「北海道をスポーツ王国に」北海道日本ハムファイターズが描く“スポーツコミュニティ”とは 

「スポーツコミュニティ」の理念を掲げ、プロ野球だけでない地域との関わりを進める北海道日本ハムファイターズ。スポーツ、野球、食、子供、北海道の5つの重点エリアで、基金や奨学金の運営、若手アスリートの支援など、継続的に活動に取り組んでいる。新たなボールパーク構想で更なる発展可能性を持つファイターズにおいて、ますます重要になる地域貢献。その活動を担う広報部SCグループ長の笹村寛之氏に、現在の取り組みと今後の展望を伺った。

「食とスポーツによる社会貢献」から始まったファイターズ

笹村 寛之:株式会社北海道日本ハムファイターズ 広報部 SCグループ長。札幌出身、小樽商科大学卒業後、米University of Louisvilleにて修士号(スポーツマネジメント)を取得。2005年に帰国後、北海道日本ハムファイターズ入社。通訳、グッズ、メディア、ブランド担当を経て2018年より現職。スポーツを通した社会貢献やスポーツの振興普及による自社ブランドの向上と地元北海道への貢献の両立を目指す。(c)H.N.F.

「私たちが目指すのは、スポーツの持つチカラ、スポーツというツールを使って出来ることにフォーカスして取り組んでいくことです」

運動機会を提供することでの身体的な健康。スポーツを見たり、したりすることで仲間を作る精神的な健康。スポーツを通して2つの“健康”を促すことが出来る。北海道日本ハムファイターズでは、この両方の健康を促す活動も含めて、地域社会に貢献する活動全般を、球団理念「スポーツコミュニティ」の頭文字を取って“SC活動”と呼んでいる。

「スポーツコミュニティ」を球団の理念として策定したのは2003年の(株)北海道日本ハムファイターズ設立時。2015年からは「SC活動」の呼称を定着させた。だが、遡れば1973年に日本ハムが「食とスポーツで社会貢献」を理念に球団を所有するに至ったときから、その考えは始まっていた。大社義規オーナーの想いが、2014年に引退し現在はスポーツ・コミュニティ・オフィサー(SCO)として活動する稲葉篤紀氏、そして現役選手たちや球団スタッフへと脈々と受け継がれてきている。

ファイターズが現在注力する地域貢献活動について笹村氏は説明する。

「プロ野球チームなので、野球の普及・振興に取り組むことは前提としてあります。しかし、ゆきのね奨楽金というウィンタースポーツの助成や、北海道の若手アスリートを支援するクラウドファンディングは、私たちだからこそ出来ることだと思います」

「ファイターズの企業理念が“ベースボール”コミュニティであればやっていない事業でしょうね。スポーツコミュニティという理念を掲げているからこそ出来る活動です」

ゆきのね奨楽金は、北海道に拠点を置くウィンタースポーツの競技、活動団体に対し奨学金を助成するものだ。スキーレッスンなどにマスコットのB☆Bが登場すると最初は「なぜファイターズが?」と疑問を持つ人たちもいたという。しかし、ファイターズが出向くことで喜んでくれる子供たちも大勢いる。そんな小さな喜びがポツポツと生まれることに「野球以外の取り組み」に意義が生まれてくる。

野球の競技人口が減っているという事実は数字としても現れており、プロ野球チームとしてそれに対するアクションを起こしていくのも必要と認識している。しかし同じように重要なのは、理念をもとに「ファイターズらしいエッセンスを取り入れて活動していく」ことだと笹村氏は話す。

夢を持って挑戦 「Challenge with Dream」の精神

2018年から北海道の次世代アスリートを支援するクラウドファンディングを開始。第二弾の苫小牧市出身で国内最年少ビリヤードプロ・平口結貴選手のファンディングは、目標の140万円を大きく上回りプロジェクトが成立した。同選手の世界一になる夢とスポーツ競技としてのビリヤードの認知向上を後押しする。(c)H.N.F.

