「エンタメとしてのスポーツを」エイベックスのクラウドファンディング「Bridge」が生み出す新たな可能性(エイベックス加藤信介×HALF TIME磯田裕介)

エイベックスが子会社TWHを通じてクリエイターを支援するため新たに立ち上げる、エンタメ特化型のクラウドファンディング「Bridge(ブリッジ)」。近年、エンタメとしても注目を浴びてきたスポーツ領域でのクラウドファンディングの活用拡大に向けて、同社はHALF TIMEと業務提携も行う。「Bridge」とは何か?スポーツとクラウドファンディングにはどのような可能性があるのか?エイベックス・ビジネス・ディベロップメント株式会社 代表取締役社長 兼 株式会社TWH 代表取締役 加藤信介氏とHALF TIME株式会社 代表取締役 磯田裕介に聞いた。

エイベックス「もう一回、これからに合ったエンタメ事業を」

エイベックス・ビジネス・ディベロップメント株式会社 代表取締役社長 加藤信介氏(左)

エイベックス・グループの新規事業開発を担うエイベックス・ビジネス・ディベロップメント。ミッションはエイベックス・グループの強みであるアセットを使って、既存の概念や価値観に捉われることなく、投資機能を含めて新規事業を創出することだ。設立は今年7月になる。

では、何故エイベックスはそのようなグループ会社が必要だったのか?

これまでエイベックスはファンクラブ、マーチャンダイジング、アーティストマネージメントなど、音楽を中心としたエンテーテインメントの“360度ビジネス”で多くのノウハウを培ってきた。一方で、外部環境とテクノロジーは急速に変化を続けており、事業展開も変わってきていると加藤氏はいう。

「同じものでも今までの視点から見るか、これからの視点から見るかで、やるべきことや作るべき事業が変わってきます」

外部環境によってこれまでの事業構造が根本的に変化する可能性や、テクノロジーの導入により既存の事業がアップデートされ、価値が再発見される場合もある。

事業の中心に存在するアーティストに関していえば、一人の絶対的なスターが生まれる環境から多様な人気者が生まれやすい時代へと移り変わっている。これまではメディアが推すアーティストに人々が憧れる時代で1人にマネタイズの機会が集中していたが、今はソーシャルメディアなど情報経路が複雑化して人々の好みも多様化してきている。

身近に感じるか、共感できるかで人々は魅了され、人気者の対象は芸能人だけでなく経営者やユーチューバー、インフルエンサーなどに広がり、それぞれが特定のセグメントで人気を集めるようになった。マネタイズする方法も多角化し、彼らを支援するプラットフォームも広がってきている。

従来のライブ興行、CD売り上げ、ファンクラブなどの接点だけではなく、世の中ではクラウドファンディングという新たな収入源も近年出現した。エイベックスがエンタメ特化型のクラウドファンディングを立ち上げたのは自然な流れだったとも言える。

「エイベックスの強みや過去のアセットを使って、もう1回、これからに合ったエンタメ事業群を作りたいと思っています」(加藤氏)

「Bridge」が持つ強みをスポーツへ

Bridgeは9月1日からサービス提供が開始される。画像提供=エイベックス

エイベックスはクラウドファンディングに関して、これまで既存のプラットフォームと提携して取り組んできた。これからもそれぞれの強みを持ったプラットフォームと連携していくという考え方に変わりはないが、エイベックスがクラウドファンディングの価値を伝える「通訳」としての役割を担う必要性について、加藤氏は語った。

「エンタメ領域に関しては、私たちが思っているほどクラウドファンディングが浸透しきっていません。より業界の中で当たり前の手段として使ってもらうことが、今後のアーティストの活動や、彼らが人気者になる過程の中で重要な要素になると思います」

アーティストなど起案者がクラウドファンディングで資金を集めたその先の、ライブ開催やCD制作もワンストップで支援するノウハウがエイベックスには存在する。これを大きな差別化要因として、自社でもクラウドファンディングサービスを行うに至った。

