【第6回】有森裕子が再発見した、スポーツだけが持つ可能性と希望

2020年の東京オリンピック・パラリンピックが近づく中、スポーツ界では競技性だけでなく「社会的インパクト」が強く求められてきている。そのような状況の中、独自の活動で注目を集めるのが、スポーツを通して知的障害のある人々の社会参加を応援する国際的なスポーツ組織「スペシャルオリンピックス(SO)」だ。SOを日本で率いる有森裕子氏に、運営に携わった経緯と今日までの歩み、マラソンを通して育まれた自らの人生観、そしてスポーツが持つ大いなる可能性と希望を伺った。

自分だけの価値を見出し、常に社会に発信していく。有森裕子氏はそれが新たな人生を歩み始める上で重要だと説く。最終回はスペシャルオリンピックスのビジョン、そして自身が改めて認識した、スポーツが持つ可能性と希望について語っていただいた。

前回インタビュー:【第5回】自分の価値で「セカンドステージ」を切り拓く――有森裕子のキャリア考

トヨタともパートナーに。「社会のために価値を生み出せる」仕事の面白さ

有森 裕子:公益財団法人 スペシャルオリンピックス日本 理事長。マラソン選手としてオリンピック2大会でメダルを獲得するなど活躍後、現在はIOC委員、日本陸上競技連盟理事も兼務し、国内外でスポーツを通した社会活動に取り組む。

――有森さんがスペシャルオリンピックスに関わられるようになったのは、ご自身が持っている価値を活用するという意味でも、理想的な流れだった印象を受けます

「だから私の夢としては、オリンピアンやスポーツの経験を通してたくさんの価値を育んできた人たちにも、私と同じようにどんどんこの活動に入ってきてほしいんです。そこは今回のインタビューの一番大事なポイントですね。私の熱い話もいいでしょうけど、現実的にはスタッフがすごく欲しいところなので(笑)」

――具体的には、どのような人材を必要とされていますか?

「ちょっとでも競技体験があるという方は、現役時代から余暇を通じて協力していただいたり、ボランティアのコーチとして是非、関わっていただけたりしたらと思います。スペシャルオリンピックスは様々な種目のプログラムを、各都道府県地区で行っているので、本当に現場の人手が欲しいんです。もちろん各地区の事務局でも、スタッフを随時募集しているところもあります」

――事務局では、どんな人材を求められているのでしょう

「現場からはバンバン、リクエストが出てくると思います(笑)。トヨタさんをはじめとする大企業に関わっていただいているのは奇跡的なことなんです。私たちも期待にお応えできるように一生懸命やっているんですけど、いかんせんマンパワーに限りがあるので、日々休まずに走り回りながら対応しているような状況になっていて」

「いきなり正職員になるのは難しくても、インターン的な立場で経験を積みたいとか、スポーツビジネスに興味のある方にも是非、応募して欲しいですね。社会のために価値を生み出せるというのは本当に楽しいですし、その喜びはなかなか体験できない。他の企業で単に仕事をするのとは、かなり違う楽しさがあると思いますから」

――2020年には東京五輪が開かれますが、現在、特に力を入れている活動はありますか?

「ユニファイドスポーツ、チームプレーの競技に力を入れているんです。世界大会も以前は1種目か2種目、バスケやサッカーくらいしかなかったのですが、今はほとんどの競技種目でユニファイド形式のものを実施するようになった」

――個人競技ではなく、チームスポーツであることの意味は決定的に大きい

「そう。結局、これこそが社会の姿でしょうと。そもそも開会式だって、様々な人たちが一緒に参加する、ユニファイド形式になっていますし。私たちとしてはそういうプログラムを通じて、社会の在り方を多くの人に伝え続けていきたい」

「例えばBリーグでもJリーグでも、スポーツを楽しみに来る人たちはメンタルが健全じゃないですか。そういう機会に8割の部分でスポーツを楽しんでもらいながら、残る2割でちょっとだけ大事なことを伝えさせていただく。こうするとイメージしやすいし、さっそく行動に移してくれたり、活動に入り込んできてくれたりするんです」

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国連親善大使でカンボジアを訪問。再発見したスポーツだけが持つ力

――スポーツは実際のアクションを起こしていく手段として有用なんですね

「私はそれを国連の親善大使として、カンボジアのような途上国で活動をしているときに学びました。現地に行って大切なことを伝えるために集会を開きますよと呼びかけても、なかなか人は集まらない。みんな生活が苦しいから、そんな余裕はないんです」

「でもそういうときにスポーツイベントをすると、みんなワーッと集まってくれる。そこでテントを立てて、ちょっとしたクイズ形式でイベントをやったりしながら、健康の大切さを伝えたりすると、彼らはそれを家庭や地域に持ち帰ってくれるわけです」

――まさにスポーツだけが持つ求心力です

「実際、国連はスポーツが持つ力を活用しています。私たちもまさにスポーツを通じて、いろんなことを社会に落とし込もうとしている。これこそがスポーツの持つ本当の価値であり、これから目指すべき社会をつくっていくことにつながると思うんです」

――有森さんのこれまでの歩みは、スポーツが持つ社会的な可能性をさらに広げつつ、その力を、ご自身でも再確認するプロセスだったと言えるかもしれません

「私はもちろんスポーツを通して生きてくることができました。でも、人生で一番長く時間を費やしてきたことが、こうして社会に役立つとか、何かを変える力を生み出す、あるいは極端に言えば、命を救うことにつながるということは、国連の活動を通じて現場に行ったときに初めて知ったんです」

「だからカンボジアでスポーツを役立てていく方法を学ばせてもらったときには、『ああ、スポーツをやってきて良かった、走ってきて良かったな』と心から思うことができて」

「私には、それがすごく有り難かったし、嬉しかった。あの経験がなかったら、たぶん今、スペシャルオリンピックスでこういうふうに活動することもなかったと思いますから」

 
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