テニスプレーヤーというと、大会で活躍するイメージを思い浮かべる人が多いと思いますが、その収益は、大会での賞金とスポンサー収入によるもの。
そして、その大半はスポンサー収入によるとされています。
また、テニスの競技団体の活動もスポンサー企業によって支えられています。
テニス競技団体とテニスプレーヤー、そのスポンサー企業との関係について紹介していきます。
大正製薬株式会社と花王株式会社がJTAのスポンサーに
日本のテニス競技団体、公益財団法人日本テニス協会(JTA)は、2020年に入って、2つの大きなオフィシャルスポンサー契約を結びました。
公益財団法人であるJTAにとって、スポンサー契約を締結することは安定した公益活動の基盤となる資金を得られるということであり、この2社とのスポンサー契約は今後のJTAにとって非常に意義のある契約といえます。
JTAと大正製薬のスポンサー契約
JTAは、2020年6月17日に大正製薬株式会社とオフィシャルスポンサー契約を締結することを発表しました。
大正製薬の看板商品であるリポビタンシリーズは、同社のセルフメディケーション事業の中核ですが、中でも、リポビタンDは、1963年から10年にわたって「世界のホームラン王」元読売巨人軍の王貞治氏をCMキャラクターとして起用し、国民的栄養ドリンク剤として販売され、知名度を上げました。
近年ではアンチドーピング認定を取得。選手に安全・安心な栄養剤として販売されています。
また、リポビタンブランドは、「夢に向かって頑張っている人」を応援するブランドとして、通勤・通学時や運動前のエネルギー補給のためのゼリーなど多くの商品を展開し、スポーツや文化の分野でプロモーション活動をしています。
2001年からはラグビー日本代表オフィシャルスポンサーとなっています。
野球やラグビーなど、さまざまなスポーツと関わりを持ってきた大正製薬ですが、テニスに関していえば、2018年よりJTAを通して、全国選抜高校テニス大会の協賛をしていたこと、また、日本で開催される国際テニス大会ATPチャレンジャーのひとつである、「横浜慶應チャレンジャー」の協賛スポンサーになっています。
このスポンサー案件は、慶應義塾大学庭球部監督であり、JTA理事で普及育成副本部長の坂井利彰氏が仲介役となり実現しましたが、JTAが掲げる「テニスを通じて生活者に健康でより豊かな暮らしの実現を図る」という理念と、大正製薬のスポーツ分野への取り組み強化の方向方向性が合致し、契約に至りました。
また、大正製薬は、世界を舞台に活躍するという目標のもと、パフォーマンス向上を本気で目指すジュニア選手に飲んでもらうことで、将来にわたって認知度を高めていきたいと考え、元世界ランキング3位の伊達公子氏がすでに取り組んでいる「伊達公子×YONEX PROJECT〜Go for the GRAND SLAM〜」へのサポートも開始しました。
これは、15歳以下の日本女子ジュニア選手をテニス四大大会のジュニアの部へ出場させるというもので、プロジェクトは2年目に入っています。
さらに、大正製薬は、ITF公認のジュニア大会「リポビタン国際ジュニア」の大会冠スポンサーも務めていますが、このオフィシャルスポンサー契約により、JTAとしては特に女子ジュニア強化につながる、中長期育成体制の枠組みができたといえるでしょう。
JTAと花王のスポンサー契約
JTAは、大正製薬との契約より前の2020年2月21日に、日焼け止めビオレUVを展開する花王株式会社とスポンサー契約を結びました。
これは、JTAが2020東京五輪の運営サイドに携わる立場として、テニスにおける日焼け止めの重要性について、試合をプレーする選手だけでなくコーチ、スタッフ、観客まで多くの人にアピールしていきたいと考えたことに基づくもので、花王の14タイプの日焼け止めビオレUVのラインアップで、女性を中心に日焼け止めの必要性を購買層に訴求していきたいという考えが合致したことにより実現したのです。
このスポンサー契約により、JTAはビオレUVを協会公式の日焼け止めとして、選手や観客、スタッフに使用を呼びかけています。
ロジャー・フェデラーのスポンサー収入が世界1位に
テニス競技団体は、選手の育成を中心として、その国のテニスの発展を目的としたスポンサー契約の締結を企業と結び、スポンサーとなった企業側は、商品の販売促進や企業のブランドイメージの向上を求めますが、テニスプレーヤーは、スポンサー契約することでテニス競技を行うことへの支援(例えばテニス用品の供給など。ランキングが低い選手はこの比率が高い)をもらいます。
