社会環境の変化やテクノロジーの興隆、そしてスポンサーやファンのニーズの変化など、スポーツ団体の経営環境が大きく変わる中、近年、コンサルティングファームの存在感が大きくなってきている。実際にコンサルティングファームはどのような支援を行なっているのか?そして、スポーツ団体はどう活用できるのか?スポーツ界で多数のプロジェクトを手がけるアビームコンサルティング株式会社 執行役員の久保田圭一氏に聞いた。
スポーツ界全体を見渡して、課題を共に解決していく
スポーツ界に限らず「コンサルティング」という言葉は一般的になってきているが、その実態はなかなか正しく理解されていないかもしれない。「事務的な事柄について、相談に乗ったり指導したりすること」というのが辞書による定義だが、久保田氏は、「企業の抱える経営課題を解決するのがコンサルティング」だとして、次のように説明する。
「企業には売上増加からコスト削減まで様々な課題が溢れています。また売上増加といっても新規顧客の開拓をするのか、既存顧客の単価を上げるのかなど課題をブレイクダウンしていくことになる。さらに問題点を突き詰めると、マーケティング施策がうまくいっていなかったり、適切な人材が配置されていなかったり、情報を集めるシステムが良くなかったりとケースは様々。問題点を見つけ出し、それを解決するのがコンサルティングの仕事です」
約25名のメンバーで構成されるアビームコンサルティングのスポーツ&エンターテインメント事業は2017年にスタート。その発端は、スポーツ界における「お金の流れ」への問題意識だったという。
「スポーツ界は勝利のために投資することに重きが置かれて、それ以外でお金を稼ぐために投資しようという意識がまだまだ醸成されていません」
スポーツでは「勝つ」ための投資は必要で、勝利や優勝を目指すからこそファン、サポーターからの応援が得られ、スポンサーからの支援も入る。ただし、「勝つこと」だけに依存してしまうと、勝利を逃したときの代償は大きい。勝ち負けはコントロールできず、経営上のリスクにもなる。
スポーツ界はステークホルダーが多いという特徴もある。業界全体を俯瞰して、各プレイヤーをつなぎ合わせることができれば、「お金の流れ」は健全化し、スポーツのさらなる興隆につながる大きな可能性があるのだ。
リーグやクラブといったコンテンツホルダーだけでなく、スポーツ庁や地方自治体などの行政、ハードに関わるスタジアム・アリーナ関連企業、そしてスポーツメディア、その他スポーツを活用したい、スポーツでビジネスをしたい企業など、業界は多岐にわたり、エリアも全国各地と広い。
久保田氏は「当社では『お金の循環に関わる人たち全体を捉えよう』と言っています。当社が誇るネットワークやリソースを使って、全体を見ながら顧客、仕事に向き合います」とも付け加える。
40年のコンサルティング経験をスポーツ&エンタメ分野に
アビームコンサルティングは40年以上の歴史を持ち、日本・アジアを中心として約6,900名のコンサルタントを抱える。目指すのは、日本発・世界一のグローバルコンサルティングファームだ。
手がける業界も製造から小売・流通、金融、不動産、公共サービスまで多岐にわたり、経営戦略から財務、人事、マーケティング、ITなどを幅広く支援する。民間企業の成功事例も多い。「一般事業会社で上手くいっている取り組みをスポーツ界で活用することもある」と、久保田氏はいう。
一例が、セレッソ大阪との取り組みだ。アビームコンサルティングはクラブ向けに、スポンサーセールス専用のSFA (Sales Force Automation:営業支援ツール)を新規導入し、スポンサーセールスチームの業務改革を支援した。背景には、同社のBtoBセールス領域の豊富な改革支援実績と、国内トップクラスの取り扱い数となるセールスフォースの知見があった。
「これは企業の営業管理の仕組みをスポーツ界に取り入れた例です。スポンサーの権利をしっかりと管理しているクラブが少ない中、権利の可視化、アクティベーション(※)状況の管理による営業の高度化を目的にしました」
(※:ユニフォームや看板などの従来の広告的な露出だけでなく、スポンサーとしての権利をマーケティングやコミュニケーション活動などに活用して、企業の課題解決に活かしていく取り組み。「権利活用」とも呼ばれる)
