【UNIVAS×KDDI×マイナビ】 UNIVASとパートナー企業が描く、大学スポーツの未来とは

大学スポーツの振興を目的として2019年に創設された一般社団法人大学スポーツ協会(UNIVAS)。コロナ禍により一時は競技の中止にも見舞われた大学スポーツだが、UNIVASが発足からこれまでの歩みを止めることがなかったのは、パートナー企業との協働による点も大きい。大学スポーツにはどのような未来があるのか?各企業はどのような戦略でパートナーシップを進めているのか?UNIVAS、KDDI、マイナビの三者が、2月に開催された『第4回スポーツビジネス産業展』で語り合った。

UNIVASが提示する、大学スポーツの3つの課題

一般社団法人大学スポーツ協会(UNIVAS) 専務理事 池田敦司氏

2019年に「大学スポーツの振興」を目的に創設された一般社団法人大学スポーツ協会(UNIVAS)。コロナ渦で一時は競技さえできない状況となったが、現在は各大学の現場で様々な感染症対策のもと、各競技活動がリスタートした。

する・見る・支えるといった面から大学スポーツに関わる人を増やしていくことを理念の一つにするUNIVASは、現在、どのような環境に置かれているのか?専務理事の池田敦司氏は次のように説明する。

まず、そもそもの大学スポーツについて、全日本学生選手権(インカレ)の認知度を例に挙げ、引き続きファン拡大の余地が大いにあることを同氏は指摘。その上で、大学スポーツを通したコンプライアンス遵守の徹底、そして学生アスリートが社会に出る準備をするためのキャリア開発など、人材育成の環境整備を今後の重要課題に挙げた。

さらには、コロナ渦で大会の中止や練習の停止・縮小が余儀なくされる中で、いかに選手のモチベーションを維持するか、また再開した際にいかに安全に試合・大会を開催するか、そして再びその認知を獲得していく必要性にも言及し、大学スポーツの現在位置を示した。

この環境下、まさに人材育成と競技・観戦のあり方を革新しようとしているのが、マイナビとKDDIだ。池田氏が、UNIVASの取り組みには「民間の力を借りることが必要不可欠」と語る通り、大学スポーツの拡大には戦略的パートナー企業が欠かせない。

テクノロジーで選手のパフォーマンスと指導を変える

KDDI株式会社 サービス統括本部 5G・xRサービス戦略部部長 繁田光平氏

「UNIVASの理念に深く共感したことが、パートナーシップを結ぶに至った大きな理由です」

こう話すKDDI株式会社 サービス統括本部の繁田光平氏は、自身も大学時代に体育会に所属し、支援が乏しい中、学生が主体となった競技環境の整備を行っていたという。現在所属するKDDIでは、大学スポーツへの支援として、「練習環境のアップデート」、「試合映像など視聴機会の創出」、「リアル観戦の体験価値向上」の3つの柱を掲げる。

特に現在は、テクノロジーを通して体調管理を徹底できるツールの提供と、試合や大会が減る中でも選手がアピールできる機会の提供に注力する。例えば、KDDIはベンチャーファンド「KDDI Open Innovation Fund」を通してアスリートのコンディション・怪我の管理を行うWebサービス「ONE TAP SPORTS」を開発するユーフォリアに出資しており、普及を支援している。ONE TAP SPORTSでは、体調や身体機能、トレーニング内容を入力することで可視化、分析が可能になり、パフォーマンスの向上や怪我の予防に役立てられる。

また、KDDIがアクロディアと展開するIoTプラットフォーム「athleːtech(アスリーテック)」では、センサー内蔵型ボールなどのIoTデバイスを通してデータを取得・蓄積し、選手の技術向上や定量的・科学的なコーチングを目指す。これは、従来の経験や勘に基づいた指導・育成を変えることにもつながる。繁田氏は野球を例にとって説明した。

「『重いボールを投げろ』とだけ言われても、何が重いボールで何がそうではないのか、実は曖昧なことが多い。データを軸にしたコーチングは、指導のあり方を変えることができる」