2020年、ロジャーフェデラー選手のスポンサー契約が約90億円8800万円にのぼったことが話題となりましたが、そのスポンサー契約の詳細について見ていきましょう。
また、錦織圭選手と大阪なおみ選手のスポンサー契約についても紹介していきます。
ロジャー・フェデラー選手のスポンサー契約
そのスポンサー企業には、クレディ・スイス銀行やロレックス、リンツやメルセデスベンツ、モエ・エ・シャンドン社やウィルソン、ユニクロなどが名を連ねています。
それぞれの契約内容を見てみると、スイスの富裕層向けの金融サービスで定評のあるクレディ・スイス銀行とは、長期グローバルアンバサダー契約を締結。クレディ・スイス銀行はアフリカの恵まれない子供たちへの支援財団である「ロジャー・フェデラー財団」に献金しています。
また、ウィンブルドンのオフィシャル・タイムキーパーである高級腕時計メーカーのスイス・ロレックス社とは、契約期間を設けず、800万ドルで契約。高級チョコレートメーカーのスイス・リンツとは、400万ドル(約4億2270万円)で2022年まで契約しています。
高級自動車メーカーのドイツのメルセデス・ベンツ社との契約は、2017年から2027年の10年間。年間500万ドル(約5億2840万円)で契約しています。高級シャンパンメーカーとして知られるフランスのモエ・エ・シャンドン社とは、2012年から契約を結んでいて、今年の契約金は800万ドル(約8億4540万円)です。
フェデラーは、プロに転向した時からウィルソン社のテニスラケットを使用していますが、ウィルソン社とは一生涯契約しており、現役引退後もブランドアンバサダーとして起用される予定です。
また、日本の企業であるユニクロ(ファーストリテイリング)と長期大型アンバサダー契約を結びニュースとなりましたが、ユニクロとは年間3000万ドル(約31億7000万円)で10年契約を結んでいます。
これらのスポンサー企業は、フェデラー選手のイメージである、品位とエレガンス、高いクオリティ、フェアで模範的であること、などを求めています。
大坂なおみ・錦織圭も多くのスポンサーと契約
日本人テニスプレーヤーの大阪なおみ選手と錦織圭選手も多くのスポンサーと契約しています。
それぞれの契約について見てみましょう。
大坂なおみ選手は2020年現在15社とスポンサー契約締結
2018年の全米オープンで四大大会初優勝を飾って以来、翌年の全豪オープンでも優勝して世界ランキング1位を達成、トントン拍子に世界のトッププレーヤーに上り詰めた大坂なおみ選手。
今では、日本企業とアメリカの企業を中心に15社との間で約41億円にのぼるスポンサー契約を結んでいます。
スポンサー契約を結んでいる企業には、所属契約をしている日清食品や腕時計のシチズン、自動車の日産自動車や化粧品の資生堂、スポーツ食品の森永製菓や衛星放送のWOWOW、生活用品のP&GやスポーツドリンクのBODYARMOR、疲労回復機器のHYPERRISEなどがあります。
また、10歳の頃からラケットを供給しているヨネックスやウエアとシューズのナイキ、試合の移動などでサポートを受ける旅客運送業の全日空などと契約しています。
錦織圭選手も2020年現在15社とスポンサー契約を締結
錦織圭選手は、真面目で真摯にテニスに取り組む姿勢やフェアでクリーンなイメージとグローバルな活躍で知られていて、スポンサーの申し込みが後を絶たないとされています。
2020年現在、錦織選手は15社程度とスポンサー契約を締結しており、収入は年間約35億円といわれています。
スポンサー企業として、所属する日清食品をはじめ、寝具のエアウィーヴや金融・信販会社のジャックス、建設材料・住宅設備メーカーのリクシルや飲料メーカーのアサヒビール、通信のNTTグループや衛星放送のWOWOW、医療品の久光製薬やイギリスの高級自動車メーカーのジャガー、スポーツ食品メーカーのウィダー(森永製菓)が名を連ねています。
また、ウエアはユニクロ(ファーストリテイリング)と長期契約を、そして、ラケットはウィルソンと生涯契約を結び、シューズはナイキ、旅客運送業は日本航空と契約を結んでいます。
まとめ
スポンサー契約は、企業にとって自社のプロモーションやブランディングにつながるものであり、選手にとっては競技生活を支える重要なものです。
ランキングが上位になるにしたがって、多くの企業とのスポンサー契約が結ばれますが、契約当事者双方の利益に加え、社会的貢献に寄与できる形での契約が求められるといえます。
(TOP写真提供 = Maxisport / Shutterstock.com)
《参考記事一覧》
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