その上で、久保田氏は、スポーツと企業の新たな関係性についても述べた。
「スポーツはビジネスのいわば『実験環境』として、とても良いと思います。スポーツファンの方は熱心に応援してくれていて、良いもの、悪いものに素直に反応してくれる。つまり、何かを試すというのがやりやすい環境だと考えています。現在、スタジアムやアリーナを軸に様々な実証実験の場として活用される例も増えてきていますが、まさにそういう視点を我々も持っています」
スタジアムでは5Gなどのテクノロジーを核とした観戦体験の向上や、映像解析など新たなソリューションの実装が進んでいる。こういったハード面以外にも、ユース年代も含めたクラブ全体、選手や試合のコンテンツなどソフトも含め、イノベーションが生まれる可能性のある領域は多い。
相談から実行までのコンサルティング・プロセス
実際にコンサルティングファームの支援に興味はあるが、どうやって依頼したら良いのか分からないというスポーツ団体もあるかもしれない。久保田氏には、コンサルティングファームに相談した際、どのような形で話が進んでいくのかも聞いてみた。
アビームコンサルティングでは、まず、一度相談が来れば現状を把握するためにヒアリングや視察、そして分析を行う。「どんな将来像を描いているのか、どれくらいのリソースがあるのかを聞いていくのが大事」と久保田氏。スポーツ団体の現状分析に約2週間、加えて外部環境の分析を行い、およそ3週間で現状把握ができる。現状を可視化するだけではなく、課題仮説を導き出して、その後取り組むべき優先度も決めていくことになる。
「そもそも『自分たちの課題が何なのか』を正確に捉えられていないケースも多い。表層的に課題だけでなく、まずはそれを深堀りしていき、根本的な原因を突き止めて解決策の提案をしていきます。漠然とした問題意識でもよいので、まずは何をどう進めていくべきかというところからでもお気軽に相談いただければと思います」
取り組みの内容を決めて契約した後、実際に課題解決のプロジェクトを実施すると標準的には3ヶ月ほど。現在は、特に国内競技団体をはじめとして、スポーツ庁によるガバナンスコードの策定による中長期経営計画の策定に関する依頼が多いが、クラブ単位ではスポンサーシップセールスの改革は引き続き関心は高いという。
とはいえ、プロジェクトを通して実際に「結果」「効果」が出るのは、年単位を要する場合がほとんど。したがってスポーツ団体側も辛抱強く、中長期目線で取り組んでいくことが求められるが、その途中、思わぬ付加価値を感じてくれたクライアントもこれまでに多かったと久保田氏はいう。
「あるクライアントから言われたのは、プロジェクトを通して職員の方々の考え方やスキルが変わり、成長していったということです。私たちは現状分析やファシリテーション、プレゼンテーションの訓練を積み重ねてきたコンサルティングのプロです。職員の方々にそれを共有しますが、それを学んでいただく機会にもなっているようです」
変革に欠かせない「変わりたい」という熱意
最後に久保田氏は、コンサルティングを依頼するクライアント側へ希望することについても語ってくれた。
「我々も魔法をかけられるわけでないですから(笑)、『どうにかして変わりたい』という問題意識や情熱を持っている方々と一緒にスポーツ界を変えていきたいと思っています。逆にいえばその情熱がなければコンサルタントがいくら頑張っても変わることは難しいでしょう」
依頼を受ける際、現状が把握できていればいるほどコンサルティングファームもスタートが切りやすい。組織トップの理解度や温度感、組織内のパワーバランスなど「生々しい」情報もあれば適切な助言もしやすくなる。多くのケースでは中間管理職からの相談を受けるが、経営層の承認や理解がまだ得られていない状況からでも、寄り添って共に説得していくと久保田氏はいう。
「変えたいと思っている方の熱意と行動力さえあれば、スポーツ団体は変わります。そして、我々のアドバイスを素直に受け取ってくださって、まずは検討するスタンスで一緒に動いてもらえれば、より成果に近づくことができると思います」
アビームコンサルティングのホームページにはスポーツ領域の事例も並ぶ。問い合わせは【こちら】から。
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