映像コンテンツで、ファンエンゲージメントとマネタイズを

KDDIは、今後さらに、「より多くの試合を、もっと身近にする」(繁田氏)ことも目指すという。

繁田氏は、大学スポーツの全国規模の大会をライブ配信するサービス「UNIVAS LIVE」を評価する一方、「まだまだ映像化されていない、魅力的なコンテンツが大学スポーツにはたくさんある」と話す。世ではAmazonによるスポーツ・ドキュメンタリーシリーズ「All or Nothing」が好評を博すが、大学スポーツも試合に限らず、練習風景や競技以外の活動など、多くの人を引き寄せるコンテンツがあるかもしれない。

また、同氏の口からは、映像配信の応用についても言及された。それは、大学スポーツの新たなマネタイズ方法だ。試合映像や競技外の活動の映像配信を通して、OBやOGが現役選手を見られる接点を増やすことができれば、よりエンゲージが高まったり、新たなファンを創出できる。これを例えばライブダイジェストを配信する「UNIVASアプリ」で流すだけでなく、さらに、ギフティング(投げ銭)のような形で経済的な支援ができる仕組みを構築することも視野に入れているという。

VUCA時代に必要な素質は、スポーツで育むことができる

株式会社マイナビアスリートキャリア事業室 室長 木村雅人氏

KDDIがテクノロジー面で支えるように、キャリアという観点からUNIVASをサポートするのが、マイナビだ。アスリートキャリア事業室 室長の木村雅人氏は、高校卒業後プロサッカー選手として活躍。その後大学に通い、マイナビに入社後、企業の新卒採用や医療系学生を対象とした新規事業の立ち上げを経て、現在ではアスリートの人材育成と就労支援を軸とした事業を展開している。

木村氏は、「スポーツの価値をエンターテインメント性とは異なる切り口、つまり『人材育成』という側面で創出すること」がマイナビのパートナーシップの根本だと言う。

「既存の価値観やビジネスモデルなどが通用しないVUCA時代に求められるのは、主体性、状況判断力、創造性を兼ね備えた人物。競技力の向上ばかりが注目されがちだが、部活動はむしろこれらの能力を体系的にトレーニングできるのではないか」(木村氏)

同氏は同時に、日本のこれまでの部活動の問題点も指摘した。ミスが起きたらその事実だけを責めてプロセスに言及しない。個性ではなく規律を重視しすぎる。そして何よりも「勝つ・勝たせる」ことだけがスポーツの価値だという風潮は、見直されるべきだと断言した。

「競技力以外の『社会で活躍できる能力』も成長させてくれる。それがスポーツなんです」と、木村氏は力を込める。

部活動をキャリアに活かす、多彩なプログラム

UNIVASとマイナビアスリートキャリアが昨年7月から展開する「デュアルキャリアプログラム」は、部活動と日常生活を通して、学生アスリートが社会人基礎力を身につけるオンラインサービスだ。経済産業省が定義する「人生100年時代の社会人基礎力」の3つの能力・12の能力要素を、オンラインセミナーや適性診断、キャリア相談を通して養い、社会で活躍できる能力の向上を目指す。

また、チームの新キャプテンがチームから求められるリーダー像を考える「リーダーズキャンプ」や、部活動を通して組織マネジメントを学ぶ「GMGミーティング」など、組織を動かす力を身につけるプログラムも提供している。

これらのプログラムは、漠然と部活動に打ち込む学生にとって「競技で結果を残すことに加えて、部活動で得られることは何か」を考えるきっかけになる。また、学生が所属するチームのコーチなど指導側や、大学や連盟、大会運営側などの認識も変えていくだろう。

最後に木村氏は、次のように締めくくった。

「スポーツを通じて目の前の『勝ち』を得るだけでなく、人生の『価値』を高めてほしい。そのために私たちは、(協賛型の)スポンサーとしてではなく、パートナーとしてUNIVASと共に取り組んでいきます」