【選書】グローバル・スポーツビジネスを読み解く3冊――Blue United 中村武彦

スポーツ業界のフロントランナーに選書をいただく本企画。今回は、米サッカーリーグMLSがいよいよ2月に開幕するのにちなみ、日本人として初めてMLSのビジネスに携わり、その後Blue United Corporationの創業者CEOとして国内外でスポーツビジネスを手がける中村武彦氏に、国際化が進む近年、グローバル・スポーツビジネスを読み解くための3冊を挙げてもらった。

『エスキモーに氷を売る―魅力のない商品を、いかにセールスするか』

Ice to the Eskimos
John Spaltstra
Akiko Nakamichi
Sports business
『エスキモーに氷を売る―魅力のない商品を、いかにセールスするか』(ジョン・スポールストラ著、中道暁子訳、きこ書房)

NBAのポートランド・トレイルブレイザーズ、デンバー・ナゲッツなどの幹部を歴任し、当時NBA最下位の観客動員数で人気もなかった、ニュージャージー・ネッツを見事にリーグ一のチケット売上にまで導いた、アメリカの伝説的なマーケターであるジョン・スポールストラ氏の2000年に出版された名作です。

値引きをすることは誰にできるし、無料招待券は死への第一歩という彼の考え方や、逆にいかに付加価値をつけるのか?チームの魅力とは何か?スポーツビジネスは何が商品なのか?あなたはファンに何を売っているのか?など、ありとあらゆるスポーツビジネスの特異性を捉えたアイデアや発想を次々に繰り出す姿勢は、私の考え方の根幹を成しています。実際、現在のアメリカのスポーツビジネス界においても、あちこちでこの考え方が浸透しています。

時代を超えても、今なおスポーツビジネス界の特異性を理解する上での必読書ではないかと考えます。また、彼がこの後に出版した『エスキモーが氷を買う時ー奇跡のマーケティング』も併せて読むことをお勧めします。

『プロスポーツ選手の法的地位―FA・ドラフト・選手契約・労働者性を巡る米・英・EUの動向と示唆』

Legal status
professional athletes
Free Agents
Draft
Keiji Kawai
『プロスポーツ選手の法的地位―FA・ドラフト・選手契約・労働者性を巡る米・英・EUの動向と示唆』(川井圭司著、成文堂)

法律は業界や分野によって多岐に渡るもので、スポーツビジネスの特異性に沿った法律「Sports Law(スポーツ・ロー)」は、日本ではまだ馴染みが薄いのが現状です。しかし本来、権利ビジネスであり、グローバルであり、また様々な制度や規制、規程を必要とするスポーツビジネスにおいて、契約書や法律への造詣は必須です。

多くのプロスポーツチームのGMや球団社長が、MBAではなく弁護士資格を保有することが当たり前に近い現在、スポーツ・ローへの理解を持つことは必須となってきています。スポーツ・ローの理解に基づいた交渉や契約書の組み立ては、戦略を要し、また国によって内容が変化するのも非常に面白い。それ故に、私もアメリカのMBAでアメリカのスポーツ法務を勉強した後に、スペインのマドリードで欧州のスポーツ法務を修学しました。

その難解な法律を、丁寧に日本語で解説してくれたこの本なしに、今の自分はないとまで思える名著です。アメリカ4大リーグや、イングランドプレミアリーグ、欧州サッカーの労働法・契約法・経済法を巡る議論と裁判例を詳細に検証しており、日本のプロ選手・実業団選手の法的地位の再考に向けた、お勧めの一冊です。

『海賊と呼ばれた男』

A man called a pirate
Hyakuta Naoki
海賊とよばれた男』(百田尚樹著、講談社)

もはや説明する必要もない、映画にもなった、出光興産創業者の出光佐三をモデルとした主人公・国岡鐡造の一生と、出光興産をモデルにした国岡商店が大企業にまで成長する過程が描かれた小説です。いわゆるスポーツビジネス書でも、一般的なビジネス書でもないですが、現在グローバルに会社経営をしており、弊社のビジョンも「日本のスポーツビジネスが世界トップレベルになるためにその発展と国際化に貢献する」と標榜をしている私には、大きな影響を与えてくれた上下巻でした。

日本を代表して世界とビジネスで渡り合う中で、大切にしないといけないことが本書には描かれています。スポーツと石油は、商材は異なるものの、共に世界のどこに行っても人々の生活の中に存在するものであり、どちらも一国内で完結するものではなく、世界が舞台となるビジネスです。

今後スポーツビジネスに関わるとき、グローバルな世界が広がるスポーツだけに、世界を相手に獅子奮迅するこの物語は色々と勉強にもなり、感化もされる作品ではないかと考えました。

日本は海外の優れたものを取り入れて、それを世界一にすることに非常に長けています。それは車でも家電製品でも、色々なところで見て取れます。最初の2冊はスポーツビジネスの特異性、原理原則を理解するのにとても役に立ち、3冊目は日本が海外と伍するために非常に勇気をもらえる本です。まだこれから大きく発展するであろう日本流のスポーツビジネスを構築していく中で、是非合わせて読んでみてはいかがでしょうか。

◇中村 武彦(Blue United Corporation CEO)

青山学院大学卒業。UMASSスポーツマネジメント修士課程、及びスペインISDE法科大学院修了。NEC海外事業本部・北米営業部勤務を経て、2005年に、日本人として初めてMLS国際部入社。2008年、アジア市場総責任者として世界初のパンパシフィック選手権を設立。2009年にFCバルセロナ国際部ディレクター(北米、アジア、オセアニア責任者)などを歴任後、独立し2015年にBlue United Corporationを創設。

鹿島アントラーズ・グローバルストラテジーオフィサー、MLS Players and International Relationsコンサルタント、大宮アルディージャ・グローバル強化担当、パシフィックリーグマーケティング国際事業開発担当・スペシャルキャリアアドバイザーなども務める。2012年にはFIFAマッチエージェントライセンスも取得し、2018年にパシフィックリムカップを創設。同年プロeスポーツチームの「Blue United eFC」も立ち上げ。

2017年より青山学院大学地球社会共生学部の非常勤講師を務める。著書:「MLSから学ぶスポーツマネジメント~躍進するアメリカサッカーを読み解く(東洋館出版)」。受賞等:2019年サッカー本大賞、2015年UMASS「Alumni on the rise Award」、2017年東京ニュービジネス協議会  「国際アントレプレナー賞」、2018年及び、2019年SPIAアジア「年間最優秀国際スポーツイベント賞ファイナリスト」など。


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