個人メドレーのバタフライ、背泳ぎ、平泳ぎ、クロールの4泳法の中でも、手や足の動きや使い方が特殊な平泳ぎ。平泳ぎでお悩みの方向けに、泳ぎ方のポイントとコツを伝授します。
平泳ぎとは
日本語でなぜ平泳ぎと呼ばれるのでしょうか? 実は、日本古来の3泳法には、「立体」(立ち泳ぎ)、「横体」(横泳ぎ)、「平体」(平泳ぎと同様の型)があり、その「平体」に由来して平泳ぎと呼ばれています。競技者の間では英語で「ブレスト(ストローク)」と呼ばれる泳ぎ方です。ブレストとは、胸を意味し、胸を上下させる泳ぎ方から呼ばれます。この平泳ぎは、体力面ではどうしても世界に劣る日本人にとっては、技術的な巧拙がタイムに表れるため、比較的得意な種目と言われています。
また、平泳ぎは顔を上げて正面を向いて泳げるために、船舶沈没で重油にまみれたり、積載物が障害になったりした際の泳ぎに使え、実は海難では最も役に立つサバイバル泳法です。
平泳ぎの歴史
個人メドレーの4泳法の中では最古の泳法とされていて、9000年前の壁画に平泳ぎらしき泳法で泳いでいる人の記録もあるほどで、人間を含む霊長類が本能的に行う泳法と言われています。
競技としては1837年にロンドンで開催された水泳大会が競泳の始まりとされ、オリンピックでは第1回から競泳(自由形)が競技種目に採用されています。1896年の第1回アテネ大会の自由形では、常に顔を出して泳ぐ平泳ぎが主流でしたが、その後第2回パリ大会では背泳ぎが追加され、1956年のメルボルン大会には平泳ぎから派生したバタフライが種目に加わりました。
平泳ぎの泳ぎ方
うつ伏せの姿勢で、両腕・両足を左右対称に「一度かいて一度蹴る」の動作を、1回ずつ行うことが基本ルールです。かくときに肘は水面に出てはいけません。両手はスタートと折り返しのひとかきを除いては、お尻より後ろまでかいてはいけません。両足は左右同時に外側に蹴ります。
個人メドレーでの他の3泳法では、足のつま先は伸ばして水を斜め下に蹴りますが、平泳ぎでは足首を90度曲げて、水をキックします。その際、あおり足やドルフィンキックのように、足の甲で水を蹴ってはいけません。
平泳ぎの注意点と改善策
平泳ぎでのお悩みで多いのが、以下の2つです。
- 息継ぎ時に、体が沈んでしまう
- 前に進まない
以上の原因と改善のヒントを解説します。
沈んでしまう時
平泳ぎで息継ぎの際に体が沈んでしまう理由は、主に以下が挙げられます。
①上体が起きすぎてしまう
息継ぎは、手かきをして、脇を締めあごの前で手を合わせる際に、体を水面に出して行います。無理に体に力を入れて、体を起こそうとすると水勢に乗れず、体が立って沈んでしまいます。
②息継ぎの時間が長い
息継ぎの時間は、できるだけ短くしましょう。長いと手のかきの勢いが失われ、体が沈む原因になります。
③手のかきが弱い
手のかきが弱いとどうしても勢いがつかず、体が水面に出にくくなり、無理に体を起こそうとして上体が立ってしまいがちです。水の抵抗を受けながら、しっかりかきましょう。
④脇が開いている
脇が開いてしまうと、かいた水の勢いが利用できず、体を水面に出しにくくなります。脇を締めて水の抵抗を受けつつ、水を抱くようにかきましょう。
進まない時
平泳ぎで進まない理由については、キックに問題がある場合と、それ以外に問題がある場合があります。ひとつずつチェックしていきましょう。
①脚の引き方が悪いケース
平泳ぎでは、膝や太ももをお腹の位置まで引きつけてはいけないと言われます。その理由は膝を曲げた分だけ、ももの部分で水の抵抗を受けてブレーキとなり、進まなくなってしまうからです。進みが悪い場合には、かかとをお尻に引きつけるようにし、膝は直角程度に浅めに引いてみてください。