さらなる展開が、スポーツ界への進出だ。「スポーツもエンタメのカテゴリーの1つ」と考えるエイベックスでは、HALF TIMEとの業務提携を通じて、スポーツコンテンツを活用したクラウドファンディングにも注力していく。HALF TIMEが持つスポーツ領域のネットワークの活用や、HALF TIMEが運営する媒体でクラウドファンディングのプロジェクトの訴求力を上げていくのが狙いだ。

音楽から始まったエンタメ会社に、どうスポーツを取り入れていくか。スポーツチームやアスリートが抱える課題解決や、ファンとの繋がりをより強固なものへとする活動支援の一助を担える点を加藤氏は想像している。

「Bridgeを立ち上げる構想段階からスポーツ業界にも価値貢献出来たらと思っていた中で、HALF TIMEとの業務提携は非常に心強いです。スポーツに私たちが価値を提供できる貴重なきっかけになると思っています」(加藤氏)

スポーツに特化してきたHALF TIMEにとっても、エンタメ企業と組むことができるのは心強いと磯田も話す。

「スポーツチームでは、ファンコミュニティーの形成などにはまだまだ課題が多いと思います。このクラウドファンディングをきっかけに得られるエンタメ的な知見は、スポーツ団体にもニーズがあるのではないでしょうか」

クラブ、ファン…「長期的に全員がWin-Winに」

HALF TIME株式会社 代表取締役 磯田裕介(右)

ここで特筆すべきは、エイベックスのクラウドファンディングは、なにも新型コロナウィルスへの対応策ではないということだ。外部連携を経て自社でのプラットフォーム作りは、パンデミックが起こる前から計画していた。

例えば、アーティストの日常の活動として一般的なチケット販売ではなく、チケット込みのクラウドファンディングを事前に行うことで生まれるコミュニケーションは、ファンコミュニティーの形成においても新たな境地を拓く。

HALF TIMEにとっても、クラウドファンディングはスポーツ界でこれまで以上に推進したいと思っていた領域だった。現在は観客動員が思うようにできないチームも多く、新たな収入源を求める声は多い。ファンもクラブとつながる新たな方法を模索する中、クラウドファンディングのように「長期的に全員がWin-Winの関係を構築できる仕組み作りが必要」だと磯田は加える。

実際に「Bridge」がスポーツ団体にもたらす付加価値とは何か。加藤氏に伺った。

「私たちはプラットフォーマーという立ち位置では考えていません。クラウドファンディングを使ったことがないけど、興味はあるという方の壁打ちからお付き合いします。プロジェクト開始後はクリエイティブやプロモーションの視点でも協力できるでしょう」(加藤氏)

磯田もエイベックスが持つ強みと魅力について語る。

「Bridgeの強みは、エンタメ領域の知見に基づいて、より付加価値を提供できるところにあると思います。資金集めの支援だけではなく、クリエイティブなどのエイベックスのアセットを活かして、起案者の課題や希望に対してプラスアルファで価値を加えることができると思います」

スポーツでも「人の才能を最大化」

エイベックスがこれまで作り上げてきた価値は、「人の才能を最大化する」ことだと加藤氏はいう。それはアーティストやタレントだけに限らず、スポーツへと広がっていくこととなる。

エンタメ業界でも認知度、利用率にまだまだ伸びしろがあるクラウドファンディング。さらにこれまで以上にスポーツ業界でも導入され、それをきっかけとしてエイベックスと生まれる「スポーツ×エンタメ」の掛け合わせの可能性は計り知れない。

チーム単位ではチケットサービス、グッズ制作、ブランディングEC、ファンクラブ運営、そしてアスリート個人では、それぞれが持っている個性や面白さを引き出し、「アスリート以外の軸」にスポットライトを当てて競技以外にも活動の幅を広げていくのが、エイベックスがこれまで培ってきたノウハウだ。

「常に新たな挑戦を続けるクリエイター」と「彼らの創作活動を支援したいと願うサポーター」が、感動体験を共に作るプラットフォーム「Bridge」。HALF TIMEとの業務提携は、それをスポーツ界へと広げる取り組みの第一歩となる。

クラウドファンディングをきっかけに、エンタメ業界からスポーツ業界へどのような橋渡しが行われていくのか、その可能性を想像するとワクワクが止まらない。

■対談の様子はこちらの動画をチェック


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