前例にとらわれず、夢を持って挑戦することは、フィールド上の選手だけでなく球団スタッフの指針にもなっている。球団で掲げられる標語「Challenge with Dream」は経営理念そのものだ。

新しい企画を立案して、社内に提案する風通しの良さも球団内にはある。月に一回、新規や現状の企画について議論を行うSC委員会が設けられており、様々な部署の人間が含まれている。

ファイターズでのキャリアを通訳としてスタートさせた笹村氏をはじめ、様々な部署を経験した者は球団内に多い。「過去の経験が蓄積されていることで頭の中でシミュレーションができ、企画の想像がつきやすい」と語る。

笹村氏は、自身の留学経験も今の仕事に活きているという。これまでの全ての経験が活きていると話した上で、日本ではない外のスポーツの世界を肌で感じたのは大きい。

今、笹村氏がファイターズの一員として夢に挑戦し続けているのも、米国留学を通して改めて自分の故郷を考えるようになったからだ。地元北海道でプロスポーツに携わることのできる意味は大きかったと話す。

「海外のプロスポーツは憧れて見ていましたし、そこでキャリアを築くカッコよさも感じました。しかし、地元でプロスポーツに関わり、故郷に貢献できる魅力もそれに勝るとも劣りません」

「北海道をスポーツ王国に」稲葉SCOの想いは全員に

2014年に現役を引退した稲葉篤紀氏は、2015年にファイターズのスポーツ・コミュニティ・オフィサー(SCO)に就任。地域との共生を目指し精力的に活動している。(c)H.N.F.

「北海道をスポーツ王国に」

稲葉SCOもよく口にするこの言葉を実現するまでの道のりはまだまだ遠い。

ファイターズが北海道を本拠地として15年が経過した。だが広い北海道では、まだ地元でも試合に足を運んだことがない人や触れ合っていない道民も大勢いる。

しかし2023年には、よりスポーツで街を元気に、そしてスポーツで盛り上がる拠点として新たなボールパークも誕生する。

「新たなボールパークという共同創造空間が出来た時に、“スポーツコミュニティ”に 共鳴し、その空間に集ってくれる仲間たちを1人でも多く増やしておくプロセスだと考えて取り組んでいます。「空間」を創ることと、そこに集まる「仲間」を増やすこととが並行することで、「スポーツコミュニティ」の理想により近付くと考えています。」

そこに競技の垣根などは存在しない。今年から、ファイターズが主催する「FOOTSTEP FUND〜あしあと基金」というウォーキングのチャリティーイベントには、バスケットボールBリーグのレバンガ北海道の選手などがゲストアスリートとして参加している。過去にはバレーボールVリーグのヴォレアス北海道の協力で、野球の試合終了後にバレーボール体験会を開催したこともある。

「他の競技やチームの皆さんといい意味でお互い刺激し合いながら、結果的に北海道がスポーツ王国になればと思います。自分達だけでは出来ないことも、他の人と力を合わせることで出来るようになるからです」

野球に軸足を置きながらも、それ以外で輪を広げていくファイターズの取り組み。課題と向き合い、さらには地元の良さを引き出す活動で街を元気にしていく。地域に根付くだけではなく、地域を一つにし、活力を与えていく挑戦はまだまだ続きそうだ。

「ミスマッチが新しさを生む」 新たなつながりを生み出す場

北海道では、今年7月13日(土)に「北海道スポーツビジネスサミット in 小樽」が開催される。この場でも笹村氏は登壇を予定しているが、最後にこの会についての想いを伺った。

「SC活動にも言えますが、自分達のリソースだけでは出来ないことだらけです。しかし、世の中には色んなリソースを持つ方々がいて、そして、スポーツには、人々を結びつける力があります。このスポーツビジネスサミットでも色々な方とつながり合うことで、新しいことが生まれたり、今まで出来なかったことが出来たりするきっかけとなるのではないかと思います」

色んな人たちを巻き込み、協働していくことはSC活動そのものとも言える。

「私たちが持っていない経験や知識を持っている方々と一緒になることで、ある種のミスマッチが起こり、そこから面白いことや新しいことが生まれるんだと思います」

笹村氏も期待するサミットでは、多種多様なゲストの登壇が決定している。Jリーグアドバイザーであり欧州を拠点にするサッカーUEFAチャンピオンズリーグの専属代理店TEAMマーケティングの岡部恭英氏や、元サッカー選手で現在はアスリートのコンディショニング支援に取り組むAuBの鈴木啓太氏なども含まれる。

様々なバックグラウンドのゲストや参加者がもたらす「ミスマッチ」が、どのようなシナジーを生み出すのか期待したい。

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