②足先がうまく使えないケース
脚の引き方は悪くないのに進まない場合は、足首が上手く使えていないのかもしれません。足首を柔らかく返し、しっかり水を蹴るようにしましょう。
③手をかく動作と、キックのタイミングが合っていないケース
前に進まない人は、足を早く引いてしまうことが多いです。手をかき終わるまで膝は曲げずに、伸ばしておきます。リカバリー動作で肘を伸ばしながら膝を曲げ、頭を入水して進む際に、キックするようにしてみてください。
④呼吸後の姿勢が悪いケース
呼吸の際は、手をかくと同時に、上半身を水上に上げます。その際、斜め上向きの姿勢から入水する人は、進まないことが多いです。持ち上げた上半身を、元の姿勢に戻すように心がけてください。
⑤水をかき始める前に、顔を上げてしまうケース
進まない人に共通するのは、手をかき始める前に顔を上げてしまうこと。平泳ぎの呼吸で大切なのは、手のかき始めと同時に顔を上げて、リカバリーに合わせて頭を入水することです。しっかり腕を伸ばして前進しましょう。
⑥泳ぎに伸びがないケース
水をかいて、キックで伸びた際にどこまで進めるかが、平泳ぎのポイント。キックで伸びた早いうちに手をかき始めていませんか? そうなると、伸びにブレーキをかけた形になります。キックしたら足首を伸ばし、伸びの時間を我慢して維持しましょう。
平泳ぎのコツと練習方法
平泳ぎで大事なポイントは、以下の2つ。
- 手で水をかいたり足で水を蹴る際に、水の抵抗を推進力にすること
- 伸びる際、水の抵抗を受けても進む力
平泳ぎのコツを、腕の動き、キック、リズムの3点から解説します。
腕の動きのコツ
逆ハートの形で水をかきましょう。まず腕をまっすぐに伸ばし、肘を曲げながら胸のあたりまで水を抱えるようにかいたら、脇を締めてあごの前で手を揃えます。腕を伸ばす時は、一直線に伸ばし、できるだけ水の抵抗を受けないように心がけましょう。
キックでのコツ
キックは「引きつけ」と「蹴り」です。かかとをお尻まで引きつけ、膝は直角に曲げ、足裏で水をキックすること。キックし終えたら、足首を伸ばして水の抵抗を減らしましょう。
引きつけの練習方法 その1
練習する際は、プールの中で壁に手をつけ、水平姿勢を保ちます。補助する人(補助者)がいる場合、練習者の足首を持ってお尻への引きつけをサポートします。補助者は、足の付け根の曲がりと、膝が腰より前に出ない程度に直角まで曲がっているかを確認してください。
蹴りの練習方法 その2
足の内側をしっかりと後方に向けられるように、足首を曲げること。候補者が、足の指先を外側に向けてあげると、膝を開くことができるので、外側後方に蹴りやすくなります。膝を伸ばして蹴った時に、補助者の方に水流が来れば、しっかり水を蹴ることができている証拠です。
腕と足のキックを合わせるコツ
リズムは3拍子です。
- かく
- (あごの前で手を揃えたら)足を「曲げる」
- 足と腕を同時に伸ばす
息継ぎは、水をかいた勢いで行い、しっかり伸びて水勢に乗りましょう。前述した3拍子のリズムを刻んで、練習してみましょう。
まとめ
本記事では、平泳ぎのコツなどを解説しました。ヒトとして身につけた最古の泳法でありながら、競技でタイムを競うには、コツが必要な泳法です。
腕の動きとキックは別々に練習し、最終的にリズムに乗った泳ぎができるようになるまで、繰り返し練習しましょう。
平泳ぎでお悩みの方は、伝授したコツをヒントにして頂き、平泳ぎをぜひご自分の得意な種目にしてみてください。
(TOP写真提供 = CHUTTERSNAP / Unsplash.com)
《参考記事一覧》
ポイントは足の使い方にあり!高安亮選手直伝!正しい平泳ぎ方法と教え方 (コナミメソッドまとめ)