田中将大投手の日本球界復帰という大きなニュースとともに、春季キャンプがスタートした今年の野球界。2月のHALF TIMEおすすめ書籍は、プロ野球に関連する3冊をピックアップしました。現役引退直後に千葉ロッテマリーンズの監督に就任し、昨シーズンはリーグ2位とチームを躍進させた井口資仁氏、監督として広島東洋カープに25年ぶりのリーグ制覇とリーグ3連覇をもたらした緒方孝市氏、球団社長として千葉ロッテマリーンズの経営を改革し、現在はJリーグ・清水エスパルスの代表取締役社長を務める山室晋也氏の書籍という3冊です。
井口資仁『もう下剋上とは言わせない 〜勝利へ導くチーム改革〜』
1996年に福岡ダイエーホークス(当時)に入団してプロ入り後、2005年に米MLBに挑戦し、2球団でワールドシリーズ制覇を経験した井口資仁氏。2009年の千葉ロッテマリーンズ入団後も2000本安打達成やチームの日本一など数々の記録を残した。2017年に現役を引退すると、同年オフにロッテの監督に就任。3年目となった昨季は、チームを2位でのクライマックスシリーズ進出に導いた。
本書『もう下剋上とは言わせない 〜勝利へ導くチーム改革〜』は、井口氏が目指す「本当に強いチーム」の姿とその作り方を明かした一冊。チーム内で新型コロナ感染者が続出し、若手主体での戦いを余儀なくされた中で2位フィニッシュを果たした昨季、井口氏は何を実行したのか。優勝争いを繰り広げるまでにチームを導き、今季日本一を目指す同氏が、その舞台裏を語る。
選手育成、試合分析、フロントへの提言など、この3年間で実行してきたチーム改革の全貌、そして「常勝ロッテ」を創りあげようとする同氏の思いや哲学を知ることのできる本書は、組織マネジメントに携わる多くの読者にとって必見の一冊。
緒方孝市『赤の継承 カープ三連覇の軌跡』
23年の現役生活を広島東洋カープ一筋で送り、盗塁王を3度、ゴールデングラブ賞を5度獲得するなど、長く主力として活躍した緒方孝市氏。2009年の引退後に同球団のコーチとして指導者キャリアをスタートさせ、2015年に監督に就任した。すると翌2016年にはチームを25年ぶりのリーグ制覇に導き、続く2016・2017年もリーグを制覇。球団史上初のリーグ三連覇を達成し、広島の黄金期を築く。
『赤の継承 カープ三連覇の軌跡』は、現在は野球評論家として活躍する緒方氏が、カープを三連覇に導くまでの軌跡を綴った一冊。勝つためのヒントを学んだという少年時代から選手時代、自らの指導方法を確立したコーチ時代、そして監督として奮闘した1年1年を振り返りながら、その素直な想いや哲学を明かす。
優勝候補と目されながら4位に終わった監督就任初年度の屈辱を経て、いかにして緒方氏は「常勝カープ」を作り上げたのか。その快進撃の裏側にある緒方氏のリーダー哲学は、良い組織をつくる上で有効なヒントになるはずだ。
山室晋也『経営の正解はすべて社員が知っている』
第一勧業銀行(現みずほ銀行)に入行し、銀行員としてのキャリアを積み重ねた後、2014年に千葉ロッテマリーンズの取締役社長に就任した山室晋也氏。2019年12月からは、Jリーグ・清水エスパルスの代表取締役社長を務めるなど、プロスポーツチーム経営において辣腕を振るっている。
本書『経営の正解はすべて社員が知っている』は、山室氏による千葉ロッテマリーンズなどの経営改革・組織改革をまとめた一冊。人気が伸び悩んでいたロッテにおいて、球団の最多観客数を更新し、社長就任から5年で黒字化、6年目には創業以来初の単体黒字を達成した。
チームの成績だけに頼らず、新規スポンサーの開拓や、サービス向上によるファン獲得で経営を立て直す。そして何よりも、球団職員と向き合い、抜本的な意識改革を行う。「山室流」の経営・組織改革へのリーダーシップを学ぶ一冊。
*
3月のシーズン開幕に向けて動き出したプロ野球界。各球団のチーム作りや経営戦略にも注目しながら、今シーズンを楽しんでほしい。
▶︎Jリーグやeスポーツにまつわる書籍も。「選書」一覧はこちら