イベントレポート後編:「この日小樽が日本で一番アツくなる!」北海道スポーツビジネスサミットで考えるスポーツ×地方の可能性

昨年に引き続き2年目となる北海道スポーツビジネスサミットが、7月13日に小樽市で開催。「スポーツを文化に」を合言葉に、第一線で活躍する業界リーダーを迎え、「スポーツ×地方」の可能性について議論が交わされた。全国から約130人が集まったその熱気を、現地で参加したスポーツライターの新川諒がレポートする。

スポーツが地域にもたらす付加価値とは

前編では7月13日に小樽で開催された北海道スポーツビジネスサミットの概要を紹介したが、今回の後編ではトークセッションのさらなる詳細をレポート。議論の中心となった「スポーツ×地方」の可能性について迫る。

「この日小樽が日本で一番アツくなる!」

人口11.5万人の小樽市にて、8人の業界リーダーと約130人の参加者を迎えて開催された北海道スポーツビジネスサミット。地方創生の意味合いも込められたイベントにふさわしいキャッチフレーズだ。

参加者のうち、小樽市から参加したのはたった数名。多くが道内各地から、そして全国からも参加者が集まった。地方での開催となり、トークセッションでの議論も自然と「地方×スポーツ」に集中する。北海道のスポーツ界にも大きく貢献しているパネリストも集い、地元での取り組みも紹介された。

東京に行けば一花咲かすことが出来る。これは迷信とまではいかないが、必ずしもそうとは限らない。地元で花を咲かせることが出来る人も大勢いるのが事実だ。スポーツ界での代表格とも言えるのが一般社団法人ロコ・ソラーレ代表理事の本橋麻里氏ではないだろうか。

平昌冬季五輪で日本史上初となるカーリングでのメダルを獲得すると、一躍話題の中心となった。チームの本拠地である北見市内で、知らない人から「感動をありがとう」と伝えられるなど、その影響力の大きさを本橋氏は話す。「感謝の気持ちとしてお金を渡そうとする年金暮らしのおじいちゃんもいた」というほど、スポーツがもたらす出来事には“地元の暖かさ”を感じるストーリーが数え切れないほど多い。北見のチームが有名になることで、市へのふるさと納税が増加するという副次効果をもたらし、多いに地域に貢献することが出来たと本橋氏は振り返る。

ロコ・ソラーレ代表理事の本橋麻里氏は、カーリングの常呂町へのインパクトについて語った

同様に、北海道を代表するプロスポーツ・チームである北海道日本ハムファイターズで、広報部SCグループ長を務める笹村寛之氏は、当時通訳として見た2006年の優勝パレードの景色が「今でも忘れられない」と話す。13万8,000人もの人々が集まり、多くの人を笑顔にして喜ばすことが出来るという点はスポーツの魅力だという。

サミットではリアルタイムに状況をツイートする参加者の姿もあり、トークセッションの内容は公式サイトを通して後日動画コンテンツとしても提供される。全てが東京に集結する必要はなく、地方から全国へ発信することができ、付加価値を提供することが出来れば地方へわざわざ足を運ぶ人もいる。サミットは地方創生の一例とも言えるだろう。

地方から全国、世界への橋渡しとなるスポーツの可能性

本橋麻理氏が代表理事を務めるロコ・ソラーレは、地方創生に一役買っている。チームが拠点とする常呂町は、人口減という課題を同様に抱えていた近隣自治体と2006年に合併し、新たな北見市が誕生。これにより、チームのホームグラウンドが広がり、支援する人が増え、スポンサー企業が付いたことで、日本から世界へと競技の舞台を飛躍させることが出来たと話す。今でも従業員は3名と小規模な組織ではあるが、常呂町を「カーリングの聖地」として全国で知られるまでの存在へと押し上げた。

前出の北海道日本ハムファイターズでも、これまでも、現在も、チームの中心選手として台湾人プレーヤーが所属する。元々台湾からの観光客は多かったが、より北海道自体の魅力を伝えるきっかけとなることを目指していると笹村氏は言う。

