2020年に開催がせまる東京オリンピック・パラリンピック。チケットの当選結果の発表がなされたり、完成間近となった新国立競技場が公開されるなど、大会に向けた期待感も高まっています。(2019年7月現在)世界中から多くの観客が集まることも予想され、その経済効果にも注目が集まっています。そこで今回は、オリンピックによってどのような経済効果が見込まれるのか、検証してみましょう。
そもそもオリンピックの経済効果とは?
そもそも、オリンピックによる経済効果とは、何なのでしょうか?
オリンピックにおける収入は、スポンサー収入やテレビの放映権料金、入場料や記念グッズによる収入が主なものとしてあげられますが、このほかにオリンピック開催のための施設の建設費や大会関係者の宿泊費、インフラの整備など、さまざまなものが含まれます。
インバウンド大国を目指している日本
最近、「インバウンド」という言葉を耳にしたことがある方も多いと思いますが、「インバウンド」とは、「外から中に入ってくる」という意味を持つ言葉であり、日本においては、「訪日外国人観光客」という意味で使われます。
観光地が世界遺産へ登録されたり、和食ブームなどによって日本を訪れる外国人観光客が急増。
当初、2020年の訪日外国人観光客の目標数を2,000万人としていた政府ですが、2017年には2,869万人を達成したことから、2020年における目標数を4,000万人に上方修正しています。
この流れの中、東京だけでなく、全国各地で外国人を受け入れる環境が整えられつつあります。
東京オリンピック・パラリンピックの開催が迫る中、外国人観光客の受け入れ態勢を整えるために必要なのが
- 多言語への対応
- ネット環境の充実
- 異文化の理解
などです。
さまざまな国からの訪日外国人へ対応するためには、英語だけでなく、中国語や韓国語、フランス語やイタリア語など、多言語に対応できる体制を整えておくことが必要です。
また、ネット環境を充実させておくことで、SNSによる交流やアプリなどのサービスの利用にも対応できます。
さらに、ヒンズー教やイスラム教など、お祈りの習慣がある宗教に関する理解を深めておくことも、さまざまな文化の方が訪れる環境を整えるために大切です。
オリンピックの開催によって観光都市へと成長した北京やバルセロナなどをはじめ、オリンピックを開催した国や都市は、オリンピック後も長期間にわたってインバウンド効果が持続するとされています。
2020年にオリンピックが開催される日本でも、オリンピック終了後も訪日外国人数が伸び続け、インバウンド大国へと成長することが期待されています。
東京オリンピックで期待される経済効果は30兆円超え!?
東京都が2017年に発表したデータによると、2020年の東京オリンピック・パラリンピックに関連する経済効果は、オリンピック招致が決まった2013年から大会終了後の2030年までの18年間で、約32兆円といわれています。
その内訳は、大会開催の2020年までが21兆円、大会終了後から2030年までが11兆円。
その6割は東京都、4割がそのほかの地域で見込まれる経済効果とされていて、日本全国で経済効果が広がるとされています。
上記の経済効果は、直接的投資と付随的効果の2つに分けられます。
それぞれ、どのような項目があるのか、詳しく見ていきましょう。
直接的投資とは?
東京オリンピックにおける直接的投資とは、競技施設や選手村の建設、大会運営費や大会観戦者の支出、企業のマーケティング活動費などが含まれます。
みずほ総合研究所の試算によると、直接的投資の経済効果は約2兆円とされています。
付随的効果とは?
東京オリンピックにおける付随的効果は、バリアフリー化や耐震化、交通インフラなどの整備をはじめ、ホテルや商業施設などの民間施設の活性化、報道関連システムや運営費、そして、訪日外国人客の増加などが含まれます。
付随効果の経済効果は28兆円に上るとされていて、直接効果の10倍以上となっています。
実は東京オリンピック開催で観光客は減る?なぜ?
約32兆円もの経済効果が見込まれ、インバウンド観光も増えると予想される東京オリンピック・パラリンピックですが、オリンピック・パラリンピックの開催によって観光客が減少するともいわれています。
実際に、過去のオリンピック開催都市を見てみると、オリンピック開催時に観光客が減少した、ということも。
その理由として、オリンピック開催時期は「ホテル代が高い」「予約が取りにくい」「飛行機が混み合う」などの状況が予想され、この状況を避けるために旅行を控える人もいることが挙げられます。
また、オリンピックが開催される月に観光客が集中し、開催月の前後は観光客が減少する、ということも。
その結果、年間でみた時に観光客が減少している、というケースもあるようです。
東京の観光客より地方の活性化がはかれる可能性のある東京オリンピック
オリンピック・パラリンピックが東京で開催されると決定した時、地方の市町村長の中で聞かれたのが
「しょせん東京の話だから関係ない」
「東京に公共工事が集中して、地方に人手や物資が足りなくなったらインフラ整備が遅れるのではないか」
という声だったとされています。
その思いに対して、日本に向けられている目を東京だけでなく地方にも向けてもらおうという想いから立ち上げられたのが「2020年東京オリンピック・パラリンピックを活用した地方活性化推進首長連合」です。
全国の市町村長が参加できるこの「首長連合」は、東京オリンピックを地方が変わるチャンスととらえて、SNSによる情報発信を行っています。
「首長連合」の取り組みについて、詳しく見ていきましょう。
東京オリンピックは地方が変わるチャンス!
「首長連合」が掲げているのが、「東京オリンピックは地方が変わるチャンスである」ということ。
1964年に開催された東京オリンピックの際には、新幹線や高速道路といったインフラの整備が進みましたが、今回は、地方への大型投資は望めません。
しかし、訪日外国人数の増加に伴って宿泊施設の不足が予測される中、地方で民泊を利用する外国人が増えることが予想されています。
地方の民泊を利用する外国人に対して地方の魅力を発信することができれば、地方の活性化にもつなげることが可能です。
SNSで地方の魅力を発信
「首長連合」では、「虎ノ門ヒルズ」の近くの「新虎通り」で、「旅するマーケット」を開いています。
この「旅するマーケット」とは、およそ100メートルの区間に飲食店や物販の店が並ぶもの。
「お茶の文化」や「日本の海と山」など、3か月ごとに設定されるテーマに応じた物品を販売しています。
たとえば、「お茶の文化」のテーマの際は、茶の葉をはじめ、茶わんや茶せん、ヤカンといったお茶に関わるものを販売。
テーマに関連する日本各地の魅力を伝える取り組みを行っています。
そして、この情報をSNSやウェブサイトを使って発信。
魅力を感じた商品の産地を訪ねてみたいと思わせるのが狙いです。
まとめ
東京オリンピック・パラリンピックの開催が約1年後に迫り、期待感が高まっています。
直接的・間接的な大会関連の経済効果は約32兆円ともいわれていて、東京だけでなく日本全体での経済効果が期待されています。
東京オリンピック・パラリンピックの開催で海外の目が注目する今、大きく発展するチャンスが到来しているといえるでしょう。
(TOP 写真提供 = littlekop / Shutterstock.com)
《参考記事一覧》
オリンピックの影響はどれくらい?どんなインバウンド対策をすればいい?