「まちの部活動」地域総合型スポーツクラブが秘める可能性と、求められる発想の転換【SBJオンラインセミナー第5回】

日本の学校部活動はこれまでスポーツの発展を支えてきたが、一方で教員の過重負担や部員不足など現在では多くの問題が露見している。部活動は今後どうなるべきか?「スポーツビジネスジャパン オンラインセミナー」で、早稲田大学スポーツ科学学術院 教授 間野義之氏ら有識者が意見を交わした。

様々な立場から語られる部活動の今

スポーツビジネス専門展示会&コンファレンスの「スポーツビジネスジャパン」が今年から展開するセミナーシリーズの第5回、「地域×スポーツクラブは、いかに日本のスポーツのあり方を変え得るか?」

早稲田大学スポーツ科学学術院教授で、経済産業省「地域×スポーツクラブ産業研究会」座長も務める間野義之氏をモデレーターに、政策立案者、スポーツクラブ、保護者、研究者といったそれぞれの立場から有識者が議論を交わした。

セミナーの序盤、「地域総合型スポーツクラブ」の意義について説明したのは、経済産業省の浅野大介氏。同氏は、11月1日付けで経済産業省内に新設されたスポーツ産業室の室長として、スポーツ庁、文部科学省と連携して本格的なスポーツ経済政策の取り組みをスタートさせたところだ。これまで教育産業室長として自身が担当してきた中で、様々な制度を経過して発足した「地域×スポーツ産業研究会」での考察を披露した。

浅野氏は、欧州では経済の一部として地域スポーツクラブやスポーツベッティングが機能する一方、日本ではスポーツで収益をあげることに抵抗感を示す人も少なくないとも述べた。だが、スポーツを産業として成長させ、資金を循環させていくことができれば、専門指導者や活動場所の確保がより進むなど、スポーツクラブの持続可能性を高めることができると総括した。

株式会社乃村工藝社 執行役員で日本ハンドボールリーグ理事の原山麻子氏は、2児の母としての保護者の視点からも学校での部活動への課題認識の現状について言及。地域スポーツクラブの導入によって専門性のない顧問が指導をせざるを得ないなどの多くの問題が解決すると期待されるが、指導の質と公共性をどう両立していくか。バランスの考慮が必要になる。

「学校部活動から街の部活動へ」

セミナーでは地域とスポーツを掛け合わせた好事例も紹介された。元教員で公立小・中学校長の経歴を持ち、現在はNPO法人ソシオ成岩スポーツクラブ(愛知県半田市)のマネージングダイレクターを務める榊原孝彦氏は、休日は学校部活動を停止する代わりに、クラブが学校部活動の受け皿になったり、協賛会費を財源として恵まれない家庭への扶助制度を行うなどの取り組みを紹介した。

大学を母体としたスポーツクラブの一例としては、大阪成蹊大学准教授の菅文彦氏が、NPO法人びわこスポーツクラブについて言及。人材、施設、資金、そして研究・教育といった大学の豊富なリソースを、総合型地域スポーツクラブの運営に生かす取り組みを紹介した。大学にとっては、将来スポーツ界に携わる大学生へ貴重な機会を提供することとなり、今後も発展可能性は大きい。

セミナー終盤には、地域の実情に合った持続可能な形で部活動やスポーツクラブサービスが発展することへの期待と、地域の中でのよりよいスポーツ環境づくりに向けて議論や取り組みを進めていく必要があるという認識で各登壇者が一致し、セミナーは締めくくられた。

当日の様子は、以下のアーカイブ動画から視聴できる。

11月以降も定期的に開催予定の「スポーツビジネスジャパン オンラインセミナー」の最新情報は、公式ウェブサイトから。

■スポーツビジネスジャパン オンラインセミナー2021
https://www.sportsbusiness.jp/onlineseminar/

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