「私たちがメッセージを発信することで、野球って楽しいよねというだけでなく、北海道にはこんなに美味しい食べ物があるということも伝えられます。それが地域活性に繋がるのではないかと思います。ファイターズというフィルターを通して北海道の魅力をもっと知ってもらえるように取り組んでいます」

北海道日本ハムファイターズの笹村寛之氏(中央)は、ファイターズを通して北海道の魅力を伝えたいと話す

同じ北海道のプロスポーツチームであるヴォレアス北海道(株式会社VOREAS)の代表取締役である池田憲士郎氏は、バレーボールチームの立ち上げ時、拠点を札幌にすることも選択肢にあったが、地元の旭川市に置く決断をした。単純に人口の多い札幌にチームを置くのではなく、「地域こそ、皆を一つにするプロスポーツチームが必要」との考えによるものだ。

ヴォレアス北海道は2019年1月19日のホームゲームより、キャッシュレスによる運営を行う。サッカーの独ブンデスリーガに所属するボルシア・ドルトムントのスタジアムでのシステムを視察し、日本のプロスポーツチームで初めてとなる完全キャッシュレス化を実現した。今季からキャッシュレス化を進めている東北楽天ゴールデンイーグルスよりも素早い動きで、全国でも話題となる仕掛けとなった。

ヴォレアス北海道の池田憲士郎氏(中央)は、スポーツを通した地域の一体化に取り組む

地方と言われる北海道でも、各スポーツ組織がそれぞれの形で地域に根を張りながら、国内外に発信力のある取り組みを行う。「スポーツは世界の共通言語」とも言われるが、まさしくスポーツを通して、地方都市が距離を超えて存在感を発揮する姿がある。

「スポーツが持つ最大の武器」で課題解決の糸口へ

会場となった小樽市観光物産プラザ。小樽市の人口減も日本各地の地方都市の例外でない

今後日本では人口減少という大きな社会課題と向き合わなければならない。その数は厚生労働省の推計で2018年時点で年間約44.8万人で、小樽市の人口の4倍にも相当する。これが2050年代には毎年90万人の減とも推計され、「地方都市」が危機に瀕する中、その生き残り、そして創生は一大テーマだ。

これに関して、Bリーグ常務理事・事務局長の葦原一正氏は「北海道から地域創生のモデルを作っていけるのではないか」と言う。Bリーグの所属チームは日本全国に48存在するため、地域との共存共栄が欠かせない。

スポーツイベントによる地域創生の一例は、Bリーグのオールスターゲームだ。初年度は国立代々木競技場第一体育館で開催したが、それ以降は熊本、富山など地方で開催し、現地で多くの集客を行ってきた。来年2020年の開催地は、札幌市に位置する北海道立総合体育センター「北海きたえーる」だ。地方でオールスター開催を継続するのは、地方を活性化する意味合いがある。

「結局スポーツで何が出来るかというと、スポンサー企業のようにスポーツ団体にお金を払うことでもなく、何かを解決する知識の提供でもありません。スポーツが持っている最大の武器は“発信する”ことだと思っています。選手、チームだけでなくリーグ全体で何かを言い続けると、何か大きなものも1ミリぐらい動くかもしれないと思って活動しています」(Bリーグ葦原氏)

Bリーグ常務理事・事務局長の葦原一正氏は、スポーツの最大の武器は「発信」する力という

インターネットの時代では様々な発信により、地方からでも全国、そして世界へリーチすることが可能になった。今回の北海道スポーツビジネスサミットin小樽でも、ソーシャルメディアで「#SBS小樽」のハッシュタグを通して、サミット終了後も登壇者と参加者を中心に盛り上がりを継続している。

今回のスポーツビジネスサミットは、エクゼクティブ・プロデューサーの近藤真弘氏の一つのツイートから、つながりを生み、実現に至った。地方都市でも発信をすることで、全国から人々を呼び寄せることを実証したのだ。

これは、人口減などの社会課題が地方都市に大きく迫ってくる中で、解決への糸口を提供する前例にもなったのではないだろうか。そして、そのドライバーが「スポーツ」であったことに、スポーツビジネスの関係者は、その価値を改めて評価するのかもしれない。

 
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