がそれぞれ5、2試合へ、そして、ファイナルが2試合です。
一方の女子はレギュラーラウンドが21試合、ファイナル8、3がそれぞれ7、2試合。
ファイナルが2試合です。
このほかに、ジュニアチームの保有か教室の実施が求められていて、ファンクラブのような交流の場を設けることが定められています。
・V2リーグ
V2リーグは、V1リーグを目指すことを目標としています。
男子・女子ともに平均1500人収容可能なホームグラウンドを用意。
女子の試合方式はレギュラーラウンドが18、ファイナル6が5、入替戦出場決定戦が5試合です。(男子の試合方式は検討中)
こちらもジュニアチームの保有か教室の実施が求められ、ファンクラブのような交流の場を設けることが定められています。
・V3リーグ
V3リーグは、地域に密着し、バレーボールの振興を担うリーグです。
男子は平均750人ほど収容可能なホームグラウンドを用意することとされていて、試合方式は検討中です。
女子はチーム増加時に試合の開催を決定するとされています。
こちらは、可能であればジュニアチームを保有するとされていますが、ファンクラブのような交流の場を設けることは必須の要素となっています。
新・Vリーグ発足による変化
ここまで見てきた要素を簡単にまとめると、以下のようになります。
・ホーム・アンド・アウェー方式による試合開催
このやり方により、ホームゲームで得た収益はホームチームが管理。
それぞれの会場の装飾や演出でファンを魅了するなど、チームが独自色を出しながら試合を進められるようにして、ビジネス化を促進しています。
・チーム主体での試合運営
チームが試合の開催・運営権を持つことで、自治体の支援を確約。
地元に根付いた活動を行うことでファンの数を増やし、試合を見に来てもらえるようにします。
・地域に密着した活動
地域にバレーボールを広める活動を実施し、先に述べたチーム単体が試合開催権を有する仕組みとマーケティング会社の活用によって、企業・地域・チームが地域経済に寄与する体制を構築します。
デジタルの活用
・公式スマホアプリ「Vアプリ」の導入
マーケティングの観点から、新・Vリーグでは「Vアプリ」と呼ばれるファン向けのスマホサービスを展開しています。
このVアプリでは、試合結果や各種の成績、会場内の限定映像を配信しています。
選手データやチームの情報など、バレーボールファンにとって嬉しい情報を得られるようになっています。
また、観客が試合会場へ訪れるごとに電子スタンプを発行し、その数に応じたクーポンを提供。
これによって観客が再び会場へ来るのを促進する仕組みとなっています。
アプリから得られたデータは、ファンの興味に応じた企画立案や将来的な集客策の導入に役立て、ファンサービスの向上へと繋げる狙いがあります。
将来的には、顔認証を使うことでチケット不要の入場システムを確立し、観戦席からスマホを使用して観客が好きなタイミングで飲食品を注文できるサービスも展開したいとしています。
○まとめ
ご紹介してきたように、現在、日本のバレーボールは事業化が進み、様々な新制度が導入されています。
しかし、事業化を推進するということは、企業の利潤を優先する可能性が高くなるということ。
マーケティングにばかり目を向けることなく、ファンの気持ちを大事にした運営がなされると良いですね。
参考記事一覧
バレーボールのVリーグ、来場者向けファンサービスにスマホアプリを導入(デジタルクロス)
バレーボール、Vリーグを中心にスポーツビジネスの提案を行う排球堂マーケティングへ出資(セレスポ)