ワールドカップやオリンピックは多くの人に支えられていますが、その中にボランティアとして活躍する人も数多くいます。ロシアのワールドカップでは、ボランティアの方が積極的に働き、大会成功につながりました。日本のオリンピックも、ロシアのワールドカップを見習えば成功すると思う方もいるのではないでしょうか。そこで今回は、ロシアワールドカップのボランティアについて、
- ロシアワールドカップのボランティアの規模
- ロシアの政治事情
- ワールドカップに向けての取り組み
の3つの観点から解説。ロシアワールドカップの成功の裏側に迫ってみました。
ワールドカップロシア大会のボランティアは3万人超
ワールドカップロシア大会では、3万人をこえるボランティアが集まりましたが、ボランティアには、実に17万6千人をこえる人が応募しました。
そして、この申込者の1/3はロシア以外の方。
つまり、ワールドカップロシア大会には、国外からも多くのボランティアが集まっていたのです 。
ボランティアの平均年齢は24歳と若く、多くの若者がボランティアに参加していたともいえます。
また、若者に混じり、ベテランボランティアもたくさん参加していました。
国や年齢に関わらず、たくさんのボランティアがロシアワールドカップに参加したのです。
ベテランも多く参加
前述したように、ボランティアの平均年齢は24歳。
若者が多く参加した大会でしたが、若者だけでなくベテランボランティアも数多く参加していました。
ベテランボランティアが参加した背景にあるのは
- 若い人と混じっていることで、年齢のことを忘れられる
- ボランティア活動によって、嫌なことや難しい問題を一時的に忘れて、真剣に取り組める
ということ。
ボランティアは、高齢者の一つの居場所としても機能しているといえます。
実際に「金髪の年齢」と呼ばれるチームが作られていて、100歳までであれば誰でも受け入れているのです。
つまり、ボランティアに参加することで高齢者の方が一人にならない仕組みが出来上がっているわけです。
ベテランボランティアの存在は、若いボランティアにも影響を与えています。
ベテランボランティアは若者ボランティアのお手本となるうえ、ボランティアのまとめ役としてボランティアチームを引っ張る役割を担っていました。
若者とベテランボランティアがうまく機能することによって、ワールドカップロシア大会は成功を収めたのです。
ワールドカップロシア大会のボランティアは無報酬。成功した理由は?
ワールドカップロシア大会のボランティアは無報酬でしたが、ボランティアたちは献身的に働きました。結果、スムーズな大会運営ができたのです。
ボランティアに支給されたのは、会場までの交通費と食事代、そしてユニフォームやグッズです。賃金はもちろん、宿泊費も出ませんでしたが、たくさんの方が応募しました。
ボランティアが無報酬であったにもかかわらず、ワールドカップロシア大会が成功した背景には、ロシアの2つの事情が見え隠れしています。
その2つの事情について詳しく見ていきましょう。
ロシア国民の心情
まず1つ目に挙げられるのが、ロシア国民の心情です。
ロシア国民は、ワールドカップの開催を通して諸外国の人が抱くロシアに対する印象を良くしたい、と願っていました。
ロシアは、ウクライナ危機やシリア問題などで欧米諸国と対立しているため、ヨーロッパにおけるロシアの印象は、決して良いものではありません。
ロシア国民は、ワールドカップで好印象を与えることで、諸外国が持つロシアのイメージをくつがえそうとしていました。この思いを証明するかのように、ロシア国内から、定員の10倍をこえるボランティア参加申し込みがあったのです。
ロシアが良い国だと知ってほしいという国民の強い思いが、ワールドカップでの外国人観光客に対するおもてなしにつながり、観客の満足度上昇につながったといえます。
プーチン大統領の政策
2つ目の事情は、プーチン大統領の政策です。プーチン体制のロシアでは、ボランティアに特別な意味付けがなされています。
具体的には、若者の健全な社会参加を促して、体制への所属意識を植え付ける方法として、ボランティア活動を重視しているのです。
実際に、プーチン大統領は2017年の大統領選挙の直前に、若者ボランティアを表彰するイベントに出席。2018年には、2018年をボランティアの年に指定する大統領令にも署名しました。
政府としても、ボランティアについての情報を網羅したポータルサイトを設置するなど、ボランティアに力を入れています。
政策として、若者のボランティア起用を推し進める理由には、閉塞感を感じている一部の若者が、反プーチン運動の先頭に立っていることが挙げられます。
反プーチン運動に若者が参加しているということに対する危機感から、若者を取り込んで閉塞感を打開する方法をさぐった結果、政府に好意的な若者を、ボランティアとして動員しようとしました。
こうした政治的要因も絡み、ロシアワールドカップへのボランティア起用が成功したともいえるのです。
このロシアワールドカップの例を、2020年に行われる東京オリンピックの参考にしようとする声もあります。
しかし、国内の事情に違いがあるので、同じように考えるわけにはいかないともされています。
ワールドカップロシア大会では、ボランティアを対象としたロシア語のオンラインコースも
ワールドカップロシア大会では、オンラインでロシア語を学習し、実際にロシアに来国するまでに必要な語学を学べるサービスが無料で提供されていました。
主催したのは、モスクワ南西地区にあるプーシキンロシア語大学です。
オンラインコースはワールドカップ開催の4ヶ月前から実施され、多くのアクセスを集めました。
このような取り組みのおかげで、海外からもたくさんのボランティアが集まったのです。
まとめ
ワールドカップロシア大会は、無報酬にも関わらず多くのボランティアが集まり、成功を収めました。
しかし、その裏にはロシアが抱える政治的要因もありました。
ロシアでの成功例を東京オリンピックにそのまま当てはめていくのではなく、あくまで一例として捉えておくことが重要だといえます。
日本独自のボランティアの成功例を示すことが、東京オリンピックの大きなポイントといえるでしょう。
(TOP 写真提供 = Brendan Howard / Shutterstock.com)
《参考記事一覧》
サッカーW杯2018のボランティアはロシア語を学ぶ(SPUTNIK)
「物凄い感覚」 ボランティアがサッカーW杯ロシア大会での活動を語る(SPUTNIK)